ササニシキはなぜ消えたのか?

米離れの時代でも味をめぐる品種競争は激化

2014.10.10(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

米のブランド競争激化、西日本から「特A」も

 消費量が減る反面、近年の米の銘柄の多さには目を見張るばかりだ。良食味品種や病害虫に強い品種、多収穫米品種などが農業試験場や民間企業で研究され、新品種が次々に誕生している。日本で品種登録されている米は594品種(2014年3月31日現在)で、そのうち主食用に作付けされているのは260品種ほどだ。

 店頭で販売されている米には、いくつかの品種の米を混ぜたブレンド米と、1つの品種のみの銘柄米がある。銘柄米には「コシヒカリ」「あきたこまち」「ひとめぼれ」などの品種によるブランドがあり、さらに「魚沼産コシヒカリ」のように産地もブランド化している。

 近年では、消費者においしさをアピールしようと、産地間で新品種や栽培技術の開発競争が激しくなる一方だ。山形の「はえぬき」、北海道の「ゆめぴりか」など、品種や産地で商品化したブランドが600以上ある。

 日本穀物検定協会は、毎年、主な産地品種銘柄(ブランド)について食味試験を行い、その結果を「米の食味ランキング」として発表している。2014年産では、141ブランドを試験し、過去最多の38ブランドが、最も食味がよいとされる「特A」評価を獲得した。

 かつて特Aは、米どころの新潟や東北のブランド米が占めていたが、四国や九州などのブランド米もランク入りするようになり、おいしい米が全国に広がっていることが示された。

 また、東日本では「コシヒカリ」が中心に栽培されているが、西日本では各県の試験場などが独自開発した新品種を栽培している例が多い。2012年度産の「ランキング」で熊本県の新品種「森のくまさん」が最高得点を獲得したことが話題になったが、2014年度産米でも、鳥取県の「きぬむすめ」、香川県の「おいでまい」など各県の新しい「ご当地米」がランク入りした。

 デパートの米売り場を覗いてみると、さまざまなブランド米が並んでいる。品種名や産地に加え、生産者の名前や生産方法まで示されており、中には1キログラムあたり2000円を超す高級米も売っていた。

 「最近、人気があるのは、つや姫ですね」とデパート店員が話す。山形県の新品種で、2013年に粒が大きくておいしいとインターネットを中心にブームとなった。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。


食の安全に対して国民の関心が高まっている。国民が健康を意識しているのはもちろんだが、今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。このコラムでは、日本や世界における食の安全への取り組みを様々な角度から取り上げていく。