奨学金のあり方を大きく見直せないだろうか。

 奨学金をもらっている大学生は2人に1人を超えた。大学の授業料が高くなり、親も年収が減って学費を負担しきれなくなっているためだ。

 卒業後、未返還の人も増えている。奨学金の9割の額を占める日本学生支援機構の場合、返されていない額は昨年度、過去最高の957億円に上った。景気が低迷し、非正規労働が広がっていることが背景にある。

 親が豊かでない生徒が進学の扉を閉ざされれば、貧しさは世代間で連鎖し、格差が広がる。社会全体の問題として、制度の見直しを急がねばならない。

 問題なのは、機構の奨学金の主流が、利子をつけて返すタイプになっていることだ。

 有利子奨学金が始まったのは30年前で、当初は無利子の補完とされた。それが今や無利子の倍以上の人数に膨らんだ。無利子の基準を満たしても借りられず、有利子に回る学生も多い。

 借りた以上に返さなければならない制度が、奨学金の名に値するだろうか。

 文部科学省も手を打とうとしている。来年度予算の概算要求では無利子枠を3万人増やし、有利子を1万8千人減らした。だが、それでも有利子が7割近くを占める。無利子への転換をもっと進めるべきだ。

 さらに踏み込みたいのは、卒業後、返さなくてよい給付型の導入だ。

 機構の奨学金はすべて貸与型、つまり借金になる。その前提は、大卒後すぐ正社員になり、賃金が年々増え、簡単には解雇されないという日本型システムだ。しかし、それはとうに崩れている。先進国で授業料がただでなく、公的な奨学金で給付型がないのは日本くらいだ。

 給付型の新設は財政難の折、ハードルが高い。ならば、たとえば企業の支援を得て基金をつくってはどうか。国はグローバル人材を育てようと官民一体の留学支援制度を今年度から始めた。100近い企業や団体から寄付を募り、返済不要の奨学金などに充てている。

 奨学金で多様な背景を持つ人々が学びやすくなれば、イノベーションが起きやすくなる。産業界にとっても有益だろう。

 GDPに占める教育機関への公的支出の割合をみると、日本はかなり低い。先進国を中心に34カ国でつくる経済協力開発機構(OECD)のなかで、日本は5年連続で最下位だった。

 若者が希望を持てない国に将来はない。未来への投資に力を入れるべきだ。