米国や欧州連合(EU)のロシアに対する経済制裁が続いています。ロシア側の欧米への「報復制裁」もあって制裁の応酬となっていますが、7月に行われた対ロ経済制裁は効果はあったのでしょうか。ロシア経済の今後の展望とともにみてみましょう。
【図表】7月に発表された欧米の対ロシア制裁の内容は?
ロシア人の消費マインド冷やす
対ロ制裁の効き目と言うと、五右衛門が釜茹での刑に会い、「いい湯じゃ、いい湯じゃ」と強がっているうちに茹ってしまったことを思い出します。
対ロ制裁は、ロシア人の生活に大きく響くものにはなっていませんが、西側との関係悪化はロシア人の消費マインドを冷やしています。乗用車の売れ行きは5月には対前年5%弱落ち、夏休み明けのショッピング・センターでの人出は、昨年より25%弱少なかったと報道されています。またロシアが西側の制裁に対抗して「逆制裁」の形でEU農産品の輸入を止めているため、モスクワの店頭ではロシア国産の酪農製品、リンゴなどが売られるようになっている他、海産物の供給が大幅に落ちたようです。
ロシアに一番効くのは、EU諸国がロシア原油・天然ガスの輸入を激減させることですが(採掘、輸出から得る税収は政府歳入の60%強)、これは制裁措置の中には入っていません。それでも、8月末にはウクライナ領に入り込んで政府軍を潰滅させたロシア軍は、9月4日のNATO首脳会議を前に撤退して「停戦」に応じています。ロシア政府は、西側の出方を大いに気にしているのです。
これまでの制裁で実効性があるのは?
これまでに取られた制裁措置の中で最も実効性のあるものは、ロシアの大銀行に対する融資の制限、エネルギー企業に対する資金と技術の供与制限ですが、これらは直ちにロシア経済を窮状に追い込むものではありません。エクソン・モービルやBPなど西側エネルギー大手企業が、これまでロシアの企業と結んだ資源開発契約を破棄したとのニュースもありません。
ただ、ロシアの石油最大手(国営)ロスネフチが政府に400億ドルもの救済融資を要請したことは、西側資本市場での資金調達が難しくなったことの表れでしょう。ロスネフチのセーチン会長はプーチン大統領の右腕と言っていい人物なので、プーチン大統領も西側制裁のインパクトをよく知らされていることと思われます。