今回のテーマは住民税です。具体的にどういった仕組みになっているのか見ていきましょう。なお、会社に課せられる法人住民税も住民税と呼ぶことがあるのですが、今回は個人向けの住民税に絞ってお話ししていきます。
住民税は所得税と類似する税金です。両者の共通点と違いから見ていきましょう。
共通点として、個人の所得に対して税金が課される点が挙げられます。給与所得を例に取ると、給与収入から経費を加味して、給与所得を算出します。所得税も住民税も給与所得に一定の控除項目を加味した上で、税率を掛けて税額を算定します(※1)。
違いは大きく3つ挙げられます。
(1)納付先の違い
(2)税率の違い
(3)納付時期の違い
それぞれを、次の項で見ていきましょう。
所得税の納付先は国です。皆さんが納付した税金は国家予算の「歳入の部」に入ります。そして防衛関係など国家運営のために使われます。
住民税の納付先は住んでいる場所の都道府県、市町村です。皆さんが納付した税金は各地方の予算の「歳入の部」に入ります。そして、公園の整備などの地方運営のために使われます。
所得税は超過累進税率と呼ばれ、所得が増えると税率も上がります。野球選手は年俸ン億円でも税金で半分くらい持っていかれるという話があります。現在の税率では5%から40%まであり、所得が低いうちは5%の税率になりますが、高収入になると40%が課されます。
住民税は所得税と違って固定で、一部例外地域を除き、全国どこでも税率は10%です。
所得税は、1年分(勤めている会社の決算時期にかかわらず、誰でも1〜12月分)の納税額を見込み計算して各月の給与から天引きします(※2)。12月に給与所得が確定するので、見込み計算との差額を精算します。この精算を「年末調整」と呼び、これも「給与から天引き」もしくは「返金」されます(※3)。給与以外に所得のある人は、翌年3月中旬までに確定申告して、所得税を納付します。
一方住民税は、所得税の計算データを流用します。2013年分の所得税を例に取ると、通常2014年5月くらいの給与支給に合わせて「給与所得等に係る住民税 特別徴収税額決定通知書」という細長い紙が回ってきます。
これは役所が2013年1〜12月分の住民税を計算して、各自に知らせてくれるものです。住民税は2014年6月〜2015年5月までの12カ月間で通知書に書かれた金額で給与から天引きされます。ちなみに退職した場合は特別徴収(給与天引き)できませんので、(毎月ではありませんが)何回かに分割して納付するよう、連絡が来ます。
最後に住民税あるあるトークを披露しましょう。
社会人2年目になって昇給したのに、給与の手取り額が減ってしまった(悲)……
納付時期の違いにより、1年目は住民税の納付はありません。2年目は1年目に働いた分の給与から発生する住民税の納付がありますので、手取り額が減ってしまうことがあります。
退職したのに、住民税をまだ払えといわれる(怒)!
これも(1)と同じです。納付時期の違いから、退職直前の年に働いた分の給与から発生する住民税の納付が、翌年遅れてやってきます。
住民税について見てきました。もし手元に住民税の通知書を保管されていれば、自分が一体どのくらいの住民税を払っているかが分かります。それではまた。
イラスト:Ayumi
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2012/02/17
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吉田延史(よしだのぶふみ)
京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピューターの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。
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