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【政治】

拡大解釈、懸念置き去り 秘密法運用基準を閣議決定

2014年10月14日 13時58分

首相官邸前で特定秘密保護法の運用基準と法施行日の閣議決定に抗議の声を上げる人たち=14日午前、東京・永田町で(松崎浩一撮影)

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 政府は十四日、国民の「知る権利」を侵害する恐れのある特定秘密保護法の運用基準と、施行期日を十二月十日とする施行令を閣議決定した。今後、施行に向け各省庁が準備を進める。政府の意のままに特定秘密が指定され、情報に迫ろうとした市民や記者が厳罰に問われる恐れがあるなど、根本的な懸念は法成立時と変わらずに施行されることになった。

 特定秘密保護法は昨年十二月六日、世論の反対を押し切り成立。政府は今年一月から有識者による「情報保全諮問会議」(座長・渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長・主筆)と法律の運用基準を検討してきた。八月下旬までのパブリックコメント(意見公募)を経て、政府の素案に対し三十カ所近く修正したが、根本的な見直しはせず、閣議決定した。

 法律では、特定秘密の指定は閣僚など各行政機関の長の判断。「防衛」「外交」「特定有害活動(スパイなど)の防止」「テロの防止」の四分野が対象だが、運用基準で五十五の「細目」に分けており、政府は、意図的な拡大ができないようにしたと説明している。

 ただ、その細目も曖昧な表現が目立ち、拡大解釈の余地が残っている。閣議決定で増やすことも可能で、時の政府の判断で範囲を広げることができる。

 指定期間は原則三十年としながら、内閣の承認を得れば六十年まで延長可能。さらに特に七つの項目に該当すると判断すれば、六十年を超えても構わない。運用基準では、三十年超の指定は「特に慎重に行う」と促すにとどまった。

 拡大解釈や不適当な延長をチェックする監視機関として、運用基準で「独立公文書管理監」を設置したが、立場は審議官級にすぎず、行政機関の長に対応するには立場が弱い。支援する「情報保全監察室」職員も各省の寄せ集めの二十人規模で、独立性や権限に限界がある。

 法律では、特定秘密を漏らした公務員らに最高懲役十年の厳罰を科すことに加え、秘密を知ろうとした市民や記者が漏えいの「そそのかし」「あおり立て」「共謀」を行った場合も最高懲役五年の罰則が適用される。どんな行為が「そそのかし」などに当たるかは曖昧。

 運用基準では「基本的人権を不当に侵害することのないように」などと努力規定を加えたが、市民が罪に問われる可能性は消えていない。

◆「知る権利奪うな」市民抗議

 国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の運用基準や施行日の閣議決定を受け、同法に反対する市民団体が十四日、官邸前で「施行をやめろ」「知る権利を奪うな」と抗議の声を上げた。

 閣議に合わせた午前八時ごろ、「ぜったい廃止」などと書いたプラカードを持った約二十人が集まった。「運用基準の閣議決定やめろ」「憲法違反の秘密保護法廃止」と叫びながら官邸に向かって拳を突き上げた。

 主催した実行委員会の杉原浩司さん(48)は「世界人権デーの十二月十日に施行するのは、世界に対する挑戦であり、絶対に許してはいけない。延期させ、抜本的に見直すべきだ」と訴えた。

(東京新聞)

 

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