(英エコノミスト誌 2014年10月11日号)
モンゴルがその輝きと、これまで大事にしてきた自主性の一部を失っている。
少し前までモンゴルは世界の羨望の的となる成長率――2011年は17%、2012年、2013年はそれぞれ12%前後――を誇り、恵まれた地に見えた。
国民1人当たりの年間国内総生産(GDP)がわずか5年前に2000ドル足らず、現在4000ドルの国において、成功を約束するのが鉱業だった。
ざっと3兆ドルの手に入れやすい鉱物が、フランス、ドイツ、スペインの国土合計よりも大きな国の地下に眠っていると見られている。300万人近いモンゴル国民に割り振ると、1人当たりざっと100万ドルに上る資源だ。
多くの人にとって、自然のまま手つかずの風景の破壊と首都の汚染――ウランバートルは空気汚染が世界で2番目にひどい都市――は、政治家を裕福にし、街頭をかっこいい新車と高層マンションで埋め尽くした好況の見返りに払う価値のある代償のように思えた。
ところが今、輝きが褪せてしまった。モンゴルは、外貨準備が3分の1まで落ち込み、国際収支危機に直面している。通貨トゥグルグも急落した。国内では、信用収縮によってウランバートルの建築ブームがほとんど止まってしまった。
オユ・トルゴイ銅山の開発が一時中断
1つの要因は石炭だ。石炭は、ゴビ砂漠の新しい銅山「オユ・トルゴイ(OT)」がきちんと操業しだすまではモンゴルにとって最大の鉱物輸出だが、中国の需要が急減し、石炭価格が下落したのだ。2つ目の要因は、資源ブームを煽った外国人投資家の間に広がる不安感だ。この点については、モンゴルの民主党政権に全面的な責任がある。
英豪資本の巨大資源会社リオ・ティントが支配するOTがモンゴルにどれほど重要かは、誇張するのが難しいほどだ。OTが全面稼働し、国境を越えて銅鉱石を中国へ出荷し始めた時には、モンゴルのGDPの3分の1を稼ぐ可能性がある。これまでに投資された60億ドルは、近年の対内直接投資の大半を占めている。
だが、OT開発プロジェクトは今、管理費の規模やこれほど大きな鉱山を開発する時には避けられない予算オーバー、税金支払いの要求を巡り、リオ・ティントと、OTの権益の34%を保有する干渉的なモンゴル政府との激しい論争にはまり込んでいる。モンゴルの騒々しい民主主義が争いを増幅させることになった。