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【栃木】

「子ども・被災者支援法」 基本方針 閣議決定から1年

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 東京電力福島第一原発事故の被災者に対する不安解消や、生活の安定を目指す「子ども・被災者支援法」の基本方針が閣議決定されてから、11日で1年。方針では、県内の健康調査、住宅の庭などにある放射性物質の汚染土を取り除く費用が保障されず、県内では「復興につながらない」と失望が広がった。この1年、県内の状況はどう変わったのか。今後、必要な視点を探ってみた。 (大野暢子)

■進展■

 環境省は、除染の必要な福島県の住宅に関し、放射線量の低減効果が高い表土除去の費用を国費で保障。しかし、福島県外は放射線量が比較的低いと判断し、支援の対象外にした。福島県に隣接する那須塩原、那須の二市町は国に対し、表土除去にかかったお金の交付を繰り返し要望。これを受け、総務省は九月、両市町が申請した全額にあたる計約十八億四千万円を初めて交付した。

 ただ、福島県との差がなくなったわけではない。那須塩原市は、十八歳以下または妊婦が暮らす一戸建てに限り、住宅の敷地内の表土除去費用を独自に全額負担してきた。那須町は、一般家庭には費用の80%、十八歳以下がいる家庭には100%を、それぞれ二十万円を上限に独自の予算で支払ってきた。今回の交付金は、この範囲で支払われたにすぎない。

 また、那須町は財源不足で、六月以降は表土除去の受け付け中止に追い込まれている。両市町が表土除去の支援対象を広げても、国がそれに応じた交付金を払う保証はない。

 二市町の担当者は「交付されて良かった」と胸をなで下ろす一方、福島県との格差が残っているとして、今後も支援の差をなくすよう国に求めていく方針だ。

■不安■

 福島県では、放射性物質がたまりやすい甲状腺に異変が起きていないか、事故当時十八歳以下だった全県民に、国費で定期検査をしている。栃木県にも、空間放射線量が国の追加被ばく線量の目安となる毎時〇・二三マイクロシーベルトを上回る地点が残されているが、県境で支援に差がつけられている。

 首都圏で甲状腺検査をしている民間団体「関東子ども健康調査支援基金」(茨城県守谷市)が六月、那須塩原市で独自に実施した検査では、当初の定員を上回る約百六十人が訪れ、住民の不安が浮き彫りに。現在、国の有識者会議が、福島県外の健康管理について話し合っているが、県外で健康調査を保障するかについては、消極的な議論にとどまっている。

■ジレンマ■

 一方、被災地のイメージから抜け出し、観光客や消費者を取り戻したい県北部では、放射線の不安を訴えづらい空気もある。

 県北部では現在、福島県との支援の格差に異を唱えるため、県北部の住民有志が原発事故裁判外紛争解決手続き(原発ADR)への集団申し立てを準備しているが、まれに「説明会は開いてほしいが、開催を公にしないでほしい」という声が寄せられることもある。

 同団体の担当者は「請求するのは原発事故から約一年半後までの損害賠償なので、風評被害とは直接関係ないのだが…」と複雑な表情。こうした事情もくみつつ、少しでも多く説明会を開いて参加者を集約し、年度内に申し立てるという。

     ◇

 被災者の分断だ−。こう批判されてきた基本方針だが、住宅の表土除去をめぐっては、県と市町の地道な要望が国を動かした。原発事故の被害が忘れられないよう、あらゆる角度から声を絶やさないことの大切さは、これからも変わらない。

◆雰囲気に屈せず行動を

 土壌汚染に詳しい生井兵治(なまい・ひょうじ)・元筑波大教授(生態学) 栃木県や私が暮らす茨城県には、原発の放射線管理区域に相当するようなホットスポットがある。栃木の皆さんには「放射線への不安を語ることがおかしい」という雰囲気に屈せず、行動してほしい。

◆できる限り被ばく回避

 放射線被ばくに精通する松崎道幸・旭川北医院(北海道旭川市)院長 飲食や呼吸で身体の中に入った放射性物質の量と健康被害の関係は、現在の医学ではほとんど分かっていない。避難、移転、保養など、できる限り被ばくを避けることは、次世代の命と健康を守るために必要だ。

 

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