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【社会】

医師情報 持ち出し容疑 求人サイト 元従業員を逮捕 1万7000件か

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 勤務先から医師や看護師の情報を大量に持ち出したとして、警視庁は十四日、不正競争防止法違反(営業秘密の複製)の疑いで、医師向けの求人情報サイト運営会社「MRT(エム・アール・ティー)」(東京都新宿区)の元従業員、三上兼吾(けんご)容疑者(36)=東京都日野市豊田=を逮捕した。

 警視庁によると、三上容疑者はMRTを退社後、同様のサイトを運営する「iDoctor(アイドクター)」(渋谷区)の設立にかかわったという。同社が保有する情報と、不正入手した情報に重複があり、警視庁は新会社のために持ち出した可能性があるとみて調べている。

 逮捕容疑では、二〇一二年五月、MRTのデータベース(DB)にアクセスし、営業秘密に当たる登録医師などの個人情報を不正に複製し、入手したとされる。持ち出した情報は一万七千件に上るとみられ、住所や氏名、生年月日、学歴、勤務先も含まれていた。

 MRTは転職先や医療関係のアルバイトの紹介などのサービスをしており、関係者によると、三上容疑者は同年一月から、システム管理の担当者として勤務。DBにアクセスできる権限を利用し、医師などの情報を引き出した後、同年七月に退職した。

◆同業転職者や外部業者 絶えない情報流出

 企業情報の流出事件が後を絶たない。同業他社への転職者や外部業者による情報の持ち出しが目につく。専門家はDBの管理や従業員教育の徹底など、漏えい対策の必要性を訴える。

 今年三月、半導体メモリーの技術を転職先の韓国企業に漏らしたとして、東芝の提携先の元技術者が不正競争防止法違反容疑で逮捕された。二カ月後、日産自動車でも、販売計画を持ち出して他社に転職した元社員が逮捕された。

 七月には、ベネッセコーポレーションの子どもを含む顧客情報約一千万件の流出事件で、警視庁が外部業者のシステムエンジニア(SE)を逮捕した。

 今回は医師の求人情報が狙われた。最新技術はもとより、少子化や医師・看護師不足の中で、特に地方での医師のニーズは高く転職は頻繁。個人情報も価値は高い。

 経済産業省が昨年発表したアンケート結果では、回答企業約三千社のうち13・5%が「過去五年間で営業秘密の漏えい(可能性も含む)があった」と答えた。明らかな漏えいがあった約二百社の半分以上で中途退職者が関与していた。

 情報セキュリティ大学院大学の原田要之助教授は「正社員が前提の終身雇用制が崩れ、情報流出のリスクは増している。DBへのアクセスや外部媒体の持ち込みの日常的なチェックなど、企業は対策にコストをかけるべきだ」と指摘する。

 不正競争防止法で、情報漏えいの罰則は、個人が懲役十年以下、罰金一千万円以下、法人が罰金三億円以下と定められている。

 日本知的財産協会の久慈直登(なおと)専務理事は「外部業者を含め、営業秘密の取得が犯罪だという社内教育が必要。日本は米国と比べ罰金や懲役の上限が低く、罰則強化も考えていいのでは」と話す。 (北川成史)

 <不正競争防止法> 業者間の公正な競争の確保や、関連する国際約束の実施が目的で制定された法律。製造ノウハウや顧客名簿、販売マニュアルを保護対象の「営業秘密」とし、不正な複製や開示を禁じている。違反すれば10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金が科される。国内で管理されていた営業秘密を国外で開示した場合も処罰される。

 

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