日本人にはあまり知られていない不可解な事実がある。先進国の中で日本だけ、がんの死亡数が増加し続けているという。わが国の医療は世界トップレベル—だからといって、安心してはいられない。
30年で2倍に増えた
「じつは、がんの死亡数が増え続けているのは、先進国では日本だけなのです」
東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一氏はこう断言する。
日本人の平均寿命は女性が86・61歳で世界一、男性は80・21歳で第4位。その数字だけが独り歩きし、日本人は健康なのだと思いがちだが、そう考えているのは我々日本人だけのようだ。
米国で1年間にがんで死ぬ人は、約57・5万人。日本人は約36・5万人だが、人口10万人当たりで換算すると、日本人の死亡数は米国の約1・6倍にもなっている。意外なことだが、日本は先進国であるにもかかわらず、がんが原因で亡くなる人が増え続ける唯一の国。日本が「がん大国」である「本当の理由」はここにある。
いまや日本ではがん患者が増え続け、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬ—そんな時代になった。がん研究振興財団が昨年発表したデータでは、1年間で新たにがんと診断された人は74万9767人。がんは、日本人の死因のトップとなっている。
脳卒中を抜き、がんが死因の1位になったのは1981年。その後、がんの罹患数、死亡数ともに年々増え続けている。死亡数は、30年で2倍以上にも膨れ上がった。
もちろん、世界的に見ても、がんは患者数も死亡数も増えている。だが、国際がん研究機関(IARC)の発表によると、世界中で、がんで死ぬ人の65%は発展途上国の国民。先進国では、がんが原因で死ぬ人は減り続けているという。中川医師が続ける。
「欧米では、だいたい毎年5%ずつがん死亡数が減っています。それに比べ、日本では増加が止まりません。1995年の時点では、日本も米国も同程度でしたが、それ以降、差はどんどん開いていっています」
がんの患者数が増えれば、がんで死ぬ人が増えるのは当然のことのように思えるが、そうではない。
先進国の場合、高度な検査設備があることで、従来ならば見つからなかったレベルの早期のがんが発見され、患者数が増加しているという側面もある。だが、その場合、見つかったとしても高い治療技術があれば、がんを治すことができるはずだ。医療設備が整った先進国では、がんによる死亡数が減少していって当然である。
ましてや、先進国の中でも、日本の医療はトップクラス。「とくに手術の技術は、世界一」(前出・中川医師)とも言われる。そんな日本でなぜ、がん死が増え続けているのだろうか。
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