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北海道電力の赤字は原発のせいだった!! (原発停止のせいじゃないよ)

2014-08-04
 ここ2日ほど、北海道電力の苦境について書いてきましたが、(いや、目的は別のことだったんですが、なぜか北電の突出した数字に目が行く始末)、その原因について、ネット情報誌『スマートジャパン』の石田雅也氏、とても興味深い検討をしています。
 石田氏は2月時点で、既に北電の惨状を取り上げています。

 「先行きが見えない北海道電力の経営、再値上げでも利益は出ない (1/2)」(2月19日)

 なんと恐ろしい見出しでしょう。再値上げをしても、北電は利益を出すことができないというところまで予言しています。本当にそうなるのでしょうか??
 まずはこの時点で石田氏が指摘する、北電の赤字の原因です。

北電赤字理由
スマートメディア 2月19日

 上のスクリーンショット、一行目からガーンです→「燃料費は前年と比べて1割以上も少なくなっている(図2)」。表を見ると、確かに「(△212)」となっています。“原発停止に伴う燃料費増加のため、赤字がかさんだ”、といった説明を電力会社は繰り返してきたわけですが、なにコレ。
 それでは、何が赤字の原因かというと、2行目以降で、「実際に費用が増加しているのは『その他費用』で、『原子力損害賠償支援機構一般負担金』と『再エネ特措法納付金』の2つが大きい」と、石田氏は記しています。北電作成の図2には確かにそう書いてあります。ただし石田氏はこれに注釈を入れます。スクリーンショットの後になりますが、「再生エネ特措法納付金」については、再生エネ(買い取り)が豊富な北電では、この額はいったん国に収めても、それよりも大きな額が「再エネ特措法交付金」として還ってくる、と指摘しています。
 と、いうことは、北電の赤字の原因、最も大きいのは、要するに「原子力損害賠償支援機構一般負担金」だということになります。つまり、北電の赤字の原因は、原発そのものだった、ということです。「原子力損害賠償支援機構一般負担金」というのは、原発事故に備えてちゃんと保険を掛けておかなったせいで今さら払わなければならなくなった(福島事故の)賠償金、つまり原発運営経費(保険料の後払い)なのですから。

 ということで、一応、話は終わりなのですが、これだけなら他の電力会社でも事情は同じ。北電が飛び抜けて赤字となっている理由について、さらに説明が必要でしょう。
 石田氏はこの記事で、上の説明に加えて、さらに詳細に北電の燃料コストの分析などを行い、まとめます→「こうして見ると、北海道電力の収支は値上げを実施してもさほど改善しないことが想定できる。実質的な費用の増加は原子力関連で発生している部分が大きい。かりに泊発電所を再稼働できたとしても、その後の安全対策を含めて維持コストが増えていくことは確実な情勢だ」。
 そして、北電がこの苦境を脱するには、北電が(原子力偏重のため)投資をサボってきた石炭もしくはLNG火力発電所、そしてより多くの再生エネを受け入れるための送電網の整備が必要だ、とします。

 さらに3月には石田氏、北電が窮地に陥る、もうひとつの原因を指摘しています。

 「6%の節電目標を上回った北海道、3年連続で最大電力が減少」(3月11日)

 そもそも、北電の収益改善の課題は、いかにして電気を供給するかではなくて、減ってしまう電気使用量に対応して、どうやってコストを削減するかだったのです。北電の発電所が古い石油火力中心で、発電コストが高くつくのが一番の問題なのですが、この問題に対応したコスト削減は、何も大規模な原発でなくとも良いわけです。というか、ちょっと補足リンク張っておくと、原発は現在、実際に金ばかりかかって低コストではありません。で、その上、当分動かせないんで、単なる金食い虫。 
 ということで、赤字漬けの北電、電気料金値上げを申請せざるをえないわけですが、やってること(原発再稼働に経営資源集中投入)が根本的に間違っているから、ますますドツボにはまる、というのが、石田氏の予言です。

 「燃料費が減るのに電気料金を値上げ、原子力を増やす前提の北海道電力」(4月25日)
 「石油と原子力に依存し続ける北海道電力、再度の値上げが販売量の低下を招く」(8月1日)

 もともと北海道での電気使用量が減っているところへ、電気料金値上げなんてしたら、ますます節電されて、売上が減るだけ、というわけです。
 石田氏は記します、

 「全国に10社ある電力会社の中でも、北海道電力の燃料費の比率はひときわ高い。最大の問題は老朽化した(石油)火力発電所が多く、発電効率の高いLNG(液化天然ガス)を使える火力発電所が1つもないことだ・・・略。/北海道電力は再値上げの理由として、原子力の泊発電所の再稼働が遅れていることを挙げている。しかし実際には原子力に依存するあまり、火力発電所の設備更新を怠ってきた影響が大きい。以前から石油の価格はLNGや石炭と比べて高く、長期的に上昇する傾向にあることも十分に想定できた。経営責任を問われて当然の状況だ。」(8月1日記事

 石田氏記事からの引用ばかりじゃなんですので、以前当ブログで作ったグラフを掲げておきます↓

発電熱効率
(「発電効率最低の北海道電力、電気料金再値上げの世迷い言!!」2月19日などで掲載)

 で、最後にもう一言だけ、石田氏の言葉を引用しておきます。

長年にわたって国の保護と総括原価方式による甘い経営を続けてきた結果、競争力に乏しい事業体になっていることが最大の問題だ。同様のことは他の電力会社にも当てはまる。」(2月19日記事)


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