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昨日「予告」(?)したので労運研合宿の参加報告を書かなければならないが、気が重い。「連合」とは異なり、現場を熟知する役員・活動家ゆえに、ここには明確な「危機感」がある。しかし、明確な解決策は提示できえない。それだけ「危機」の病巣は根深く、深刻だ。日経連が提示した「新時代の日本的経営」から来年で20年が経つという。そして「連合」が結成されて25年。最近も西谷さんに「なぜここまで労働者が苦しめられているのに、労働組合はストも打てず、闘わないのですか」と、講演会の冒頭で痛罵されているというが、瓦解の速度は急速に進行している。 書きたくないが、いくつか象徴的な事象を報告してみよう。 ●ある「連合」の地協で、今年は分裂メーデーになったという。前年のメーデーの「反省」で「原発再稼働反対」を持ち込まないことが確認されたにもかかわらず、一部組合がシュプレヒコールをあげ、D総連が問題視し、排除を主張。金属関係の数産別も同調したため、「連合」と「平和運動センター」が別々に開催せざるをえなくなったという。全国の地方連合会や地協では、役員のなり手がおらず、D総連から役員を出さざるをえない。D総連は、会社の意向とバックアップも受け、電機や基幹労連等の一部とも連携し、再稼働と原発輸出に反対する勢力をつぶしにかかる。したがって平和フォーラムの軸をなす自治労・日教組の排除が策謀される。沖縄県知事選では、連合は翁長候補を推薦しているが、D総連等は現職推薦にまわったという。来年の統一地方選では、「組織推薦」にあたって、さらなる「踏み絵」も用意されているようだ。今や、労働組合で確実に票が出るのはDだけであり、当選のために膝を屈する民主党議員が続出している、とも聞かれる。 ●その自治労や日教組も足腰がどんどん弱くなっている。今年の自治労別府大会では、賃金課題と同時に「新たな政治対応方針」が焦点となった。しかし民主党政権の失敗は根深く、自治労組織内議員の大量落選を受けて、「立憲フォーラム」以外にどのような勢力を伸張させるか明確になりきれず、方針も曖昧になった。一部では、公明党にもアプローチしているとさえ言われる。自治労本部は政府の賃下げ提起にストを含む統一闘争を提起したが、ほとんど行使できず、今年の賃金闘争でも後手にまわっている。公務員バッシングの影響は甚大で、役員のなり手もいない中で、すべてに腰が引け、住民のクレームにおびえている様な現状だ。その中で確実に委託化と非正規化が進み、公務労働の空洞化・民間丸投げが強まっている。 ●私鉄の今年の大会も、初めてのスト放棄春闘を受け注目されたが、多くの中小等による「ストを構えずして、成果がでるはずがない」との意見にもかかわらず、本部は逃げに徹した。「回答が不満なら、ストを構えればいい」との本部答弁は、「住民に迷惑をかけるような行動はできない。今は交通政策重視だ」との立場に基づく。またかつて20万と言われた組織人員も8万人に減っている。多くの職場で分離・分社化が進行し、労働組合も丸裸になっている。管理職にならなければ給与があがらない賃金体系や本来業務重視の組合運営等々、厳しい事態が続いている。 いくらでも書けそうだが止めよう。多くの職場で労働組合の現場力が失われている。共に働く仲間が分断され、格差と差別が持ち込まれ、孤立化を深めている。外部のユニオンでしか闘いが提起できないほど、現場交渉力が喪失している。長時間残業やダブルワークをしなければ生きられない労働者が急増するなかで、そこに労働基本権が機能しない。労働組合という名前がついたユニオンショップによる労務管理機能は生き残っても、そこには運動も未来も見えない。 「労働組合は民主主義の学校」だと教わり、トップダウンではなくボトムアップだと訴えてきた。労働組合の瓦解は民主主義の崩壊過程でもある。再度「働く」とは何なのかもとらえ返していきたい。口直し(?)にはならないが、朝日新聞のこんな記事を掲げて終わる。 >(女が生きる 男が生きる)欧米の模索:下 飲み会、家庭と両立 短時間勤務者の待遇改善 オランダ(朝日新聞 2014年9月8日) 明るい日差しが差し込む金曜日の夕方5時。オランダ・アムステルダムのバーの屋外の席で、仕事を終えたばかりの男女8人がワインやビールを飲んでいた。企業情報を提供する会社の同僚たちの飲み会だ。 白ワインのグラスを傾けていたタマラ・フェアスタイネさん(38)は、小学生の2人の子どもがいる母親だ。「同僚の人柄も分かるし、職場での意思疎通が円滑になる。週に1回くらい、同僚どうしでお疲れ様っていう時間を持ちたいじゃない」。お酒を飲んで交流を深める「飲(ノ)ミュニケーション」は日本と同様といえる。 だが、はっきりとした違いがある。飲み会の時間は金曜の夕方にせいぜい1〜2時間。飲みたい人が来て、自分のタイミングで帰る。「夕食の時間には家に戻り、家族と食べる」のが共通認識になっている。 こうした飲み会は「ボレル」と呼ばれる。女性の就業率を急速に高めるなかで、家庭と職場を両立させるために自然にできた工夫だ。 日本では、出産後に半数の女性は仕事を辞め、幼児を育てる女性の就業率は先進国のなかで最も低い水準だ。試行錯誤しながらまずは女性が働きやすい社会をつくり、さらに女性管理職を増やしてきた欧米の事例から考える。 ◆「小さい子どものいる人でも、このスタイルの飲み会なら参加できる」 金曜夕方の短時間の飲み会「ボレル」に参加していたピーター・フェモールンさん(34)はこう語る。「ボレル」が広がったのはここ30年、働く女性の割合が急激に高まったためだ。 1970年代はじめ、オランダの女性の就業率は2割台にとどまり、5割超だった日本をも大きく下回っていた。当時は「母親が家庭で子どもを育てるべきだ」という意識が強く、専業主婦が多い社会だった。 変化するきっかけは不景気だった。 オランダは70年代〜80年代にかけ、「オランダ病」と言われる不況に苦しんだ。80年代初頭にはマイナス成長に陥り、83年の失業率は約8%(国際通貨基金による)に達した。 当時、雇用をどう増やすかが課題だった。政労使は82年、1人当たりの賃金は抑制する一方、できるだけ多くの人を雇う「ワークシェアリング」で合意した。 このときオランダは、働く時間が短い人の待遇を引き上げる方向にカジを切った。フルタイムで働く人たちに短い時間の勤務をのんでもらったり、今まで働いていなかった人に短時間でも働いてもらったりするためには、短時間勤務でも正社員のような待遇を保障する必要があったためだ。 ◆「短時間労働者の待遇改善」で、働く女性の数は一気に増えた。 オランダでは82年、約1430万人の人口に対して、雇用者数は約560万人。雇用者数の人口比は約39%だった。これが、2002年には約49%にまで高まった。70年代には2割だった女性の就業率が、いまや7割まで高まったことが原動力だ。働く人が増えたことで消費も伸び、90年代後半には経済成長は年3%〜4%半ばに達し、「オランダの奇跡」と呼ばれた。 アムステルダム郊外に住むケース・ファンウンセルさん(33)とイザベル・デッダさん(35)は、長女マイちゃん(4)を育てている。ケースさんはソーシャルワーカー、イザベルさんは教育関係の会社勤務。夫婦とも短時間勤務で週4回計32時間ずつ働く。「とてもいいバランス」とイザベルさんは言う。 女性の就業率は世界でトップクラスになったが、課題もある。パートタイム労働を選ぶのは結局、女性が多いといい、週2〜3回のみ働く女性が半数以上を占める。オランダ雇用省は「女性にもっと長い時間働いてもらうことが、次のステップ」と説明する。 国際通貨基金は12年の報告書「女性は日本を救えるか?」で、オランダが日本のモデルになり得るかもしれない、と指摘している。 ◆父親向け育休を法制化 ノルウェー ノルウェーは「男女平等ランキング」で、世界136カ国のうち3位につける。しかし、はじめから進んでいたわけではない。 いま、女性の就業率は7割を超えるが、1970年代前半には4割台だった。国会議員のイングビル・シェルコルさん(38)は「母の時代は日本同様、専業主婦が多かった。70年代後半から社会が大きく変わった。女性解放運動に加え、女性労働力は経済成長にも必要だった」という。 ノルウェーはまず、政治の分野で、女性の割り当ての数値目標を定める「クオータ」を採り入れた。70年代から政党が候補者の女性割合を決めた。女性政治家が増えたことで、女性を後押しする政策が増えた。90年代には父親向けの育児休暇制度(現在は10週間)を法制化し、長期育休をとる父親は9割に上る。 放送局で働くシンデラ・ヘイエルダルさん(34)は2歳の長男、7カ月の次男がいる。妻が8カ月間の育休中で、入れ替わりで自分が2カ月とる予定だ。「父親の育休が普及したのは、法律のおかげ」と話す。 ただ、ノルウェーでは、企業の役員に占める女性の割合が8%台にとどまっていたことが問題になっていた。このため、06年には、上場企業の役員のうち女性の割合を4割以上にすることを法律で義務づけた。社会調査研究所のマリー・タイゲン研究員は「クオータは、ノルウェーで変革のスピードを早める『新幹線』のようなものだ」と話す。 ノルウェーにも課題はある。「女性は図書館などの公的部門、男性は給料の高い民間企業と、性別で仕事が分かれている傾向がある。男女の賃金格差がいぜんとしてある」と男女平等オンブッドのイルバ・ローネさんは指摘する。 米国には「クオータ」のような仕組みはない。だが、企業の女性管理職の比率は4割超で世界トップクラス。法律で女性差別を禁じたことが奏功した。 米西海岸のIT大手シスコシステムズの管理職、ケティー・カウルソンさん(35)は8、5、3歳の3人の子どもの母親だ。入社したのは子どもが生後9カ月のとき。「妊娠中とか小さい子どもがいるという理由で差別されることはない」という。1960年代の公民権運動を受け、公民権法や平等賃金法などができ、人種や性別などの差別を禁止した。法律制定で女性が賃金差別の訴えを多く起こすようになった。訴訟を避けたい企業は、公正な採用・昇進制度を整えた。 ただ、米国でも課題は多い。人材活用についてのシンクタンク研究員、ローラ・シャービンさん(33)は1歳の子どもを育てる。「米国の女性も育児との両立はむずかしい」。国による長期の育休制度はなく、労働時間も長いなどの課題がある。 ◆半数は出産後に退職 日本 日本では、いまも第1子の出産後に仕事を辞める女性は半数にのぼる。 3歳未満の子どもを育てる母親の就業率は、米国でも5割を超えるのに対し、日本は3割にとどまる。出産や育児期に当たる30代で、女性の働く割合が大きく下がるのは、主要7カ国(G7)のなかで日本特有の現象だ。 都内の中小IT企業に正社員として勤めていた30代の女性は2年前、育児と仕事の両立がかなわず仕事を辞めた。長男(3)を出産後、短時間勤務制度を使って復職したが、週のうち半分は午後9時ごろまでの残業を余儀なくされた。 上司に相談したが「そんな正社員はいらない。アルバイトになれば」と言われ、退社に追い込まれた。 労働組合の全国組織「連合」の調査によると、妊娠や出産などを理由にした違法な解雇や降格、嫌がらせなどの「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」を受けたのは妊娠した女性の4人に1人に上るという。 企業の女性管理職の比率は8・5%(従業員100人以上の企業の課長級)と、3割を超える欧米に比べて極端に低い。将来の幹部候補である総合職は94%が男性で、女性は6%(11年)と大きな差がある。 安倍政権は2020年までに指導的地位の女性を3割にする目標を掲げる。企業の女性管理職を増やすため、登用計画づくりを企業に求める法律を秋の臨時国会に出す方針だ。 ◆女性の活躍へ日本型雇用見直しを 山口一男・シカゴ大教授(社会統計学)の話 高度成長期を通じ、日本の労働者は終身雇用や年功賃金とひきかえに、無限定な長時間労働を企業に提供してきた。企業もそういう労働者を「戦力」とし、育児や家事を多く担う女性たちを排除した結果、日本企業は生え抜きの男性中心の同質的な組織になった。 1980年代まではこうした「企業戦士」モデルが通用したが、バブル経済崩壊後は20年以上にわたり、同質性を重んじる日本企業の多くが低迷している。多様な人材を生かす組織でなければグローバル競争を勝ち抜けないのは明らかだ。 安倍政権の「女性活躍推進」は、エリート層の女性たちには追い風だ。ただ女性の6割は、賃金が安くいわば「使い捨て」の非正規労働者だ。有期雇用と無期雇用の均等待遇が必要だ。長時間労働の重視や年功型の賃金・昇進システムも、非正規雇用者の使い捨てもみな女性への間接差別を内包している。日本型雇用の総合的な見直しなくして、女性の活躍はない。 |
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