2007年11月03日
宇多丸さん×細田守監督
4月21日、番組初ゲストはいきなり大物!本日は、番組初ゲストにして、今最も注目すべき人物が登場!
4月20日にDVDが発売されたばかりの、
日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞作品、劇場アニメ版「時をかける少女」の監督、細田守さんがゲストでした!
大林宣彦
版「時をかける少女」に過剰なまでの思い入れがある宇多丸だからこその、
他ではまず聞くことのできないゲストコーナーに!

細田守
さん: 宇多丸
さん:
宇多丸:今、最も注目すべき映画監督、細田守さん。お会いするのは久しぶりなので。体が大きいですよね。
細田守さん:(以下名前省略)最初に会ったのは2年前の夏でしたね。外人とね。
宇多丸:イアン・コンドリーというマサチュセッツ工科大学の教授で、比較人類学の、日本のヒップホップに詳しい。
細田さんの登場の仕方が時をかける少女っぽかった。店の非常口から入って来て。カラオケ店でころころと来るような。衝撃でした。しかも、勢いが凄かった。靴はいたまま登場して。
劇場版「デジタルモンスター」と2作目の「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」。おすすめなんですが。衝撃を受けました。東映マンガ祭りで劇場に行くにはハードルが高くて、DVDで見てひっくり返りましたよ。凄い才能だと。
ありがとうございます。『ブラスト』に書いていただいて。
宇多丸:廃刊になりました。ヒップホップ専門誌で何年も連載していて。
『ブラスト公論
』の中にあった公論ブログを教えてもらって、面白いのがあるというのでファンだった。
宇多丸:友達が増えたみたいという帯を書いてもらって。「時をかける少女」を去年の夏に観て、DVDをまた観直して、演出解説を観たりして、細田守という人は怖い。全ての演出が緻密で考え抜かれて、なんとなくの表現をしている人が多い中で、細田さんのインタビューを見ていると物の作り手として恥ずかしくなりましたよ。
とんでもない。宇多丸さんが大林版の「時をかける少女
」に思い入れがあるという話をされていて、僕自身が。
宇多丸:細田さんがアニメ版を作るというのを知らずにべらべらべらべら大林版への思い入れをしゃべりました。
僕は作る前だからこれだけ大林版への思い入れが強い人を相手に作るのかと。
宇多丸:原作は筒井康隆さんの『ジュブナイル』なんだけど、「時をかける少女」と聞くと当然原田知代版を想像していた。何個か映像化されているけれども、全てが大林宣彦版の影響を逃れられない。
夜寝ていて、大林版を脳内で上映できます。笑顔、イエス、ヌードの正しいPVと同じくらい正確に上映できる。全てのシーン、カットに僕なりの読みがあって、深すぎて、ロフトプラス1辺りでやりたいですよ。全編に渡りセックスのメタファーだらけ。
初めて聞いてそんな映画だったのか。
宇多丸:未来から来た男はかなり危ない犯罪者である可能性がある。レイプ犯。よしやまかずこさんはそれの犠牲者という。嗅がされているのは単にクロロフォルムではないかと。ラベンダーの香りは男性的な香りだと性のメタファーだと散りばめられている。カーテンコールで落ちがついたりとかおかしな映画。強烈な映画で、滅茶苦茶な映画なんですよ。そこで、リメイクされて。細田さんならやってくれるんじゃないかと言ったと思うんですが。
期待していますと言ってもらえたのが励みになった感じがしましたよ。
宇多丸:質問でなぜアニメ化しようと思ったのですか。リメイクはやっぱり文句言われるじゃないですか。よく「椿三十郎」をリメイクしようと思ったなと。正気かみたいな。躊躇は。
筒井先生の作品で、7回映像化されている。原作ができて40年。こんなに繰り返し作られている作品もないのではないかと。必ず、「時をかける少女」と聞くと僕らは大林版で、別の人は内田由紀さんの「時をかける少女」。NHKの少年ドラマシリーズの「時をかける少女」。その時に10代だった時の時をかける少女。そう考えると今の10代にとっての時をかける少女であるべきじゃないか。運命を背負った原作なんだとチャレンジしたいなと。
宇多丸:本当の意味で古典。何度も語りなおすことで意味がある。
シェイクスピアとか僕らにとってはそういうものになっているのではないかと。
宇多丸:続きの話でもあるし、大幅に改編している。
見ていない人でも全てわかる。見た事がある人でも見れると心掛けたんですね。
宇多丸:14歳の夏に観てしまって呪いをかけられて、大林宣彦版の中からタイトルの「愛のためいき」を。
〜♪桃栗三年柿八年、ゆずは九年でなり下がる梨の馬鹿めが十八年〜
宇多丸:似ても似つかない映画ですよね。「時をかける少女」のタイムリープは性の目覚めメタファーなんだから性のメタファーが入っていない「時をかける少女」は「時をかける少女」じゃないと断言をしたらしいんですよ。
そう言われていました。
宇多丸:今回の細田版の映画では性のメタファーではない映画で、むしろ恋愛が中心ではないようなテンション。
そっち方面では勝負はかなわないと思った。
宇多丸:対照的なアプローチ。大林版では青春映画でもなんでもなくて、閉じた箱庭の中の病んだ話なんですよ。最後のカーテンコールが青春映画。
宇多丸さん的な解釈で言えばですよ。
宇多丸:今回はまさにターゲットは10代、青春時のこの夏に見て欲しいという狙いがばっちり当たったという。
80年代に僕らが思っている成長に関わるイニシエーション、性的なことはプレッシャーがあった。大きい話だった。それに対してなかなかアプローチできない分、妄想が膨らんでいくのがあったと思うんだけど、今の子はセックスの問題とか男女間の問題を僕らは不器用に扱ったけれども今の子達は自然のことのように受け止めてその上で友情関係とかある種の思春期を過ごしている。だから、全然違うのではというのがあって。80年代を過ごした僕らの気分と同じ気分でやると全然違うものになる。
宇多丸:だいいち大林版みたいな青春もないけどね。
そこが懐かしくもあるし、改めて大林監督の作品を見て名作ダナと思ったんですよ。前提で僕たちの時代で何が出来るのかを改めて考えることになった。前の作品に対して対抗するのではなく、尊敬した上で自分たちの青春期の中の一つの重要な作品、大林作品の中での重要な作品、80年代の日本映画の中での重要な作品でいろんな要素のある作品だから、なおかつ筒井先生の「時をかける少女」と向きあった時にどういうに答えが今出せるのかを凄い考えました。
宇多丸:完璧な正解。「時をかける少女」と言った時にこれからは細田版になったと思いますよ。
過去の名作たちと並んで認めてもらうように。
宇多丸:何を謙遜してるの。映画の出来では過去の映像化の中で断トツですよ。支持が実際に広がって。監督自身も想像を超えたのでは。
そうですね。去年の7月15日に公開が始まって、小規模から始まって、映画の興行は1ヶ月、1ヵ月半で終わっちゃうのにロングランで劇場を変えてフィルムがあらゆるところで上映されて。6館から始まって延べ100館以上で上映されることになったりとか。ついこの前まで東京でも上映されていた。そういう意味ではこういうことは特にアニメーション映画ではほとんど聞いた事がないし、その上でさらに上映されてきたことでDVDで手軽に見れる。ほかの映画と並んで皆さんに楽しんでもらえるようになったかな。
宇多丸:見れば絶対満足するので。初回限定版では私が書いているものがブックレットが。このあと「アポカリプト」の話をしたいので是非飲みに行きたい。
(2007年04月21日TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャフル」より)
大林監督の作品はどれも嫌らしさがある。宇多丸さんの言う性の目覚めは確かにそうだなと思った。おかしな作品なのになぜか引っかかる。一方の細田さんの作品は全く別物だけれども、爽やかでしかも懐かしさがある。全く違うものにしたというふうにしたのは成功だったと思う。
こんなにロングラン上映になった映画も近年では少ない。
4月20日にDVDが発売されたばかりの、
日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞作品、劇場アニメ版「時をかける少女」の監督、細田守さんがゲストでした!
大林宣彦
他ではまず聞くことのできないゲストコーナーに!
細田守
宇多丸:今、最も注目すべき映画監督、細田守さん。お会いするのは久しぶりなので。体が大きいですよね。
細田守さん:(以下名前省略)最初に会ったのは2年前の夏でしたね。外人とね。
宇多丸:イアン・コンドリーというマサチュセッツ工科大学の教授で、比較人類学の、日本のヒップホップに詳しい。
細田さんの登場の仕方が時をかける少女っぽかった。店の非常口から入って来て。カラオケ店でころころと来るような。衝撃でした。しかも、勢いが凄かった。靴はいたまま登場して。
劇場版「デジタルモンスター」と2作目の「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」。おすすめなんですが。衝撃を受けました。東映マンガ祭りで劇場に行くにはハードルが高くて、DVDで見てひっくり返りましたよ。凄い才能だと。
ありがとうございます。『ブラスト』に書いていただいて。
宇多丸:廃刊になりました。ヒップホップ専門誌で何年も連載していて。
『ブラスト公論
宇多丸:友達が増えたみたいという帯を書いてもらって。「時をかける少女」を去年の夏に観て、DVDをまた観直して、演出解説を観たりして、細田守という人は怖い。全ての演出が緻密で考え抜かれて、なんとなくの表現をしている人が多い中で、細田さんのインタビューを見ていると物の作り手として恥ずかしくなりましたよ。
とんでもない。宇多丸さんが大林版の「時をかける少女
宇多丸:細田さんがアニメ版を作るというのを知らずにべらべらべらべら大林版への思い入れをしゃべりました。
僕は作る前だからこれだけ大林版への思い入れが強い人を相手に作るのかと。
宇多丸:原作は筒井康隆さんの『ジュブナイル』なんだけど、「時をかける少女」と聞くと当然原田知代版を想像していた。何個か映像化されているけれども、全てが大林宣彦版の影響を逃れられない。
夜寝ていて、大林版を脳内で上映できます。笑顔、イエス、ヌードの正しいPVと同じくらい正確に上映できる。全てのシーン、カットに僕なりの読みがあって、深すぎて、ロフトプラス1辺りでやりたいですよ。全編に渡りセックスのメタファーだらけ。
初めて聞いてそんな映画だったのか。
宇多丸:未来から来た男はかなり危ない犯罪者である可能性がある。レイプ犯。よしやまかずこさんはそれの犠牲者という。嗅がされているのは単にクロロフォルムではないかと。ラベンダーの香りは男性的な香りだと性のメタファーだと散りばめられている。カーテンコールで落ちがついたりとかおかしな映画。強烈な映画で、滅茶苦茶な映画なんですよ。そこで、リメイクされて。細田さんならやってくれるんじゃないかと言ったと思うんですが。
期待していますと言ってもらえたのが励みになった感じがしましたよ。
宇多丸:質問でなぜアニメ化しようと思ったのですか。リメイクはやっぱり文句言われるじゃないですか。よく「椿三十郎」をリメイクしようと思ったなと。正気かみたいな。躊躇は。
筒井先生の作品で、7回映像化されている。原作ができて40年。こんなに繰り返し作られている作品もないのではないかと。必ず、「時をかける少女」と聞くと僕らは大林版で、別の人は内田由紀さんの「時をかける少女」。NHKの少年ドラマシリーズの「時をかける少女」。その時に10代だった時の時をかける少女。そう考えると今の10代にとっての時をかける少女であるべきじゃないか。運命を背負った原作なんだとチャレンジしたいなと。
宇多丸:本当の意味で古典。何度も語りなおすことで意味がある。
シェイクスピアとか僕らにとってはそういうものになっているのではないかと。
宇多丸:続きの話でもあるし、大幅に改編している。
見ていない人でも全てわかる。見た事がある人でも見れると心掛けたんですね。
宇多丸:14歳の夏に観てしまって呪いをかけられて、大林宣彦版の中からタイトルの「愛のためいき」を。
〜♪桃栗三年柿八年、ゆずは九年でなり下がる梨の馬鹿めが十八年〜
宇多丸:似ても似つかない映画ですよね。「時をかける少女」のタイムリープは性の目覚めメタファーなんだから性のメタファーが入っていない「時をかける少女」は「時をかける少女」じゃないと断言をしたらしいんですよ。
そう言われていました。
宇多丸:今回の細田版の映画では性のメタファーではない映画で、むしろ恋愛が中心ではないようなテンション。
そっち方面では勝負はかなわないと思った。
宇多丸:対照的なアプローチ。大林版では青春映画でもなんでもなくて、閉じた箱庭の中の病んだ話なんですよ。最後のカーテンコールが青春映画。
宇多丸さん的な解釈で言えばですよ。
宇多丸:今回はまさにターゲットは10代、青春時のこの夏に見て欲しいという狙いがばっちり当たったという。
80年代に僕らが思っている成長に関わるイニシエーション、性的なことはプレッシャーがあった。大きい話だった。それに対してなかなかアプローチできない分、妄想が膨らんでいくのがあったと思うんだけど、今の子はセックスの問題とか男女間の問題を僕らは不器用に扱ったけれども今の子達は自然のことのように受け止めてその上で友情関係とかある種の思春期を過ごしている。だから、全然違うのではというのがあって。80年代を過ごした僕らの気分と同じ気分でやると全然違うものになる。
宇多丸:だいいち大林版みたいな青春もないけどね。
そこが懐かしくもあるし、改めて大林監督の作品を見て名作ダナと思ったんですよ。前提で僕たちの時代で何が出来るのかを改めて考えることになった。前の作品に対して対抗するのではなく、尊敬した上で自分たちの青春期の中の一つの重要な作品、大林作品の中での重要な作品、80年代の日本映画の中での重要な作品でいろんな要素のある作品だから、なおかつ筒井先生の「時をかける少女」と向きあった時にどういうに答えが今出せるのかを凄い考えました。
宇多丸:完璧な正解。「時をかける少女」と言った時にこれからは細田版になったと思いますよ。
過去の名作たちと並んで認めてもらうように。
宇多丸:何を謙遜してるの。映画の出来では過去の映像化の中で断トツですよ。支持が実際に広がって。監督自身も想像を超えたのでは。
そうですね。去年の7月15日に公開が始まって、小規模から始まって、映画の興行は1ヶ月、1ヵ月半で終わっちゃうのにロングランで劇場を変えてフィルムがあらゆるところで上映されて。6館から始まって延べ100館以上で上映されることになったりとか。ついこの前まで東京でも上映されていた。そういう意味ではこういうことは特にアニメーション映画ではほとんど聞いた事がないし、その上でさらに上映されてきたことでDVDで手軽に見れる。ほかの映画と並んで皆さんに楽しんでもらえるようになったかな。
宇多丸:見れば絶対満足するので。初回限定版では私が書いているものがブックレットが。このあと「アポカリプト」の話をしたいので是非飲みに行きたい。
(2007年04月21日TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャフル」より)
大林監督の作品はどれも嫌らしさがある。宇多丸さんの言う性の目覚めは確かにそうだなと思った。おかしな作品なのになぜか引っかかる。一方の細田さんの作品は全く別物だけれども、爽やかでしかも懐かしさがある。全く違うものにしたというふうにしたのは成功だったと思う。
こんなにロングラン上映になった映画も近年では少ない。