こっちの地名をつけてよ 橋の名両岸綱引き 飯塚・遠賀川 福岡県の独断命名きっかけ [福岡県]
福岡県が同県飯塚市の遠賀川に建設中の橋の名称をめぐり、川の両岸の住民がそれぞれの地名を冠するように主張し、1年以上名称が決まらない状態となっている。県の担当者が6年前、地元に相談しないまま名称を決めようとしたことが事態を複雑にしており、関係者は「2年半後の開通までに決まるのか」と懸念する。
問題の橋(長さ241メートル、幅23メートル)は、県が整備している都市計画道路鯰田中線(約1キロ、事業費93億円)の一部で、観光施設「旧伊藤伝右衛門邸」がある幸袋地区と、対岸の川島地区を結ぶ。2010年3月に着工し、16年度の完成を目指している。
県飯塚県土整備事務所によると、県が架けた橋の名称は通常、地元自治体を通じて住民から公募するなどし、開通までに県が決定。県の橋梁(きょうりょう)台帳に登録する。
ところが、今回は08年5月、当時の県事務所の担当課長が独断で「川島大橋」という名称を起案。「これでいいでしょう?」と両地区の自治会長に告げただけで、住民説明会などは開かず、内定していた。
昨年8月、幸袋地区の住民が「そろそろ橋の名称を決めよう」と求めたところ、県は「既に川島大橋に決まっている」と回答。このため住民が「決め方がおかしい。幸袋大橋にすべきだ」と抗議した。
県事務所は「当時の担当者が橋の名称を軽視していた。不適切な対応だった」と認め、両地区の住民代表に協議を呼び掛けたが、今度は川島地区の住民が「川島大橋に決定済み」と反発。話し合いができない状態が続いている。
両地区とも「住民同士でいがみ合いたくない」として、近く協議を始める予定だが、どんな名称になるかは見通しが立っていない。
都市計画に詳しい九州大大学院の樋口明彦准教授(景観学)は「住民とじかに接する機会が少ない県は組織の性質上、住民との意思疎通に慣れていない。地名や歴史を踏まえて、住民参加型で長く親しまれる名前に決めることが理想だ」としている。
=2014/10/13付 西日本新聞朝刊=