にほんごのれんしゅう

日本語として伝えるための訓練を兼ねたテクログ

幻想再帰のアリュージョニストを読んでることがバレた

幻想再帰のアリュージョニストを読んでることがバレた

 もともと,私はSFはよく読むほうです.「小説化になろう」というサイトは低俗な小説を多く出していると思いきや,ガチSFの「幻想再帰のアリュージョニスト」に出会い,ちょっとはまってしまいました.
 関連用語をツイッターでぶつぶつといっていたら,見事にallusionistに分類されてしまいました.最近の発言検索と,発言に基づくクラスタリング性能ってすごいね!ブートストラップ的,学習法を使っているのでしょうか.分類能に少々脅威を感じます.

これは面白い?

 多くのSF読者にとっては,面白いと思います.モダンなアイディアが数多くちりばめられており,読者をあきさせません.
 正直,バトルシーンは冗長で長いので,さくさく進めてほしいのが本音だったりします.あっ,でも百合描写はなぜか異常に丁寧なので,とても好感が持てます.マリ見てみたいです.
 ラノベの素性と,モダンハードSFの素性を圧力鍋にぶち込んで,煮詰めた感じ.
 私以外にも,読んでる方多いですよ.
http://d.hatena.ne.jp/orangestar/searchdiary?word=%B8%B8%C1%DB%BA%C6%B5%A2
http://d.hatena.ne.jp/Erlkonig/20140914/1410694044

ネタの原点探し(ネタバレあり)

 呪力とは.近年のSFによく見る,言語がミームとして作用して,他者に影響を与えるというのは,「虐殺器官」から来たアイディアでしょうか.この作品ではミーム=呪力みたいな扱いになっています.

神は信じられているからこそ莫大な量の信仰というミーム、すなわち呪力を蓄え、圧倒的な力を振るう事が出来る。ミエスリヴァが行使する絶対的な主神の力は、信仰心というミームをリソースにしたものだ。

 アズーリアの「闇の左手」は,アーシュラの「闇の左手」に由来しています.女の主人公の左手に宿っているのは,過去遡及できる魔法で敵の存在を解体・分析して,すべてを知ることで,神秘性をなくします.神秘性がない敵は,ミーム的に弱いとか何とか...(無理やり感).敵は主に神様とか,そういうレベルなのです.スケールでかい.ラノベ持ち出しちゃうのも程度が知れちゃっていやなのですが,「カンピオーネ」が近いでしょう.独自解釈ですが,過去遡及の魔法は光速を越えていると想像しています.過去遡及ができるのは,タキオン粒子みたいな存在に限られますし.

「ただし、高位呪術――たとえば【静謐】ですね――によって離れた場所にある物体間の因果関係が光速を超えて伝わる時、それはあたかも時間を『遡って』世界に干渉しているように見えます。対抗呪文が事象を打ち消す時に遡及改変されるエネルギーの量とその閾値についてはめんどくさくなるのでまた今度説明しますけど――とにかく、確率的なふるまいの裏には確固とした存在がある。これが現代呪術の基本です。ま、私個人としては正直賛同しかねますけど」

 コルセスカの「邪視」は,視覚的に認知した世界を,自分の思うままに改変する魔法です.術を発動する当人のミーム(主観的な思い込み)を押し付けて,魔法が発動します.術を扱うコルセスカは,自己のミームを強化するためにサブカルチャーに傾倒しており,乙女ゲー中毒者です.そのためキャラが強いです.「涼宮ハルヒ」が元ネタでしょうか.ありようを願うとそのとおりに世界が改変されるというところが.

私の使う邪視呪術が意味するのは世界観の拡張。知覚や認識、現実世界に於ける価値判断に関わる呪術で、多くは光学的な情報を処理することで発動します。その効果は自らの主観的世界を他者の主観的世界に押しつけること。つまり客観的な世界そのものの改変です。妄想を具現化する技術と言い換えてもいいでしょう。

 トリシューラの「人工知能もしくは,人工無脳」.トリシューラというアンドロイドがいて,自己が人間などのひとつのアイデンティティを備えた「自己の完成」を目指します.これは,割とありきたりだと思うのですが,「ハイペリオン」の人類から独立を勝ち取ったAIであるテクノコアからから来ているのかと.哲学してしまうアンドロイドなら,いろんなSFで扱われていますね.第三章まで読んでるのですが,確率場を使って動いているそうですが,ベイジアンネットワークと説明されています.モデルなしのニューラルネットの間違いではないかと思うのですが,どうでしょう?

「アキラくんの複製を実行した瞬間、ちょっとだけ見えたよ。最上位のトリシューラの姿が。やっぱりシューラは複合型だった。全部は把握し切れてないけど、主要なモデルは九つ。かろうじて確認できた一つが、自己組織化された脳細胞群のはたらきを、蓄積された情報に基づいて確率推論で最適化していくタイプのニューラルネットワークだった」 セル・オートマトンベイジアンネットワーク? またえらく古典的な。まあ他に八つなら、まだまだ浅い層ってことなのか」

 自己の連続性の問題.まったく同じ分子構造,脳内シナプスの状態で,ある人AさんがB1で0.0000001秒にも満たない,Aさんにも認知できないほど短い時間で殺され,同時刻にB2地点にAさんが,分子レベルから再構築された場合,Aさんは物理的は別の場所であるが,肉体と,脳内の状態は一緒なので,意識の不連続が発生するものの死んだことになるかという問題でした.元ネタわかりませんが,哲学で論じられた問題.のひとつであることは覚えています.

「悪いがな、俺の故郷じゃ意識の連続性なんてのは、ナチュラリストロートルの繰り言って扱いなんだよ!」

 「感情コントロールデバイスE・E」エモーションエ...?何の略?わかりません.でも,元ネタはわかります.「テキスト9」におけるエンパシニックという感情制御デバイスのことかと.長らく,感情を薬物ないし,機械で操作するのって大手のメジャータイトルではやってないですよね.生理的に,気持ち悪いからでしょう.それはわかる.近年のぶっ飛んだ設定のSFではよく見ます.

感情制御をしている俺が、微かにとはいえ恐怖を感じることなどあり得ない。【E-E】は正常に機能していて、エラーは一切検知されていない。ということはつまり、敵の呪術は俺がこの世界に持ち込んだアプリの機能を無視して機能するということだ。

 「完全言語」この言葉って,単純に完全に誤解無く,主観的に認知される判断要素を除いた状態で情報が伝わることだって理解しています.あなたの見ているバラの赤い色は,私の見ているバラの赤とは厳密には異なるてきなことを解消できるのが完全言語かな.「テキスト9」では,トーラーという語をメタヒューリスティックな意味に扱うことで,解決していた気がする...原点はわかんないですが,言語を含む認知の差という点で見れば「ハーモニー」や「虐殺器官」や「戦闘妖精雪風」が近いかと.

「【絶対言語】の再生。引き裂かれた言葉と意思を、再び繋いで語り直す」

 「文字情報は、再帰的な自己参照を繰り返す性質を持ちます。この性質を利用して論理演算を行うのが伝詞回路です」レジスタマシンじゃない...だと!?副作用を持たないコンピュータのことだと思うんだけど,LispとかHaskellがそのままコンピュータプロセッサになったイメージでいいのかな.どうやって外界に影響を与えるインターフェースを作るんだろう.IOモナドとかでいいのかな.引用元が思いつきません.

「書かれたもの(エクリチュール)としての文字情報は、再帰的な自己参照を繰り返す性質を持ちます。この性質を利用して論理演算を行うのが伝詞回路です。現代の情報機器はほぼ全てこの仕組みで動いており、魔導書やスクロール、呪符などと基本原理は同じですね」