原発事故後初めて、「原発ゼロ」で迎えた夏が終わった。

 昨夏は動いていた原発2基が止まった関西電力は、火力など他の発電設備をフル稼働し、東京電力からの融通も合わせてなんとか電力需要のピーク時に3%の余裕を保つ計画だった。実際は最も需給が厳しかった7月25日でも6・6%を維持し、東電の融通も受けずに済んだ。

 夏の気温が低く、全体の需要を押し下げたのは間違いない。だが、関西の需要のピーク日は大阪で37度を超すなど猛烈な暑さだった。にもかかわらず比較的ゆとりがあった理由について、関電は想定を108万キロワット上回る節電があったと分析した。ほぼ原発1基分である。

 原子力規制委員会の審査が最も進んだ九州電力川内原発の再稼働も来年にずれ込む見通しで、この冬も原発ゼロが続きそうだ。楽観はできないが、ここまでの実績は励みになる。

 関電管内でのアンケートでは、9割超の事業所と7割近い家庭が「節電に取り組んだ」と回答した。多くの利用者は、できる限り節電に協力しようとしている。

 こうした努力に比べ、電力会社側の取り組みは遅々としているように見えてならない。

 古い火力発電所は故障のリスクがあり、電力各社は「安定供給には原発再稼働が不可欠」との立場を変えない。燃料費が経営を圧迫しているとして、北海道電力は11月に料金を再値上げする。他社も追随を模索する。

 だが、あくまで原発にこだわる姿勢が、経営環境の変化に対応していくために必要な改革にブレーキをかけてはいないか。

 福島第一原発事故後の安全策強化で、原発の売り文句だった「安くて安定的な電源」は過去のものとなった。16年以降の電力自由化によって、経費を料金で回収できる総括原価方式が撤廃されれば、経営上の重荷になる可能性も高まっている。

 生き残るためにも、電力会社は代替電源を確保し、原発頼みを改めていくしかあるまい。

 ここにきて、電力各社が他地域への供給に乗り出す動きが目立ち始めた。一方、送電線の容量が足りなくなったとして、再生可能エネルギーの買い取りを多くの社が中断した。事故から3年半を経ているのに、なんともちぐはぐな対応に見える。

 電力各社は、節電に幅広い協力が得られている今を大切な過渡期と位置づけ、「脱原発依存」の経営戦略をしっかり打ち立てるべきだ。「とにかく再稼働を」と繰り返すばかりでは、もう利用者に響かない。