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左、WACKを設立した渡辺淳之介。右、SCRAMBLESを設立した松隈ケンタ。
過激かつ革新的なプロモーションと、実験的でありつつもポップなサウンドで、カリスマ的な人気を誇ったアイドルグループ・BiS。今年7月、横浜アリーナで解散ライブ『BiSなりの武道館』を行い、大盛況のうちに幕を閉じた同グループの仕掛人が、マネージャーを務めた渡辺淳之介氏と、サウンドプロデューサーを務めた松隈ケンタ氏だ。BiS解散前、松隈氏は自身で音楽制作プロダクションのSCRAMBLESを設立、追って渡辺淳之介氏もミュージシャンのA&Rやマネジメントを行う事務所・WACKを設立した。2人は今後、互いに協力しつつ音楽業界にさらなる仕掛けを打ち出していくという。若き経営者となった2人が描き出すビジョンは、音楽業界にどんな風を吹かせるのか。川崎市に設けられたSCRAMBLESのプライベート・スタジオにて、編集者の上野拓朗氏が二人にインタビューを行った。(編集部)
渡辺「会社設立は、ネットで検索して見つけた税理士さんにまかせた(笑)」
——ふたりは別々に会社を設立したわけですけど、何で一緒にやらなかったんですか?
松隈:僕はBiSのサウンド・プロデューサーでしたけど、以前はメジャーでアーティストをやっていたこともあるし、彼女たちのステージングや売り方にもある程度自分の意見を今も持ってるんです。で、衣装とか曲順とかライブの進行とか、いまだにBiSのものには納得できてなくて(笑)。実際、渡辺くんにも「このミュージック・ビデオ、いいとは思うけど、あんまり自分は好きじゃない」って言ってたし。でも渡辺くんもバンドをやってきた人だから、自分の意見がある。そこはお互いを尊重しつつ、そういった分業方式が奇跡的にハマったのがBiSだと思っているので、それをひとつにくっつけちゃうと良くないかなって。
渡辺:まあ、悲しかったですけどね(笑)。周りの雰囲気も「一緒に(会社を)つくるんだよね?」って感じだったし。
松隈:ただ、僕の中では“別々の会社”っていうのは本当に形式的なものでしかなくて、ハート的なもののほうが大事だと思ってます。“会社”ってものが別々なだけで、結局は株みたいなものはお互いに出し合うわけで、実情は兄弟会社みたいなものですよ。だって今、実質的な社員は僕とあなたしかいないわけじゃん(笑)。
渡辺:そうですね(笑)。
松隈:だから別に前と変わらないんですよね。ふたつの会社が一緒のことをやってるっていう感覚でもいいんじゃないかなって。無理に財布を一緒にしちゃうほうが逆に怖い気もする。
渡辺:結婚した夫婦もやっぱり財布は別にしたほうがいいらしいですよ。
松隈:そうそう(笑)。僕の知り合いに司法書士がいて。会社作るのってどんな感じなんだろうって相談したら、「やってみたらすぐわかるから、すぐにやってやるよ」みたいになって。アレせぇコレせぇってガンガン言われて、そいつも個人で独立したばっかりだったから面白がって「やっちまえ!」って。気づいたら2〜3週間で会社になってた。ハハハハ!
渡辺:松隈さん、会社設立にあたって役所とか結構行ったでしょ?
松隈:うんうん。
渡辺:僕はああいうのはすべて税理士に任せちゃったから、逆にわかってないんですよね。しかもネットで検索して見つけた税理士さんに(笑)。
松隈「プロデューサーからエンジニアまでひとつのチームでやるほうが、これからはカッコいい音がつくれる」
——松隈さんが率いる音楽制作プロダクションのSCRAMBLESは、会社になる前から名前は存在していたんですよね?
松隈:そうです。チーム名みたいな感じで。
渡辺:ちょうど3年半前ぐらい?
松隈:いや、チーム名はもっと前からあるんじゃない。だから僕としては改めて会社登記したっていう感じで、何も変わってないんですよね。
渡辺: 3年半前ってBiSの立ち上げぐらいじゃないですか? まだ音楽だけで食えるかどうかわからないのに、松隈さんが川崎にプライベート・スタジオを建てた時、僕言いましたよね。「何やってるんですか? 金なくなったらどうするんですか?」って。
松隈:言った言った。反対してたもん。でも、当時はみんな思ってたよね。
——そう考えると、先行投資しておいて良かったですね。
松隈:そうですね。僕自身はぜんぜん心配してなくて、逆に何もしないと危ないと思ってたんですよ。曲をつくるだけだったら、将来仕事にならないなって。やっぱりレコーディングとかアレンジとかミックスまで全部できるアレンジャーを目指してたというか。ひとつひとつの作業はプロのエンジニアさんには勝てないかもしれないですけど、作品として一貫性を作りたかったから、プロデューサーからエンジニアまで環境も同じで、同じ仲間でひとつのチームでやるほうが、これからはカッコいい音がつくれるのかなって。で、それをやるためには、まずは場所がないといけないなって。
——資金はあったんですか?
松隈:えっと……実はそんなに金はかかってなくて。お金を借りるのは嫌なタイプなので、頑張ってちょっとずつ貯めたやつを一気に使い果たしましたね。なるべくシンプルで必要なものだけ揃えて。メジャーで採用された楽曲提供の印税もそこで全部使っちゃいました。
——例えば、印税収入もなければレコーディングやマネージメントのノウハウもないバンドマンもいるわけじゃないですか。本能のおもむくままに生きているような強烈なミュージシャンたちが……。で、そういう人の中には、実は松隈さんみたいなキャリアを築きたいと思ってる人がいるかもしれない。どうすればいいんでしょうね?
松隈:ちょうど昨日もそういう話をしていて。これは自信を持って言えるんですけど、こういう人(渡辺氏を指しながら)を見つけるべきなんですよね。若い頃のアーティスト時代の自分はバカでしたけど、ありがたいことに人にも恵まれたんで、そんなに嫌なことはやらされなかったんです。やりたいことをやらせてもらった結果、花は咲かずに散ってしまったけど(笑)。だから、気の合うマネージャーというか、自分を上に引き上げてくれる人に出会うか出会わないかだと思うんですよね。たぶん世の中で売れてる人には参謀じゃないけど、絶対に仕掛け人がいる。いわゆるプロデューサーという形がいちばん見えやすいけど、その人の下とか横にもたくさんの人がいる。そういった人たちに出会うのも運じゃないですか。でも、僕は運だけじゃないと思っていて、人間的な魅力や打ち上げの時の様子とか、そういうところで誰かが気づいてくれることもある。
——そうですね。
松隈:僕もそうだったんですけど、バンドをやっていると最前列のファンを一番に考えちゃうんですよ。ライブにも来てくれるし、いちばん反応が見えやすいじゃないですか。その距離感でやってしまうと、“もうちょっとこういう曲が欲しいんだけど”とか“新曲、今イチ。方向性変わったね”とかツイッターで書かれる内容にイチイチ反応しちゃうと思うんです。そこが陥りやすい罠で、そのせいでブレてしまうというか(笑)。でも、ステージ側にはスタッフやプロデューサー、仲間のエンジニアがいる。ちょっと言い方は悪いですけど、最前列の人たちは黙っていても一生懸命応援してくれるから、まずは身近な人たちが楽しいと思えるようなサウンドをつくらないと。
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