2014-10-10 ナショナリスト的にはこんな感じになるかなと
■[民族]もういい加減「ノーベル賞を獲った日系アメリカ人」を「日本人」扱いするのはやめよう
「日本人」には様々な含意がある。日本で,エスニックな意味での日本人家庭に生まれ,日本語を母語として日本文化のゆりかごの中で育ったという意味では,南部陽一郎氏や中村修二氏はなるほど日本人だろう。だが,ストックホルムで開かれるノーベル賞の授賞式では,彼らはアメリカ人だ。
今回,日系アメリカ人一世を含む3人のエスニックな意味での日本人に属する科学者がノーベル物理学賞を受賞した。以前から折に触れて主張してきたことだが,改めて書いておく。
「日本人3人がノーベル賞受賞」という言説 - Danas je lep dan.
ノーベル賞,iPS細胞,日本人 - Danas je lep dan.
「ノーベル賞を獲った日系アメリカ人」を「日本人受賞者」にカウントするのはやめるべきだ。それは第一に科学技術政策への批判的視点を麻痺させてしまう。「日本の科学が評価された!」などと騒いでいるひとが大勢いるが,実際には日本の科学に見切りをつけたからこそ中村氏はアメリカに渡ったのだ。「日本人が受賞した! 誇らしい!」と言わんばかりの報道は,日本の科学研究に訪れている危機やそのシステムに潜む問題点から人びとの目を逸らし,大袈裟に言えば隠蔽してしまう。
第二に。「アメリカ国籍を取得した日本人」をなんの留保もなしに「日本人」と見なす社会は,「日本国籍を取得した○○人」を,なんの躊躇もなく「○○人」と呼び続けるだろう。これは帰化するのなら同化しろとかそういう話ではない。彼らを「○○系日本人」「日本国民である○○人」ではなく「○○人」として遇するのだとしたら,わたしたちは彼らをけして社会に統合することなどできようはずもないし,民族としての自己を意識することもないし,それゆえに異民族差別に対して鈍感な人びとで在り続けるだろう。民族と国民は切断されるべきであり,日本民族に属すが日本国民に属さない中村氏のような人間は「アメリカ国民」として扱われるべきだ。少なくとも,そこが日本に里帰りしてきた彼をもてなす酒席ではなく,ノーベル賞を報じる新聞の論説などである場合には。
(余談だが,アメリカ国民になるために戦った日系アメリカ人兵士たちを「同胞」として称揚する言説のグロテスクさもいい加減どうにかしてほしいと思うところであり)
第三に。多くの報道機関は南部氏や中村氏を「日本人」と扱うことでダブルスタンダードをおかしている。上述の過去記事でも指摘したが,2年前に中国籍の作家莫言氏がノーベル文学賞を受賞した時,多くの新聞が「中国人として初のノーベル文学賞」と報じた。だが実際には,フランス国籍を取得したエスニックな意味での中国人である高行健氏が既に文学賞を受賞していたのだから,南部氏や中村氏を日本人とカウントするのであれば彼も中国人にカウントしないと筋が通らない。逆に高氏をフランス人とカウントするなら南部氏らもアメリカ人とカウントされるべきであるはずだ。これでは,自国の受賞者数は水増しして,他国の受賞者数を少なく見せようとしていると言われても仕方あるまい。
彼らを「日本人」として扱うことで,なるほど同胞としての誇りは得られるかもしれない。だがそのために,上に挙げたような問題点の数々を見過ごすのだとしたら,誇りと引き替えにするものはあまりに大きいのではないだろうか。
- 33 http://b.hatena.ne.jp/
- 18 https://www.google.co.jp/
- 6 http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/Mukke/20141010/1412958116
- 6 http://b.hatena.ne.jp/entrylist?of=40
- 6 http://feedly.com/index.html
- 6 http://pipes.yahoo.com/pipes/pipe.info?_id=02db597254ec68550537866a2fca2ce6
- 5 http://b.hatena.ne.jp/hotentry/knowledge
- 5 http://t.co/5GT89HiF64
- 4 http://b.hatena.ne.jp/entry/228327997/comment/Mukke
- 4 http://feedly.com/