国籍も宗教も性別もかかわりなく、子どもは誰も、守られる権利や育つ権利などをもつ。

 人類が20世紀にたどりついた原則を定めた「子どもの権利条約」が国連で採択されて来月、四半世紀を迎える。

 世界の現実をみると、その実現にはまだはるか遠い道のりがあると言わざるを得ない。

 貧困や戦乱、差別など様々な理由で、教育の機会を奪われる子が少なくない。国連児童基金によると、世界の子どもの15%が働かされているという。

 そんな苦境の子どもを救おうと尽力してきた南アジアの2人にノーベル平和賞が贈られる。

 インドの男性カイラシュ・サティヤルティさん(60)と、パキスタン出身の女性マララ・ユスフザイさん(17)。

 先進国も新興国も、自国の経済成長ばかりに関心を集中させがちな時代である。置き去りにされる子どもたちに少しでも思いをはせる好機と考えたい。

 サティヤルティさんは、南アジアから児童労働をなくす運動に長年取り組んできた。その活動団体が80年以降に救った子どもは8万人をゆうに超す。

 その訴える言葉は常に説得力に満ちている。代表的な例は、南アジアのサッカーボール産業である。ボールを縫う仕事をさせられている多くの貧しい子たちが、どれほどボールで遊べる日を夢見ているか、と。

 史上最年少で平和賞を受けるマララさんは今や、女性教育の権利を訴える世界の旗手だ。

 学校に通っていたパキスタンで過激派から銃撃されたが、一命を取りとめた。英国移住後も高らかに声を上げ続けている。

 残念ながら、パキスタンとインドはこれまでしばしば対立し、紛争も経験した。その一番の被害者は子どもたちだった。

 ノーベル賞委員会は、2人が「教育のために、過激思想に立ち向かう共通の闘い」にあることを重く見たと授賞理由で表明している。

 それなりの国力を持ちながら、核兵器を保有する一方で、なぜ自国の宝である子どもたちの教育に十分な力を割けないのか。授賞には、そんな警告も込められているだろう。

 子どもの窮状は、日本にとっても、決して他人事ではない。子の貧困率は近年、最悪となり、放置される子どもの事件もあとを絶たない。

 子どもを守り、学校に通わせるのは、大人と社会の義務である。高齢化に悩む先進国であれ、開発をめざす途上国であれ、子どもの健やかな成長よりも確かな未来への道はない。