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 30年間にわたって無戸籍だった女性(30)=大阪府=が「実父(故人)の子として認知してほしい」と求めた訴訟で、大阪家裁(久保井恵子裁判官)は10日、女性の訴えを認めた。女性が判決文と出生届を自治体に提出すれば、母親の戸籍に記載されて無戸籍の状態が解消されることになる。

 判決などによると、女性の母親は1976年、元夫の暴力から逃れるために東北から大阪に来た。離婚の手続きができないまま実父と知り合い、実父との間にできた女性を84年に出産した。

 民法772条は「婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」と定めており、女性の出生届を出すと元夫の戸籍に大阪の現住所が記載されることになる――。大阪にいることを元夫に知られることを恐れた母親は女性の出生届を出せず、女性は無戸籍となった。大人になった女性は2005年以降、交際相手との間で2児を出産。2児も一時的に無戸籍が「連鎖」したが、08年に交際相手との婚姻届を出したことで2児の無戸籍は解消した。

 実父が11年12月に亡くなった後、女性は人事訴訟法にもとづき大阪地検検事正を相手に認知を求める「死後認知」の訴えを提起。久保井裁判官は母親の証言などを踏まえ、「母親の元夫と原告(女性)の間に生物学的な親子関係がないことは客観的に明らかだ」と判断した。

■子どもに戸籍「私も」

 「ようやく正式な親子になれます」。判決後、大阪市内で記者会見した女性は安堵(あんど)の表情を浮かべた。