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ソウル・フラワー・ユニオンが、3年10ヶ月ぶりのオリジナルアルバム『アンダーグラウンド・レイルロード』をリリースした。東日本大震災後、中川敬(ボーカル)のソロ活動を含め、さまざまなスタイルで演奏活動を行ってきた彼らは、今作をこれまでとは違った方法で制作したという。今回リアルサウンドでは、バンドにとっても転機だといえる同作について、中川にインタビューを実施。聞き手に音楽評論家の小野島大氏を迎え、中川が作品に込めた“怒り”や、制作過程で起こった出来事、さらには多彩な活動がバンドに与えた影響などについて、じっくり話を訊いた。(編集部)
「ニューエスト・モデルみたいなやり方は、もう物理的にも不可能」
――ミニ・アルバムやベスト・アルバム、中川君のソロ・アルバムなどもあって、それほどブランクがあったという気もしませんが、ソウル・フラワーのオリジナル・アルバムとしては3年10ヶ月ぶりの作品ということになりました。
中川敬(以下:中川):なんといっても3.11東日本大震災が起こったことが大きかった。それまでの、なんとなく決まっていた活動のペースみたいなものが、一回ゼロのところに戻さざるをえなくなったからね。2011年4月からは東北で出前ライヴをやりはじめたし。あと、俺個人としても、アコースティック・ソロ・アルバムを2作出した(『街道筋の着地しないブルース』、『銀河のほとり、路上の花』)。それがけっこう大きくてね。自分にとって、新たな世界が開けた。それまではソウル・フラワー・ユニオンと、民謡や壮士演歌をやるソウル・フラワー・モノノケ・サミットっていう、2つの表現のアウトプットがあったけど、もう一つ<中川敬>っていうバンドを作った感じやね。呼ばれれば弾き語りでもやるようになったし。で、加えて、反原発運動もあるし、反レイシズムのカウンターもあるし、子育てもあるし(笑)。全部自分のやりたいことばっかりやねんけどね。
――アルバムの構想はいつごろから?
中川:この4年間の集大成。数曲新曲が出来たらスタジオを押さえてメンバーを集めて、ベーシックを録ると。そのベーシックに自分のプライベート・スタジオで歌録りしたり、ゲストを呼んでダビングしたり。で、また数曲新曲ができたら同じように録って。それが3~4年続いて。で、去年の春ぐらいに「地下鉄道の少年」と「風狂番外地」を書いたあたりの段階でちょっと見えてきた、次のアルバムの漠然としたコンセプト…。アルバムのタイトルも『アンダーグラウンド・レイルロード』になるんじゃないかな、とか。ここ3作…『カンテ・ディアスポラ』あたりからそういうやり方になってるね。メンバーが全員違う都市に住んで、それぞれの活動もやってるから、このやり方が健全かなと。ニューエスト・モデルのころみたいにメンバー全員二、三ヶ月拘束して十数曲一気に録る、みたいなやり方は、もう物理的にも不可能やしね。
――そういうバラバラに録っていくやり方はメリットとデメリットがあると思うんですよ。まずサウンド面の一貫性をどう保っていくか。
中川:そこは大事なポイントやね。今回、ミックスとマスタリングは相当気合い入れたな。ベーシックを録ったスタジオもエンジニアも全部同じやねんけど、その時の気分とかちょっとした条件でサウンドが変わる。この曲なんでこんなスネアの音で録ったんやろな、みたいな。プロデューサーとしての仕事のしどころやね。歌録りは全曲この1年以内にやって、古いのは録り直した。歌詞もちょこっと推敲したり。
――サウンド的にはどうでした? この4年間で自分の嗜好が変わったところなどは。
中川:まあ、聴いていただいた通り。どこかでがらっと変わったわけではないねんけども…ロック回帰、ファンク回帰してるね。
――確かにそういう印象です。
中川:やっぱりアコースティックの弾き語りを始めたのがでかいかな、俺にとって。さっきも言ったように表現のアウトプットが3つになったからね。三線を持ってモノノケ・サミットをやる、アコースティック・ギターを持って身軽にどこへ行っても歌う。で、ソウル・フラワー・ユニオンは、俺にとってはしかるべきパンク芸ができる大事な場所、という(笑)。その棲み分けみたいなのが、アコースティック・ソロをやる前にはなかったからね。
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