Allyn Gaestel
for OZY
October 10, 2014
グローバルな医療体制によりエボラ出血熱を食い止めることはできるのか? サミュエル・カジラーロ(Samuel Kazirharo)さんのケースが答の手がかりを与えてくれそうだ。
カジラーロさんは44歳。内戦により家を追われ、コンゴ民主共和国東部にあるブレンゴ避難民キャンプで暮らしている。この夏、ブレンゴで暮らす人の多くがマラリアに罹患し、カジラーロさんも例外ではなかった。発熱と悪寒により5キロ近く体重が減り、収入も失われた。感染の多発を受け、国境なき医師団は患者の検査と治療のためにキャンプに駆けつけた。しかし、カジラーロさんのぼろぼろの蚊帳が新品に取り換えられることはなかった。国境なき医師団の蚊帳は妊娠した女性に割り当てられることになっており、またほかの団体の参画も遅々として進んでいない。
「最初の難関は、問題について意見の一致を見ることだ。次・・・
カジラーロさんは44歳。内戦により家を追われ、コンゴ民主共和国東部にあるブレンゴ避難民キャンプで暮らしている。この夏、ブレンゴで暮らす人の多くがマラリアに罹患し、カジラーロさんも例外ではなかった。発熱と悪寒により5キロ近く体重が減り、収入も失われた。感染の多発を受け、国境なき医師団は患者の検査と治療のためにキャンプに駆けつけた。しかし、カジラーロさんのぼろぼろの蚊帳が新品に取り換えられることはなかった。国境なき医師団の蚊帳は妊娠した女性に割り当てられることになっており、またほかの団体の参画も遅々として進んでいない。
「最初の難関は、問題について意見の一致を見ることだ。次に、寄付をしてくれる人や団体を見つけ、説得しなければならない」とコンゴ東部の町ゴマで活動する国境なき医師団のコーディネーター、アクセル・アリベール(Axelle Alibert)氏は語る。「それらの手続きに3カ月かかり、段取りがついた頃にはもう蚊帳は必要なくなっている」。
人道支援の欠陥について専門家たちは重々把握しており、ここに来て、エボラ危機によってそのうちのいくつかに注目が集まることになった。国境なき医師団が、資金、約束、人員の全てを整えエボラの対応に乗り出したのは、ギニアの山奥で最初の感染者が出てから実に9カ月後のことだった。
しかし、医療体制の問題は6263人の感染者を出したエボラだけに留まらない。2012年、マラリアにより死亡した人の数は62万7000人と推計されている。結核とコレラの新規感染者数は毎年数百万人に上る。世界の医療と危機対応システムの変革を支持する人々にとって、エボラは触媒となり得るかもしれない。
あくまでも、深刻な危機に目をやることができればの話だが。
条件付きの話ではあるものの、それでもいくつかのアイデアが形になりつつあるようだ。その一例として、世界保健機関(WHO)などの国際機関による積極的な介入や、資産と統制権の現場への移譲などがあげられる。長期的な対策としては、医学校から病院まで地域の医療構造全体の強化が進められている。
2013年には220億ドルという記録的な額が人道支援に投じられていることから、どうやら資金面の問題が全てではないようだ。「財源が足りないわけではない。問題は、その使い方がニーズに則していない点にある」と2016年5月にトルコのイスタンブールで開催される世界人道サミットの広報担当ブリアンナ・リズデル(Breanna Ridsdel)氏は指摘する。同サミットの参加者もまた、旧態依然としたお役所仕事の能率化や地方自治体への権限移譲を図るなど、緊急医療対策に向けた新たな道を切り開こうとしている。
緊急基金とはそもそも、用途の指定や区分化を避け、病気の世界的流行や緊急事態のために蓄えていた資金を提供するためのものであるはずだ。しかし、起こるかどうかわからない緊急事態のために寄付金を出してもらうのは容易なことではない。「用途指定のない寄付金となると、おいそれと出せるわけではない」と開発コンサルタント会社ダルバーグ・グローバル・デベロップメント・アドバイザーズ(Dalberg Global Development Advisors)のベテラン・コンサルタント、ビッキー・ハウスマン(Vicky Hausman)氏は話す。「つまり、緊急医療とは無縁の地域に住む住民をどうやって説得するかということだ」。
自治体によっては、危機対策がかならずしも機能しないケースもある。例えば、シエラレオネでは10年前の内戦終結以来、情勢は混乱を極め、2010年時点の医師の数は国民10万人に2人という少なさだった。一方、ナイジェリアとセネガルではシエラレオネに比べて医療体制が整っており、国際社会の支援を受けて自治体がすばやくエボラに対応した。これらの国ではただちに流行を食い止めることができたようだ。
「だからこそ、現地の医療体制への投資が必要になってくる」とハウスマン氏は言う。「しかし、議論の進展はなかなか見られない」。
Photograph by Daniel Berehulak/The New York Times/Redux