浮気のあとで。
私は特に不満のない結婚生活からいっとき遠ざかり、ひとりで過ごしている。
私には幼い頃から抱く、感覚的に理解されたいという強い欲求がある。
それは過去に一度つかのま叶えられた。
そして今回もまた。似たような感覚。似たような人たち。
彼らの手は難なく私の動いている心臓をつかみ
おそらく私の手も彼らにとって同様なのだろう。
以前と違うのは相手と自分の境界線が曖昧ななかの幼くないセックスの魔力。
麻薬のようなそれだった。
しかし、互いに差し出した心臓を見ると、それこそが現実と気付く。
互いにわかることができても、わかりあうことはまた別物なのだ。
理解されたいだけのふたりは理解されたいということだけしかわからない。
それはたとえ、わからなくてもわかろうとすることを決してやめないこと。
わかりあおうとしてくれること。
愛の本質というものがあるとするなら、そういうものなのかもしれない。
私はときにそれをうるさく思い、息苦しく感じ、悲しくなる。
今夜、旦那さんが迎えに来る。