【インタビュー】"雑誌は事業の中心ではない"「Tokyo graffiti」の新たな挑戦

グラフィティの代表取締役 鈴木俊二氏 Photo by: Fashionsnap.com

 一般人を主人公にした「Tokyo graffiti」と「HR」を刊行するグラフィティは今年で創業10周年。口コミで人気を獲得し、「ヴィレッジヴァンガード」から販路を広げてきた。一方で、出版業界は斜陽産業と言われ、廃刊する雑誌も続出。独自の路線でコアファンを獲得してきたグラフィティは、年を追うごとに深刻になる雑誌不況とどう戦っていくのか。WEBコンテンツ製作に加えてタレント事業をスタートさせるなど出版以外のフィールドにも進出し、会社として変化を見せる同社の代表取締役で両誌の編集長 鈴木俊二氏に話を聞いた。

■他誌にはない「羅列型」にこだわる雑誌作り

ーはじめに、雑誌「Tokyo graffiti」を作ったきっかけは?

単純に雑誌を作りたかったからです。ただ、創刊する時に決めたことが二つあって、「媒体の考え方に読者を誘導しないこと」、「ターゲットをセグメントしないでいろんな人を出すこと」。他のメディアは、独自カラーで読者を染めることを良しとしますが「Tokyo graffiti」ではそれをしません。また雑誌は特にターゲットを狭める傾向が強いのですが、実際は若者のなかでも原宿系の人や秋葉原のオタク、新宿二丁目のゲイもいるし、それ以外にも子育てママやシニア世代、子供たちなどいろんな人がいます。雑誌としてはあまり取らない手法ですが、セグメント化せず「同じ時代に東京にいる人」の羅列型アルバムを作りたかったのが最初のきっかけですね。

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ー大手出版社とは異なる独自の路線ですね。

小さい会社なので、ノウハウが蓄積された大手がやってることをそのまま真似るのはやめました。他の会社がやらないようなことをやらないと、真面目にマーケティングして今更ファッション誌を作っても、勝てるわけがないですからね。なので、「なんとなく面白いかな」と思うものをやろうというところから始まりました。

ー出版のキャリアは?

昔は普通のサラリーマンでした。なので、出版とか業界のネットワークとか全然なくて、自己流でやってます。

ー自己流で雑誌を作るというのは勇気が要ることだったのでは。

そうですね。でも、根拠のない楽観主義みたいなのがあったのかもしれません。

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ーいわゆる一般人に着目した理由は?

芸能人が出ている雑誌やテレビは山のようにありますが、タレントさんはビジネスイメージのために一般的には素を出せないわけですから、あまり面白いと思わなかったのです。洋服だと、スタイリストが着せたものではなく私服のほうが見ていて関心がありますし、テレビではリアルが漂うドキュメンタリー番組の方が好きですね。普通の人の"リアル"をどう切り取るかでコンテンツはずいぶん面白くなりますし、そっちの方が作っていて楽しいですからね。ビジネスと割り切って儲かるけど面白くないことをやるよりも、作ってる自分たちが「面白い」と思うものを伝えていきたいです。こういう仕事をしてる人の原点はそれなんじゃないかな。

ー"一般人"に焦点を置いた雑誌は、なかなかないですよね。

売れませんからね。

ー実際のところ、売上は?

創刊した頃と比べれば伸びていますが、一年ほど経ってからは横ばいですね。

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