社説:参院選挙改革 自民の身勝手さに驚く
毎日新聞 2014年09月13日 02時32分
元々、合意は難しいと言われていたが、ここまで混乱するとはあきれるばかりだ。参院の選挙制度改革をめぐる自民党の話だ。
経過はこうである。参院選挙区の「1票の格差」是正策を与野党で検討している参院選挙制度協議会の11日の会合で脇雅史座長(自民党)が新たな案を各党に提示した。ところが足元の自民党の反発は収まらず、12日には脇氏を参院自民党幹事長から外す更迭人事を決定。協議会の座長も交代する見通しで、この結果、目標としていた年内の与野党合意は難しい状況となっている。自民党の身勝手さとやる気のなさが明らかになったといっていいだろう。
脇氏が11日提示したのは参院選挙区の10県を5区に合区する案で、22府県を11選挙区に統合するとの当初案を修正したものだ。しかし、肝心の自民党は議席減となる関係選挙区の議員を中心に合区案そのものに対する不満は変わらなかった。
今春、脇氏が合区案を最初に示した際、同じ参院自民党幹部の溝手顕正参院議員会長は「初めて聞いた」と反発したという。当初から党内調整はずさんだったということだ。しかも現状では自民党に合区案に代わる有力案があるわけでもない。これではそもそも自分たちが不利益をこうむる選挙制度改革自体に後ろ向きだと見られても仕方があるまい。
合区案に突き進む脇氏を外すためだったのだろう。先の内閣改造に際しては一時、参院自民党内に脇氏を入閣させ協議会座長から降ろす動きがあった。脇氏が入閣を拒否して見送られたが、議員自らの選挙事情と閣僚人事をからめる発想にも驚く。
合区案は私たちもベストとは考えていないが、格差是正の一つの方法ではある。野党の中には賛成する意見も出ており、実は自民党内にも「結局、合区案しかないのでは」との声があるという。一方の脇氏も溝手氏らを非難するだけで党内の取りまとめに努力したとは思えない。
参院選挙区の1票の格差に関しては最高裁が4年前の参院選挙について「違憲状態」との判断を下している。これを受け再来年の次の参院選までに制度の抜本的な見直しを図ることが改正公職選挙法の付則に記された。だが、これまで選挙区定数を「4増4減」する応急措置にとどまっており、抜本改革は待ったなしだ。
衆院の選挙制度改革では議長の諮問機関による協議がスタートした。脇氏ら参院側は「自らの選挙制度について第三者機関に委ねるのは国会議員として無責任だ」と衆院を批判し、「自前」の改革をアピールしていたはずだ。自民党が意見をまとめられないとすれば、参院も第三者に委ねるしかなくなるだろう。