御嶽山噴火:普段から防災グッズ 30年前の土石流で集落

毎日新聞 2014年10月10日 13時22分(最終更新 10月10日 15時39分)

三浦雪雄さんが自宅に常備しているロープやヘルメットなどの防災用品=長野県王滝村で2014年10月5日午後5時36分、井上知大撮影
三浦雪雄さんが自宅に常備しているロープやヘルメットなどの防災用品=長野県王滝村で2014年10月5日午後5時36分、井上知大撮影

 御嶽山噴火で積もった火山灰により土石流の危険性が高まる中、台風19号が列島に近づいている。土石流が発生した場合、孤立の恐れがある長野県王滝村滝越(たきごし)地区(10世帯14人)の住民の多くは、防災グッズを普段から備えるなどしている。高い防災意識を支えているのは、30年前の長野県西部地震で起きた土石流の記憶だ。

 村中心部から西へ約13キロ。対向車がすれ違うのがやっとの村道を抜けると、ソバ畑などの間に点々と家が建ち並ぶ。時々ヤギの鳴き声が聞こえる以外、ほとんど音はしない。台風18号が近づいていた今月5日、1人暮らしの農業、三浦雪雄さん(89)は、いつも枕元に置く防災リュックに自分で握ったおにぎり4個を詰めた。普段の寝床は1階だが、2階に移した。

 1984年9月14日、同村を震源に発生した長野県西部地震で御嶽山の山腹が大崩壊し土石流が発生。死者・行方不明者は29人に上った。滝越地区の住民によると、同地区では女性1人が土石流に巻き込まれ死亡し、集落は孤立。住民は自衛隊ヘリで避難して一時、集落から人が消えたという。

 当時、営林署事務所に勤務していた三浦さんは、集落の東端にある滝越ダムに大量の土砂がなだれ込むのを目撃。「山の木が立ったままダムに滑り落ちた。水がドッと噴き上がって水柱となった」と振り返る。

 三浦さん宅にはヘルメットや懐中電灯など一般的な防災用品のほか、手製のロープを常備している。1階から出られなくなっても、いざとなったら2階から脱出できるからだ。「30年前は家のすぐそばで地滑りが起こった。何が起きるか分からない」と話す。

 同地区の会社員、新井隆さん(56)も防災リュックを常備している。「貴重品や乾パンを入れてあるし、長靴やヘルメットもある。この地区は各家庭で準備しているから、みんな、すぐに避難できる。西部地震の経験があるからね」と語った。【井上知大】

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