かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき

美容と健康、美髪と美肌にまつわるケミカル裏話を美容に詳しい「化学の先生」が分かりやすいコラム形式で徹底解説!
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防腐剤について色々と議論がありますが、

僕としては基本的には防腐剤についてはあまり問題視していません。




今週発売予定のセラキュアについても

「防腐剤が入っているから敏感肌向けではないんじゃないの?」

なんていう声も聞こえてきますが…




化粧品は根本的に腐ったり雑菌が繁殖する材料で作られているものなので、

放っておいたらそりゃあ腐ります。

腐った化粧品を肌に塗ったらそれは一大事ですよね。



なので化粧品類には根本的に腐敗防止のために

『防腐剤』と呼ばれるものが配合されています。



防腐剤としてよく使われるのは

みんな大好き(?)のあの

『パラベン(p-オキシ安息香酸エステル)』


とか、

最近では

『フェノキシエタノール』『~イソチアゾリノン』

とかも有名ですね。



で、

実は防腐剤には刺激が付き物です!

なぜならある意味『防腐=刺激作用』だからですね。。


菌類の繁殖を抑えて場合によっては殺菌する程度の効果を持つということは、

当然刺激性を有する可能性が高いということです。



なのでもちろん入れすぎはやめて欲しいですが、

ある程度大きなメーカーや一般的なOEMの作っている化粧品であれば

この刺激性の懸念から防腐剤量にはかなり気を使っていて

出来る限り最小濃度の設計をしてくれています。



日本の化粧品基準値では

「防腐剤は1%以下!」

と決められているのですが、


ちょっと前の研究では例えば「化粧水」では

パラベン類で0.1%程度

フェノキシエタノールでは0.25%程度

が平均的な配合量だと推定されていて、

防腐剤の量がかなり低減されているのが分かります。

(抗菌性の多価アルコール類と併用の場合この濃度を下回る場合もあります)

市販化粧水中のフェノキシエタノールおよびパラベン類の分析法に関する研究




ちなみにフェノキシエタノールではパラベンより抗菌活性が落ちるので

比較するとちょっと濃度が上がってしまうんですね。


ただフェノキシエタノールとパラベン類だと、

フェノキシエタノールの方がだいぶ刺激は弱いみたいなので

少し濃度が増える分には問題なさそうです。


皮膚刺激性にいて

↑の研究では

「メチルパラベン0.01%溶液→やや刺激のある試料」

「フェノキシエタノール0.01%溶液→殆ど刺激の無い試料」

として利用していますし、

同濃度ではやはりパラベンに軍配のようです。



ちなみに上の実験によると

カルボキシメチルセルロースNa溶液の0.11%のパラベン溶液(※)は

刺激をほとんど感じない割合がとても高くなっていますね。



ちなみにこの溶液は素人が作ったかなり無理矢理な製剤なので、
ふつうの化粧品と比較すると刺激もより感じやすくなっていると思われます。





あと化粧水だけじゃなくても様々な化粧品を調べた文献もありまして、

化粧品中の防腐剤であるパラオキシ安息香酸エステル(パラベン)の濃度


こっちでもパラベンは大体0.1%~0.2%の分布が多くなっています。


パラベン等防腐剤は刺激が出る可能性があるので、

昨今では出来る限り配合を減らす動きがあるみたいですね。




最近ではそれぞれの菌類の種類に適した防腐剤を複数組み合わせることで、

さらに防腐剤濃度を少なくする研究なども進んでいますし、


もう20年30年前とは違って

防腐剤の危険性などは殆ど無視して大丈夫なようになっているのです。



(昔は今と比べてかなり高濃度で配合されていたようなので、
無視するわけにも行かない場合があったのは確かなのでしょうね)






またアレルギーについてですが


一応パラベンには微妙にアレルギーの素養があり、

フェノキシエタノールではその心配は全くない、


という疫学調査のデータが出ています。

(James G. Marks ,1998,Journal of the American Academy of Dermatology Volume 38.より)



これは1994-1996にかけて3000人以上を対象にして行われた大規模なアレルギー検査なんですが、


3000ちょいの母体数のうち何%が有症したかすぐに分かるデータです。



27番が「パラベンミックス(※)15%」で、1.8%の有症者がいたそうです。

※複数のパラベンの混合溶液


ただ『15%』てものすごい濃度なので、

これはある意味アレルギー性物質としてはかなり安心な部類という意味でもありますね(^_^;)


あとパラベンのアレルギーにはちょっと不思議な特性があって、

これはまた後述したいと思います。



次に37番フェノキシエタノールは、

ご覧のように3000人以上を対象にしても0%の有症率です。


まぁつまりアレルゲンとしての素養はゼロということですね。



ただ28番「メチルジブロモグルタロニトリルとフェノキシエタノール混合液1%」

では少し有症率が高めですね。

まぁフェノキシのみのときは0%なので、

原因はメチルジブロモグルタロニトリルにありそうですね。





で、話を戻してパラベンですが、


欧米の資料を見ているとよく出てくる言葉ですが

『パラベンパラドックス』

という言葉があります。


これはパラベンのアレルギー症状を指す言葉でもあるのですが、


パラベンは健康な皮膚に塗布してもほとんどの場合有症しません。


しかし

裂傷や皮膚炎に塗布すると一転してアレルギーを起こす


という事例が多々報告されています。


「パラベンパラドックス」というのは

傷に塗ったらアレルギーが出るのに普通の皮膚では全く大丈夫な患者が多い

ということから言われる言葉です。



とある疫学調査では

健康な皮膚に塗布した場合はパラベンのアレルギー有症率は0%だった、

というデータもあります。


先ほどのデータでパラベンミックスが15%もの高濃度だったのは、

普通のパッチテストではそれだけの濃度にしなければアレルギーが出にくいということがわかっていたからなのかもしれません。



結局パラベンに関しても

「傷にぬならければアレルギーの心配はほぼゼロ」

ということになりそうです。








「でも結局刺激の懸念はあるんだからやっぱり入れないに越したことはないんじゃ?」


と思う人もいるかもしれませんが、


化粧品を販売する上では

未開封状態で3年は品質を安定させなければならない、という法律があります。


つまりある程度の防腐設計はどんな化粧品でも必ず施されるはずです。
(法律の範囲内で販売されるまっとうな化粧品であれば)


「防腐剤無添加!」

とか言っている化粧品でももちろん例外ではありません。

一般的な防腐剤は使っていないだけで最低限の防腐設計は必ずしてます。


では

その際にどういうものが使われるのか?


パラベンやフェノキシを0.1%とか0.2%混ぜるより少ない濃度で

十分な防腐設計をすることができるのか?

その際の刺激をしっかり抑えれるのか?


というところが結局問題になるわけで・・・。


あんまりこれまでのデータが揃っていない成分で防腐したって、

十分な効果は発揮しないし刺激も抑えきれない場合が多いのです。


例えば植物の「精油」をブレンドして防腐効果を持たせた、

なんていう話もよく聞きますけど、


精油は十分な効能を持たせる為には1%程度配合されますし、
(精油は刺激物ですよ!)

アレルギーの素養もパラベン等に比べればむしろ心配です。



濃度も増えて刺激もアレルギーの心配も増える、


『無防腐剤』にするということは

逆にそういうリスクを背負うということです。




こういうリスキーなことをされるくらいなら、

僕はパラベンもフェノキシもむしろ大歓迎なのです。





長くなりましたが、

そういうわけで僕としては防腐剤については基本的にはあまり解析とかでは評価の対象にしていません。


(無防腐剤!には厳しくツッコミ入れてますけど…笑)


プロデュースに際しても「無防腐剤にして下さい」なんてアホなことも言いません。


そのメーカーの得意な防腐剤でしっかり防腐設計をしてもらえたら

十分安心だと思っています。



ノンパラベン!とか防腐剤無添加!とか、

よくわからないイメージ合戦が繰り広げられている美容業界ではありますが、


この流れは本当に、全く愚かなことだと思います…。





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