テロリスト財産凍結法案:国内の金融取引を規制…閣議決定
毎日新聞 2014年10月10日 10時29分
◇範囲は国連安保理決議を基に指定
政府は10日、テロ行為に関与する恐れのある人物らが国内で金融取引を行うことを規制する国際テロリスト財産凍結法案を閣議決定した。海外との金融取引については外為法で規制されているが、テロ資金の根絶を目指す政府間組織「FATF」(金融活動作業部会)から国内取引についても規制の必要性を指摘されていた。
規制の対象となるテロリストの範囲は国連安全保障理事会の決議を基に指定される仕組みで、警察庁は「従来の外為法の規制範囲を超えない範囲で指定され、日本だけで恣意(しい)的に決めるのではない」としている。同庁によると、8月現在で指定されているテロリストは、アルカイダ関連など89団体360人。いずれも国内での活動は確認されていない。
新法では、テロリストへの財産の贈与や貸し付けを許可制にして原則禁止するほか、テロリストに対し、生活資金以外の財産は各都道府県の公安委員会に提出させることができるようにする。相手がテロリストと知らずに取引を行った場合は処罰されないが、中止を求める行政命令に従わない場合は罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)の対象となる。
また、FATFはこれとは別にマネーロンダリングが疑われる取引の管理の厳格化も求めており、政府は同日の閣議で犯罪収益移転防止法の改正案も閣議決定した。【長谷川豊】
◇FATF(ファトフ、金融活動作業部会)
マネーロンダリングやテロ資金供与対策の国際協力を進める政府間組織で、34の国・地域と二つの国際機関が参加している。1989年のアルシュ・サミット経済宣言を受けて設置され、国際標準(勧告)を策定して各国の順守状況を監視している。今年6月には日本のマネーロンダリングやテロ資金供与対策に不備があるとして、迅速な対処を求める声明を公表した。こうした指摘事項が改善されない場合は、法整備がなされていない国として公表される。