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 乗客106人と運転士が死亡した2005年4月のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたJR西日本の歴代社長3人の控訴審が10日午前、大阪高裁で始まった。検察官役の指定弁護士は一審と同様、3人が対策を怠ったために事故が発生したと主張。弁護側は改めて無罪を訴え、指定弁護士の控訴を棄却するよう求めた。

 3人は元会長の井手正敬(まさたか)被告(79)と南谷(なんや)昌二郎被告(73)、元社長の垣内剛(たけし)被告(70)。1996年に工事が完了した兵庫県尼崎市の事故現場カーブの急曲線化や、現場を走る快速電車を大幅に増やした97年のダイヤ改定で事故の危険性を把握できたのに、それぞれが社長在任中に自動列車停止装置(ATS)の整備を指示しなかったとされている。

 昨年9月の一審・神戸地裁判決は「現場カーブのように急曲線化されたカーブは珍しくなく、3人が現場カーブに着目して具体的に危険性を認識することはなかった」とし、事故発生を予測することはできなかったと判断。当時、ATS整備を義務づけた法令もなかったとして、3人に対して無罪(求刑禁錮3年)を言い渡した。