しかし西中島南方という辺境の地にあって大阪屈指の超人気店、ワザワザ昼前に新大阪へ到着できるよう関西出張のスケジュールを無理やり調整しシャッター強襲大成功。われながら無駄に権謀術数である。
食べログかなんかで「概念がひっくりかえる」と評する輩がいた魚介薄口醤油の「ラーメン macro」というやつにする。なんとも奇怪アブストラクトなネーミングはミスチルのアルバムの名前らしい、「ラーメン micro」ってのもある、アホだ。
店内はミスチルのDVDが流れ、グッズが所狭しと展示されている。ちょっとばかり不安になる。
5分少々で着丼。
■ラーメンmacro 800円(+トッピング煮卵50円)
不安一蹴。
一見普通のルックスに見えなくも無いが麺は全粒粉、夕焼けをまとった支笏湖のごとく黄金を反射する透明なスープ、チャーシューは麻雀パイぐらいぶ厚く、シナチクはジェンガくらいふとましい。食べる前から旨い。
いつまでも眺めていても仕方ないので取り合えずスープをひとすすり。
その刹那、この丼は大海原であることに気が付く。
「海よ・・俺の海よ・・」
脳幹のあたりで加山雄三が鳴り始める。
魚介の甘み、旨み、香りの密度が半端では無いのだ。慈しみすら感じる透明色に反した鉛の如きへヴィメタルなスープの仕上がり、これは確かに理が反転する。
これだけのパンチを脂分や魚粉に頼らず繰り出してくる卓越したリングさばきは有り無しで言うところのモハメドアリだ。
そしてそのアリのジャブに合わせるパスタのような全粒粉太麺がベストマリアージュ大賞受賞。
かなり考え抜かれているぞこれは。
では具はどうか。油断はしていないだろうか。ルックスインパクトだけの見かけだお、、いや参りました。
脂分が少ないスープが故に懸念される食べ応え不足をキッチリ担う極厚チャーシューは当たり前のように箸でするりんと切れる。これは全豚が将来なりたいチャーシュー of the アースだ。
そこにあてるさっくりとした食感の角材シナチクと、相当に湯で時間や温度を計算しつくして黄身の粘度が芸術的な煮卵も世界にひとつだけの花。海原に悠々と浮かぶ抜け漏れ無しの360度包囲型フォーメーション、ノアの箱舟が船団を組んでいる!?
これは革命的であり、先進的であり、かつ足場しっかり地盤かっちり。
一つ一つの因子が相互に、完全に補完しあっている、完璧な生態系がこの一杯に集約されている。
生命の起源、人類の起源は、麺類だったのか。
「これが太陽神ラーか・・大きくなったら寸胴に移住しよう・・」
私はそうブツブツとつぶやきながら、午後の谷町のアポイントに向かうのであった。