ノーベル賞を獲得した青色発光ダイオード 産業としての可能性と苦悩とは
ダイヤモンド・オンライン 10月10日(金)8時0分配信
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青色LEDは、実は圧倒的に「白」に使われている |
10月7日、青色発光ダイオード(以下、青色LED)の開発で、赤崎勇名城大終身教授、天野浩名古屋大教授、中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の3氏がノーベル物理学賞を受賞し、日本中が沸き立っている。3人の業績は多くのメディアで報道されているので、ここでは産業としての青色発光ダイオードに焦点を当ててみよう。
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科学技術が急速に発展した今日、ノーベル賞(特に物理学賞)は素人にはチンプンカンプンな基礎研究に与えられる傾向があった。20世紀初頭にまで時計を戻すと、ノーベル賞が与えられたアンモニアの合成法は、そのおかげで窒素肥料が合成できるようになり、農業生産の飛躍的増大に貢献し、化学産業を勃興させた。ペニシリン発見は抗生物質を生み、人類を化膿から救いだして、製薬産業を発展させた。青色LEDもすでに実用化・産業化されており、だれにでもその社会的、産業的価値が分かりやすい。
● 青色LEDの革新性は「白」にあり
LED(発光ダイオード)とは、電圧を加えると発光する半導体素子のこと。赤色LED、緑色LEDはすでに開発されていたが、青色LEDの実現は20世紀中は難しいと言われるほど、その開発は困難を極めていた。その中で、赤崎、天野両氏が青色LEDの原理を解明し、中村氏が量産技術を確立した。
青色LEDは、「青」そのものとして使われるより、実は 圧倒的に「白」に使われている。青LEDの周囲を蛍光色素で囲むと、青い光は黄色い光に変換される。青の光と黄色の光のミックスで白色光となる。
1996年に開発された白色LEDの2大用途は、照明とディスプレイ(TV)で、白色LEDの誕生が両者の世界を大きく変えた。ただ、白色LEDは、ほとんど照明としてのみ使われており、ディスプレイを変えたと言われるのに、ディスプレイそのものとしては使われてない。
どういうことか。液晶バックライトという言葉を聞いたことがあるだろうか。バックライトというのは、カラー液晶ディスプレイ(TV)において、「のっぺらな、単なる白色光を背後から出しているライト」のことである。ここに白色LEDを使う。最初は 携帯電話用の中小型液晶画面のバックライトとして普及した。すぐれた省電力性と、小型化のためだ。次いで、大型液晶TV等のバックライトにも広がった。サムスンカラー液晶TVが有名である。
ただしカラー液晶ディスプレイは 白色LEDによって初めて実現したわけでない。LEDバックライトが普及する前からカラー液晶ディスプレイは広がっていた。当時のバックライトは冷陰極管という特殊で高価な、一種の蛍光管が使用されていた。それを置き換えたのが白色LEDなのだ。
このように、白色LEDは、カラー液晶ディスプレイのバックライトというかたちで、携帯(スマホ)からTVまで、各種ディスプレイに用いられている。カラー液晶ディスプレイ(TV)の急成長とともに、バックライトとしての需要も爆発的に増えたが、市場の成熟化からバックライトとしての成長率は鈍化している。
● 一般照明分野で革命といわれるワケ
他方、一般照明の分野では、蛍光灯や白熱球ランプ(ガラス管+気体照明)からLED照明(固体照明)へと、基本原理が全く異なる光源の登場を意味する。照明における歴史的大転換と言われ、スウェーデン王立科学アカデミーが、ノーベル賞の授与理由で、「彼らの発明は光の技術を根本的に変え、世界を一変させた。20世紀は白熱電球で照らされた時代だったが、21世紀はLEDのランプで照らされる時代となるだろう」と、称賛した所以でもある。
LED照明には長寿命、省電力、加えて水銀など有害物質を使用する必要がないという特徴がある。一言で言えば、環境に優しいのだ。
矢野経済研究所の調査によれば、日本国内の一般照明の市場の規模は2012年で1兆264億円、うちLED照明は195%増の4204億円に達する。2011年の東日本大震災以降の省エネ意識の高まりもあり、急速に普及が進んできた。これに対して、世界の一般照明の市場の規模は13年で約10兆円と言われているが、LED照明への代替はそれほど進んでいない。
最終更新:10月10日(金)10時15分
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