黒猫日記

元ナンパ師くろねこの日常。PCで見てね。

セブンのコーヒー

セブンのコーヒーをよく買っている。今までアイスばかり買っていたけれど、寒くなってきたので、ちょくちょくホットも買うようになってきた。去年もよく買っていたように思う。けれど、ホットを買うといつも思い出してしまうのは、悲しそうな、けれどその悲しそうな感じを決して表情には露わにしないように平静を装っていた、ある日の父の姿だ。

父方の祖母は認知症特別養護老人ホームに入っている。もう僕のことは覚えていない。息子である父のことも曖昧だ。父は祖母に色々話しかけるが、全く会話が噛み合わない。以前はもう少しまともに会話ができたのだけれど、ここ数年で症状が進行した模様だ。自分の母が、自分のことを忘れてしまう…。自分に置き換えて想像してみると、とても耐えられたものではないだろうと思う。祖父は認知症ではないけれど、入院しており、寝たきりになってしまっている。僕が最後に会った時は、会話もあまりできないような状態だった。この先は分からない。

去年実家に帰った時、父の運転する車で祖父と祖母に会いに行った。その帰りに、父が「コーヒー飲むか?」と、セブンのコーヒーを買ってきてくれた。一緒にコーヒーを啜っていた、その時の父の表情が忘れられない。セブンのコーヒーを飲む度に思い出してしまう…。特定の香りによってフラッシュバックのように過去を思い出すことを「プルースト効果」と呼ぶらしいけれど、まさにそれ。

秋の空気と、セブンのコーヒーの香りと、あの日の父の姿。

僕にしては珍しく、実家に帰りたくなった。

失われた時を求めて〈1〉第一篇 スワン家の方へ〈1〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

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