庵野秀明:庵野秀明監督『けっこうおもしろいものを作ってきた』


「宮崎駿の次は、庵野秀明しかいない!」と公言する、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが実現させた、世界が大注目する第27回東京国際映画祭の特集上映『庵野秀明の世界』。鈴木氏が太鼓判を押す、映画監督・庵野秀明の才能に触れる貴重な機会。そのタイミングで、なかなか表舞台に登場しない庵野監督が動いた! ORICON STYLEインタビューに初登場!! 過去作品から“庵野ルーツ”を振り返るとともに“庵野クリエイティブ”に迫った。


『エヴァ』シリーズに関してコメントしない理由

――これまでに関わった50作品以上を一挙に上映するという第27回東京国際映画祭の目玉企画。映画祭で庵野監督との交流を楽しみにしているファンも多いです!
【庵野】 ……作り手と直接会うって、善かれ悪しかれなんですよね。作り手としては作品が全てなので、僕らの顔なんて浮かばないくらいが理想です。でも、その作品を好きになって掘り下げていくと、どんな人が作ったのだろう? という興味は僕にももちろんあったので、その気持ちもわかる。あまり夢とか想像力は壊したくないんですよね。『エヴァンゲリオン』シリーズに関して、僕がコメントしないのもそのためです。ファンの方が想像する楽しみを大事にしたいので。

――学生時代に制作した自主制作映画から、最新作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』までを網羅したラインナップを、改めて振り返った感想とは?
【庵野】 何十年ぶりに見直した作品もあります。時間が経ってから見ると、少しお客さんの位置に近づけるので、けっこうおもしろいものを作ってきたんだなって思いました。『ことわざ辞典 へたな鉄砲も数うちゃあたる!』は、初めて紙にサインペンで直接描いたアニメーションです。学生時代の作品を見直していると、若返ったような気分になりますね。その作品を作っていた当時の記憶や雰囲気に戻るので、18、9歳の頃の気分を思い出せて良かった。『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』は、アマチュアでここまで本格的に映画を作ることができた、ありがたい作品です。作画監督などを担当した『王立宇宙軍 オネアミスの翼』は、前に所属していた会社(ガイナックス)設立のきっかけになった作品。若い頃に仲間と作り上げることができ、いい経験になりました。

――記者会見では、忘れがたい作品として『新世紀エヴァンゲリオン』を挙げられていましたが、三鷹の森ジブリ美術館から初蔵出しされる『空想の機械達の中の破壊の発明』など、見逃せないお宝作品が並んでいます。
【庵野】 『エヴァ』のテレビシリーズを、映画館の大スクリーンで観られるというのは珍しい機会ですね。僕のなかで思い出深いのは、スタッフとして参加した『風の谷のナウシカ』で、このときに東京でアニメーターとして食っていく自信がつきました。初めて監督した、本格的な商業アニメ『トップをねらえ!』や、総監督をつとめたテレビアニメ『ふしぎの海のナディア』は大変でしたけど、若いときに経験しておいて良かったですね。『ラブ&ポップ』で実写作品を監督した体験も、自分のなかでは大きく残っています。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズは、自分でカラーという会社を立ち上げ、自分のスタジオで初めて作りました。なんか、いろいろと新しいことをやってきたんですね。あまり自分から“こうしたい!”というよりは、流されてここにいる感じがするので、運がいいというのか、人に恵まれているんだと思います。ひとりではとてもできないことですから。

日本のアニメが突き進んでいる方向

――約35年間のキャリアのなかで、とくに印象に残る出会いとは? 【庵野】 『超時空要塞マクロス』の板野一郎監督と『風の谷のナウシカ』の宮崎駿監督からは、アニメーションを作る姿勢を学びました。技術的なこともたくさん教えてもらいましたが、それ以上に感銘を受けたのは、妥協しない創作姿勢です。こんなに一生懸命やるんだ! と。自分も学生時代、集中してやるときは、寝ずに机に向かっていたけど、映画1本、テレビシリーズが終わるまで、集中力と精神力がずっと続く。しかも机に向かえば向かうだけ、作品のクオリティが維持できる。逆に自分がその作業をしなければ、クオリティは下がる。おふたりから体力の限界までがんばることを教わりました。

――映画祭では、日本アニメーションの底力をもっと海外へ打ち出していきたいとお考えだそうですね? 【庵野】 日本のアニメって、ワールドワイドに見ても特殊だと思います。妙ちきりんな世界を大真面目にやっているのは、日本のアニメだけじゃないかと。例えばディズニーやピクサーのアニメには、世界中の人々に理解されるようなポピュラリティがある。『エヴァ』もそうですが、日本のアニメはそうじゃない、マイナーな方向に突き進んでいる印象があります。でも世界的に見ても、これだけ熱心に多くの作品を作り続けている日本アニメの土壌には、底力というのか、メジャーに発展していく力があると思う。

 最初は(海外でも)一部のファンにしか受け入れられないとは思いますが、そこを突破口にできるんじゃないかと。70年代に『UFOロボグレンダイザー』がフランスで大ヒットしたように。せっかく世界中の映画好きの人たちがディーラーとして集まるチャンスですから、作品としてのPRも大事ですが、商品として売り込むことをもっと積極的にやった方がいい。実際、経済が回らないと文化は育ちませんから。アニメも実写も、どうしても日本の映画ってローカルというか、ドメスティクなものが多いけど、日本でしか通用しないマイノリティな作品だからこそ、世界の人が興味を持ってくれる可能性もあると思います。

――今回の映画祭では、若い世代へ映画の魅力を発信する取り組みにも力を入れています。アニメに実写に、記憶に焼き付ける作品を生み出し続ける庵野監督から、若者たちにぜひ愛のひと言をお願いします。
【庵野】 “何でも見ておく”ってことですね。今、アニメが好きな人はアニメしか見ないという人が多いと思うんです。逆にアニメが嫌いな人は実写しか見ない。好みなのでそれはそれでいいとも思うけど、両方見ていれば、どっちも作ることができる。僕にとっては、アニメも、CGも、実写も、特撮映像も、全部同列。同じ映像表現として捉えています。画と時間軸と音のついたもの、映像が好きなんですね。
(文:石村加奈)

(C)DAICONFILM「帰ってきたウルトラマン」原作(C)円谷プロ(C)BANDAI VISUAL/GAINAX(C)BANDAI VISUAL・FLYINGDOG・GAINAX(C)NHK・NEP(C)1998ラブ&ポップ製作機構(C)カラー

庵野秀明構成・編集 : 特集上映『庵野秀明の世界』特別映像

PROFILE

庵野秀明監督
1960年5月22日生まれ。山口県出身。
テレビアニメ『超時空要塞マクロス』(1982年)の原画に参加。1984年、宮崎駿監督の劇場アニメ『風の谷のナウシカ』で巨神兵の原画を担当。以後、劇場アニメ『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987年)をはじめ、数々の作品でエフェクトやメカ作画を手がける。
1995年、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を手がけ、1997年の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』とともに社会現象を巻き起こす。1998年、映画『ラブ&ポップ』で実写映画を初監督。2000年にはスタジオカジノ(スタジオジブリの実写レーベル)第1回作品『式日』を監督。2004年、実写映画『キューティーハニー』を監督。

庵野秀明監督  庵野秀明監督

第27回東京国際映画祭 概要

■開催期間:10月23日(木)〜10月31日(金)
■会場:六本木ヒルズ(港区)、TOHOシネマズ日本橋(中央区)ほか
■公式サイト:http://www.tiff-jp.net/
■チケット:10月11日(土)からticket boardにて発売開始

※特集上映「庵野秀明の世界」:
上映作品ラインナップはこちら

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