HOME > コラム・連載 > Masato’s G clef Lab. > その59 話題のハイレゾを聴くために、USBメモリーをチューニングする
2014年10月 8日/木村雅人
今回はハイレゾ再生に使えるUSBメモリーの選択とチューニングについて紹介します。
すっかり定着しつつある「ハイレゾ」再生ですが、この連載を読んでいる方の中にも、既に楽しんでいる人は多いのではないでしょうか。
最近は「ハイレゾってそんなにいいの?いつも聴いているのと何が違うの?」と質問されることも結構あって、確実に認知度が上がっているのを感じています。
その理由は据置き機、ポータブル機のラインナップも充実し、配信ファイルもクラッシクやジャズだけでなく、J-POPやアニソンまで増えているからなのでしょう。
G clef Lab.でももちろんハイレゾを聴いていますが、専用プレーヤーではなく、パイオニアのAVセンターSC-LX87に内蔵されている機能を使っています。その理由はなかなかお気に入りのプレーヤーが見つからないからないのと、SC-LX87で聴くハイレゾが結構いいサウンドだと感じているからです。
また今回紹介するUSBメモリー再生機能ができるモデルが高級機の中には少ないのも理由のひとつです。そのうち、気になっている機種をG clef Lab.で厳密に比較試聴して、紹介できたらと思うのですが......。
さて、なぜG clef Lab.はUSBメモリーでのハイレゾにこだわるのか? 例えばNASによる再生ではどうしてもネットワークによる影響が避けられないし、NASからスピーカーまでのデータ経路が複雑だと音質・音色を左右する要素が多くなってしまうからなのです。
これらの考えは高音質化を目指しオーディオ専用ネットワークを組んでみたり、PCの設定をいろいろ試した結果「シンプルが一番」と感じたからなのです。
その点USBメモリーであればプレーヤーに直結できるし、駆動系がないのはノイズやジッターにも有利です。さらにディスプレイ付きの再生機ならリモコンで選曲できるからなのです。
もちろんUSBメモリーだと容量が制限されるし、アプリからの操作に慣れてしまうと、リモコンでの選曲は面倒かもしれません。使いやすさと高音質化はトレードオフの関係と言えるでしょう。
でもG clef Lab.でハイレゾを再生するならプライオリティは「音質」なのです。容量的な制限はメモリーを複数使い分ければいいし、慣れてしまえばそれほど使いづらいと感じません。そこでUSBメモリーの音質対策をいろいろやったので、効果があったものを紹介したいと思います。
まずはUSBメモリーの選択について。
・パイロットランプが付いていないものを選ぶ
(LEDはノイズ源になりやすい)
・金属系ボディ(輻射ノイズと振動対策)がお薦め
・端子カバーは取り外せるものがいい
・本体に稼動する部分がない物(例:スライド式や回転式)
・ストラップ取り付け部分やその他装飾がシンプルな物
この条件を満たす製品は最近少ないので、選択肢が限られてしまいます。G clef Lab.では数種類のUSBメモリーを購入し、シリコンパワーのLuxMini720(32Gバイト)が一番印象がよかったのでこれを使っています。
LuxMini720のボディはアルミで厚みも薄く、シンプルな作りはチューニング素材として扱いやすい。最初は何も手を加えずそのまま使っていました。でもしばらくすると高域のざわつきやちょっとした付帯音が気になって来たのです……。
そこでLuxMini720をよくみてみると、コネクターと本体の勘合がいまひとつで、コネクターと本体の導通をテスターで確認すると反応がありません(本体のシールド効果がない)。そこで銅箔テープを使って導通させ、コネクター部のガタつきも調整しました。
この状態でカーペンターズの「シングルズ 1969-191」(WAV96kHz/24ビット)から『マスカレード』を視聴してみます。
カレンの声は付帯音が減り、彼女らしい優しくて淀まないアクセントや、なだらかな音階を実現するヴォイスコントロールの巧みさが聴きとれるようになりました。フルートの共鳴音もうるささが消え、楽器の特徴をよく捉えた録音がされているのが感じ取れます。
このチューニングは、お使いのUSBメモリーが樹脂ボディであっても効果があります。お好みでアルミテープを貼るのもいいでしょう。
なおテープを貼る時に注意しなければならないのが、端子部分とテープ部分を必ず導通させる事と、隙間なく貼らなければならない事です。メモリーの構造によっては、これらのチューニングで回路がショートする可能性もあります。
また効果を期待するあまり、何重にも貼り過ぎないこと。様子を見ながら少しずつ調整していくと、いい塩梅を見つけられるでしょう。G clef Lab.ではボディに一枚貼るだけで充分な効果がありました。
USB端子をチューニングするオーディオアクセサリーもいくつか販売されています。その中でもSAECのUSB-FITは価格も手ごろ(UBS-A用5個/UBS-B用5個、¥2,100、税別)です。
これは、USBメモリーのチューニングをやっているのを見て、編集部が買ってきてくれました。商品説明によるとUSB-FITは特殊ゲルで作られていて、S/Nの改善に役立つと書かれています。
手に取ってみるとかなり柔らかく、効率よく振動を吸収してくれそうです。さっそく先程のLuxMini720に取り付けて『マスカレード』を試聴してみました。すると、ちょっとサウンドが大人しくなってしまいました。
これはすでにチューニングを施したUSBメモリーだったので、効果が重複してしまったのでしょう。そこで何の対策もしていないプラスチックボディのUSBメモリーに使ってみたところS/Nがよくなって、納得のサウンドになりました。これはあくまでも比較視聴によるものですが、USB-FITはメモリー本体の素材によって相性があるような印象を受けました。
こういったチューニングをやっていると「予想以上にサウンドが変化する」事がよくあります。もちろん中には変化が微妙、もしくは感じられないものもあります。それに必ずいい結果になるワケでもありません。
でもきちんと環境を整えてあげれば製品の真の能力を引き出せるし、スポーツ選手の道具や高性能スポーツカーの様に使い手に機敏に反応するようになるのです。その努力と情熱はきっと素晴らしいサウンドを届けてくれるでしょう。