堀江貴文氏プロデュースアプリ『TERIYAKI』フルリニューアルで見えた若手たちへの期待
2014/10/10公開
(左から)話を聞いた『TERIYAKI』編集長の廣井那佳子さんと開発を手掛けた安達浩平氏
2014年9月8日、堀江貴文氏プロデュースのグルメアプリ『TERIYAKI』が全面リニューアルされて新しいアプリとしてリリースされた。
前年11月に最初のアプリがリリースされた後、「テリヤキスト」と呼ばれるキュレーターの新加入や新たな店舗の追加、ユーザーからの意見や要望に応じたUI/UXの改善などが実施されてきた。
今回、アジア各国・地域を視野に入れた海外展開、大幅なUI/UXの向上を図ることになったため、それまでと異なる開発環境とプログラミング言語を採用する必要が出た。
その結果、バージョンアップでは対応できず、App storeに並んでいる既存のアプリと同名の新しいアプリを公開するという異例のリリースとなった。
今年8月に同社の代表取締役および『TERIYAKI』の編集長に就任した廣井那佳子さんと、開発を手掛けた安達浩平氏という、ともにまだ20代の若手スタッフに、リニューアルに至った経緯とリリースまでのプロセスについて話を聞いた。
海外展開とUI/UX向上のため、新・旧アプリ同時進行で開発
一般的なスマートフォンアプリの場合、UI/UXの改善や改良はバージョンアップを通して行われる。今回、まったく別のアプリへの“移行”となった背景には何があったのだろう。
リニューアルされた『TERIYAKI』の画面
UI/UX面の改善については、より見やすく使いやすくなっただけでなく、きめ細かく情報や記事の精度を高めるさまざまな工夫もなされているという。
「例えばあるテリヤキストの記事にユーザーが『いいね』できる機能はあったんですが、『他のテリヤキストもおススメしています』のような表示を加えることで、掲載されている情報や記事により客観性を持たせられるようにしています。
今後もバージョンアップをして新機能を追加していく予定で、エンジニアと話をする時はアプリを実際に使っていてこんな機能があったらいいなといったアイデアもどんどん出すようにしています。ただ美味しいお店の情報を掲載するだけでなくユーザー参加型のアプリにしていければとも考えています」(廣井さん)
初代『TERIYAKI』は堀江氏から次々にもたらされるアイデアを間髪入れずに開発へと反映させていってリリースされた。構想を1日も早く形にして、ユーザーからのフィードバックを適宜サービスやアプリへ活かしていくリーン・スタートアップの手法だ。
その後、ユーザーが増え、さらに成熟したサービスへと進化させていくためにあえてまったく新しいアプリ開発が堀江氏によって決断された。課題となったのは、既存のアプリ(現在は旧アプリ)を稼働させたまま開発を進めることだったという。
FuelPHPを用いることでアプリの表示速度もかなり改善できたと話す安達氏
「幸いDB部分はPHPで作られていたので、フロントエンド部分の完成度を高めていって最終的に全面移行するという方法で開発することができました」(安達氏)
実は旧アプリではRuby on Railsが用いられていて、新しいアプリはFuelPHPでコーディングされている。次々に浮かぶ発想やアイデアをスピーディーに開発へと反映させていくことができるメリットの大きさも、FuelPHPを駆使していた安達氏が起用された理由の1つだったという。
「旧アプリは本番環境と開発環境が構築されていましたが、それと同時進行で新アプリ開発を行わなければならなかったため、新たに同期テストが行える環境を整えて再設計・デプロイを行いました」(安達氏)
新アプリへの移行はユーザーに余計な手間をかけることになるが、クオリティの高い機能や使いやすさのアップ、新しいUI/UXの採用で満足度の高いアプリをリリースすることができたと安達氏、廣井さんは口をそろえる。
20代の2人が目指す、ユーザー100万人の「日本のミシュラン」
最初のリリース時と同様、堀江氏からは承認に時間が掛かることを見越して、開発をとにかくスピードアップすることや、アプリケーションの内容に対するアドバイスもあったという。
「打ち合わせの場などで話していても、本当に博学で次々に新しい発想やアイデアを口にされるんです。それが斬新でありながら、ちゃんと理に適っているところがいつも勉強になります」(廣井さん)
廣井さんは、イベントなどでの司会やリポーターとして活躍していたバックグラウンドを持つ。自身が興味や関心を持つ分野でビジネスを立ち上げたいと考えていたところ、堀江氏をはじめとする起業家やファウンダーと縁ができたことが、今回の抜擢につながったと話す。
初めて経営に携わる廣井さんは堀江氏をはじめとした様々なジャンルの経営者からアドバイスを受けているという
「堀江さんをはじめ、いろんなビジネスを立ち上げてスケールしているすごい人たちと話して学んでいくうちに、まったく新しいサービスをもっと広めていきたいと思うようになりました」(廣井さん)
今年3月にはヒトメディアからの出資が実現するなど、資金面だけでなく経営面でも更なる拡充が図られ、『TERIYAKI』を運営する法人としてのテリヤキ株式会社も新出発を果たしている。
今回の新アプリ開発における最大の目的だった海外展開については、まず訪日外国人観光客向けWebマガジン『MATCHA』と提携。『TERIYAKI』に掲載されている店舗情報が複数の言語による記事となって配信される。また、海外からのアクセスに対応すべく新たにサーバの設置も進めているという。
「旧アプリでは英語や他の言語での表示ができませんでしたが、今後は多彩な言語でも店舗情報が読めて、投稿や評価もできるようにしていく予定です。国内だけでなく海外のユーザーにとっても便利で使いやすいアプリへとさらに進化させていきたいです」(安達氏)
『TERIYAKI』が目指すところは「日本のミシュラン」だと廣井さんは話す。日本中、さらには海外でもお店選びに困ることがないよう相応に掲載店舗数を増やし、ユーザー数100万人達成することが当面の目標だという。
理想をかなえるために、アプリを一から作り直した新生『TERIYAKI』チーム。その将来像は若く意欲と熱意あふれる2人に託された。
取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴