奈良少年刑務所:「重文」へ保存活動 建築美誇る五大監獄

毎日新聞 2014年10月09日 13時11分(最終更新 10月09日 13時16分)

奈良少年刑務所=奈良市で2014年10月9日午前9時56分、本社ヘリから後藤由耶撮影
奈良少年刑務所=奈良市で2014年10月9日午前9時56分、本社ヘリから後藤由耶撮影

 明治政府が全国に建築した「五大監獄」の一つで当時の姿をとどめる奈良少年刑務所(奈良市般若寺町)の建物を保存しようと、市民有志による「近代の名建築 奈良少年刑務所を宝に思う会」が18日、同市で設立される。設計者の孫でジャズピアニストの山下洋輔さんが会長に就く予定。国に重要文化財への指定を求め、署名活動や勉強会を始める。

 奈良少年刑務所の建物は1908(明治41)年、旧奈良監獄として完成した。山下さんの祖父で旧司法省技官だった啓次郎氏が欧米の監獄を視察して設計した。集中管理しやすいよう放射状に配置された舎房が特徴的で、建物模型は10年にロンドンで開かれた日英博覧会に出展され、近代国家・日本をアピールした。重厚なれんが造りで、ドームなどデザインを凝らした表門、2階建て庁舎、舎房5棟などが現存する。

 啓次郎氏が携わった作品では、旧名古屋控訴院(現名古屋市市政資料館)が国の重文に指定されているほか、旧金沢監獄の一部は博物館明治村(愛知県犬山市)に移築保存されている。奈良少年刑務所は五大監獄の中で唯一、完全な形で当初の姿を残す。ただ、現在は県や市も含めて文化財指定がなく、取り壊しなどに規制が掛からない状況にある。

 会の呼びかけ人は地元自治会長、研究者や弁護士、作家、宗教家らで、受刑者の更生教育に関わりのある人たちも賛同している。

 2008年、創立100周年記念のコンサートで同刑務所を訪れ、ピアノを演奏した山下さんは「何と美しい建物だろうかと感動し、過剰品質ともいえる立派な刑務所をつくった明治の日本の事情に思いを馳(は)せた。そのままの姿で後世に伝える方法を探っていきたい」とコメント。呼びかけ人の一人で奈良市在住の作家、寮美千子さんは「保存活動を通じ、更生にも協力してもらえるような温かい交流関係を築きたい」と話した。

 設立総会は18日午後2時、奈良市雑司町の市立鼓阪小学校講堂である。自由参加。無料。問い合わせは事務局(0742・24・4800)。【松本博子】

最新写真特集