「めちゃくちゃおもろい社会人がおるんよ!」
誰もが口を揃えてそう言うのが、片倉弘貴さんことロッキーさん。
世界遺産でファッションショー?映画コラムニスト?
東京・京都・岡山でアート展示会を開催?武装強盗に襲われた?
そして、議員?
何を聞けるのか予想がつかない……
不安と期待が入り交じる中、
ヒーローは遅れてやってきた。
町おこしを、エンターテインメントに
楽しい気持ちに、嘘はない。
——さまざまな経歴をお持ちのロッキーさんですが、どうして岡山県で町議会議員をしてはるのですか?
地元であることはもちろんですが、政治に興味があったというよりは地域おこしに興味があったんですよね。高校時代から自分で企画して何かするのが好きだったということもあって、自分から町を盛り上げたかったんです。
もともと、正直言うと僕の生まれ育った地域は何か物足りなかったんです。過疎であったり、なんだか暗いイメージばかりなんですよね。やから、なんでも『エ ンターテイメント』な地域にしたいと思って、毎年和気町で行われるお祭りの実行委員会になりました。
——町議会議員といったら高齢のイメージがありますが、新しいことをしたいからこそ苦労したことはありましたか?
そのイメージ通り、僕以外の議員さんはみなさん大先輩でしたよ。まあ、僕は一番のペーペーですからね(笑)。
でも、議員としてもまっすぐに取り組んでいたら、いつの間にか少しずつ認めてもらえるようになったのは嬉しかったです。一つのことに取り組んで一致団結する、文化祭あるあるですよね(笑)。
——文化祭あるある(笑)。具体的にはどんなことを行っていますか?
『地域おこし協力隊』の導入に向けて、地元調整を行っています。『地域おこし協力隊』とは「若い人を地域に連れてきたらこんなおもろいことできるよ!」と いうもので、今は学生とお祭り盛り上げられたらと思い一緒に活動しています。最終的には色んな若者に定住してほしいと思います。
——若者が町へ訪れたことで、何か変化はありましたか?
若者が町おこしへ関心を抱くことはもちろんですが、一番驚いたのは地域活性化を地域の人も考えるようになったことですね。地域のおじさま達がスマホに買い替えたり、情報に敏感になったり、地域の人の意識が上がってきたんです。
祭りのためだけに集まって盛り上がるだけではなくて、『いつも若い学生と何か起こしたい』という想いを持ってくれるようになってから、ますます楽しくなりましたね。
棚田米に、ストーリーを持たせる
アイディアひとつで、価値を生み出せ。
——それは大きな変化ですね!お祭り以外に取り組んでいるプロジェクトはありますか?
今は、和気町の棚田(傾斜地にある稲作地)の再生事業に取り組んでいます。現代の日本の農家は、農業だけでは生きていけません。耕せば耕すほど赤字になって、体力ももたなくて、耕作放置地が増えている現状があるくらいです。
これを打破するには農業収益を上げる、すなわち作っているお米の価値を上げるしかないんですよね。でも自分自身も農家ではないですし、耕す知識は無いです。それならどういったことで役に立てるのか考えた時に、「米を売るというプロデュースならできる!」と思ったんです。
ものすごく良いモノを開発するのは難しいですが、『棚田で出来たお米にストーリーを持たせる』ことにチャレンジしようと思いました。
——『お米にストーリーを持たせる』とは初めて聞きましたが、何か前例があったのですか?
そうですね。棚田米の価値を上げるべく奮闘して成功した、石川県のスーパー公務員の方がいらっしゃるんです。僕は直接会いに行きました(笑)。
そしてお話 を聞いたところ、その方は天皇皇后両陛下、アメリカ大統領、ローマ法王に生産した棚田米を送ったそうなのです。そこでローマ法王がお米を気に入り、献上米 として正式に選ばれたんですよね。すると世界中のカトリック教徒がその棚田米の購入に走るというわけですよ。
その後は流通経路の確保のためにデパート側か ら取引させたり、見事にその地域の棚田米は農業収益を上げることに成功したんですね。だから、僕もパクろうと思いました(笑)。
——正直ですね(笑)。ロッキーさんはどんなストーリーを持たせようか考えていますか?
お米にそういったドラマ性を持たせられたり、ストーリー性を持たせようと思ったときに、僕はサブカル好きだったり海外好きということもあり、「じゃあ海外に売ろう!」と考えましたね。
広報戦略だったり、お客さんを誰にするかであったり、僕はそういったアプローチに新しさも可能性も感じています。日本のお米を日本で食べていては、いつまでも身内の循環でしかないんですよ。
——海外に注目されているようですが、具体的には決めてはるのですか?
フランスを考えています。どういう風にお米をプロデュースしていくか悩んでいたある日、ももクロが『Japan Expo』というイベントでフランスに行 く動画を観たんです。
『Japan Expo』とは、日本のカルチャーをフランスで売り込むというイベントなのですが、僕は単純に「ももクロ出るん!?行 きたい!!」と興奮していました(笑)。というのも僕、ももいろクローバーZがめちゃくちゃ好きなんです(笑)。でもよく考えたら、「これって……、棚田 が使えるんじゃないかな?」と気づいたんですよね。
だって、日本最小の自治体で、フランスに棚田米の文化を売り込んだらおもろいじゃないですか!そして、タダでももクロが見れるんですよ(笑)!
ですから今のところは、さまざまな若者にも声をかけて夏の『Japan Expo』にでることが目標ですね。
京都の学生は、おもしろい
悪ノリだって、カタチにすればいい。
——岡山の町議会議員でありながら京都と繋がりがあるようですが、一体どんな生活をしてはるのですか?
岡山に住んでいますよ(笑)。でも、僕は京都でシェアハウスを運営しているので、年数回京都へ来た際は自分もそこに泊まっているかんじですね。
——シェアハウスを運営し続けているということは、京都に何か魅力があるのですか?
僕自身、京都は学生が活動的だと感じていて、だからこそその元気なエキスを吸いに来ているというかんじですね(笑)。
僕が大学生の時から『京都の大学生はおもろい』と思っていて、僕がおもろいと思った学生の仲間は、社会人になってもおもろいと評価されているんですよ。内 輪だけではなくて、外にも評価されるおもしろさって貴重ですよね。そして学生達と大人達だとか、社会が繋がって、もっとおもろくなりたいんです。
——ロッキーさんが学生に沢山のチャンスを与えるのも、「おもろくなりたい」想いからだったのですか?
僕は、学生ノリで「これいけんじゃね?」というものを社会に対してもやりたいんです。大人相手では、若者の「あれがしたい!これがしたい!」という想いが通じなくて、悪ノリできないという温度差を感じるからこそ失くしたいんですよね。
そして僕、『繋がり』というものが面白いんです。何より人脈って言葉がほんまに嫌いで、一緒におもろいことやってこそ血となり肉となると思うんですよね。
そのジャンルに全く関係ない人をイベントへ連れて行ったり、巻き込んでいくと、どんどんみんながアツくなるのが感じられるんです。
そういうアツい若者が増えると、絶対に変化を生むんですよ。
やったことが増えれば、できることが増える
『want to』のままに生きれば、できないことなんてなかった。
——それは何より実感してきたことだからこそ、説得力がありますね。
思い出や経験があるからこそ、「だったら次はこれができる!」というものが生まれてくるんですよ。やから小難しい社会の仕組みや流れを考えたり外側から考 えてしまうと、本当に必要とされているものが見えなくなるんですよ。経験だったり、体を使って交流したり、一緒にやって楽しい想いを共有できるのが一番だ と思います。
僕はおもしろいかどうかを優先して考えるからめちゃくちゃ楽しいですし、会いたい人がいたら会いに行くんです。人間、できないことなんて無いんですよ。本気で楽しんでいたら、仲間も支援してくれる人もできますからね。
今までで会いたかったけど会えなかったのは……ダライラマさんくらいですかね(笑)
——ロッキーさんがこれからしていきたいこと、教えてください。
「本人がおもろいと思ったらそれでええんや!」と思いますし、協力したり応援したり、仲間として一緒にコトを起こしていきたいですね。何が起きるか分からないのが人生ですもん。
『あれもやった』『これもやった』が増えると、どんどんできることが増えていくんです。いろいろな経験がターニングポイントになるのなら、それを増やせるだけ増やして、より沢山の人生に枝分かれさせたいですよね。
そういう可能性を、世の中に伝えていきたいと思います。
(ロッキーさんの人生を記した変態観測帳)
「僕、ルパン三世になりたいんですよ(笑)。
やりたいことをとことんやって、キメる時にキメていたいんです。
いつか華麗にモナリザでも手に入れますかね。」
最後にこう言い放ったロッキーさん
あなたは一体、何者なのですか?
若者に勇気も希望も与え、未来へとフォローしてくれる
子どものように無邪気な、素敵な大人だった。
Facebook:片倉 弘貴
【文・写真:三宅瑶】
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