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 中国・唐の高僧、鑑真(688~763)が創建した奈良・唐招提寺で、8世紀の奈良時代に作られた、特殊な「奈良三彩(さんさい)」とみられる瓦片が大量に見つかった。寺と奈良県立橿原考古学研究所(橿考研)が9日発表した。唐招提寺でしか確認されていない独自の文様で、鑑真に関連した施設を飾った可能性が指摘されている。

 橿考研によると、講堂と西室(にしむろ、僧坊)跡に挟まれた調査地で、軒平(のきひら)瓦(幅22・5センチ、長さ17センチ、厚さ4・5センチ)や丸瓦など、緑と白、褐色の3種類のうわぐすりを施した計65点が出土した。三彩瓦は平城宮や東大寺、西大寺など重要な建物で使われたが、いずれも鹿の体の模様に似た「鹿(か)の子(こ)文様」なのに対し、唐招提寺は3色を波のように塗り分けた「波状文様」でほかに出土例がないという。

 平安時代の文献によると、鑑真は境内西北の「大和上室」で暮らしたとされ、死後も肖像が安置されたという。橿考研の菅谷文則所長は「僧坊内に御影(みえい、肖像)をまつる厨子(ずし)のようなお堂を造り、波を越えて来日した鑑真を慕って波状文様の瓦を葺(ふ)いたのでは」とみる。前園実知雄・奈良芸術短大教授(考古学)は「鑑真が住んでいた場所に遺徳を慕った弟子が『御影堂』を造り、中国風の三彩瓦を飾ったのでは」という。

 三彩瓦は11~13日、唐招提寺講堂で展示される。問い合わせは同寺(0742・33・7900)。(塚本和人)