<日米防衛指針>地理的制約を撤廃 中間報告
毎日新聞 10月8日(水)22時4分配信
◇集団的自衛権、先送り
日米両政府は8日、外務・防衛局長級による防衛協力小委員会を防衛省で開き、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直しに関する中間報告をまとめた。朝鮮半島有事など日本周辺で自衛隊が米軍を後方支援する現行の「周辺事態」を削除し、平時から「緊急事態」まで切れ目なく米軍支援を可能にする。米軍への後方支援や海洋安全保障での対米協力の範囲を「グローバル(地球規模)な平和と安全」を目的としたものにまで拡大することも明記した。一連の見直しによって自衛隊の活動に地理的制約は事実上なくなる。両政府は年内に見直し作業を完了させる方針だ。
政府が7月、集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことを受けた新たな日米協力のあり方については、最終報告で「内容を適切に反映」することにし、中間報告では踏み込まなかった。11月の沖縄県知事選などを考慮したとみられる。
中間報告では、日米の役割分担の枠組みを(1)平時(2)周辺事態(3)日本有事−−に分類している現行のガイドラインを、「平時から緊急事態までのいかなる段階においても、切れ目のない形で、日本の安全が損なわれることを防ぐための措置をとる」と見直す。
そのうえで、協力の具体例として、後方支援▽警戒監視▽共同訓練中に米艦が攻撃されたケースを想定したアセット(装備品等)の防護▽防空・ミサイル防衛▽海洋安全保障−−など12項目を例示。平時や、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」の段階から、日米の連携を強化する方針を打ち出した。沖縄県・尖閣諸島周辺などで海洋進出を活発化させる中国を念頭に置いたものだ。
また、日米防衛協力の目的を「アジア太平洋と、これを越えた地域の安定」と規定。「国際的な脅威は、日本の平和と安全に深刻かつ即時に影響をもたらし得る」という考え方に基づき、自衛隊が米軍を後方支援できる範囲について、「日本周辺の地域で日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」(周辺事態)という制約を外す。
「日米同盟のグローバルな性質を反映するため、協力の範囲を拡大する」と明記し、日米2国間だけでなく、多国間の安全保障・防衛協力を推進することも盛り込んだ。新たな安全保障上のリスクとなっている宇宙、サイバー空間の利用に関して、安定と安全を強化するため日米で共同対処する方針を初めて示した。
協議には、外務省の冨田浩司北米局長、防衛省の黒江哲郎防衛政策局長、ラッセル米国務次官補、シアー米国防次官補が出席した。【飼手勇介、鈴木美穂】
最終更新:10月9日(木)3時51分
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