2014-10-10
■SuperDepthとCarax'95とCar II GRAND PRIX
昨日は一日ハッカソン形式の仕事をして、心身ともに疲れ切ったので早めに帰宅してポークソテーを作った。
セラーにあったシャンボール・ミュジニーを開けて、フランベすると実に美味いポークソテーができあがった。フランベにはちょっと勿体ないけど赤ワインがそれしかなかったから仕方がない。
テレビが通り一遍でつまらないなあ、と思ったら、Chromecastの出番だ。
最近は酒を呑みながらChromecastでYoutubeを見るのが日課のようになっている。
昨日はなんとなくBio_100%で検索してみたら懐かしい映像に出くわした
SuperDepthだ。
個人的には90年代でもっとも衝撃を受けたゲームである。
このゲームは、ゲーム制作集団Bio_100%が開発した、フリーソフトである。
SuperDepthの凄いところは、ステージによって遊び方がどんどん進化して行くところだ。
1面は、海上から戦艦を操作して爆雷を落とし、潜水艦をやっつける。
これだけでも充分面白いゲームになっている。
2面になると、いきなり画面が上にパンし、海上から空中の航空機を迎撃するシューティングゲームになる。ちなみにこのシーンにインスパイアされて週刊アスキーの連載9leap高校で作ったのが「イージスコマンド(http://9leap.net/games/744)」である。開発に費やせる時間が3時間しかなかったので荒削りだし、ゲーム内容そのものはミサイルコマンドになっているけど、画面構成や爆撃機からの爆弾の投下のさせかたはSuperDepthに強い影響を受けている。
そして3面。
突然、戦艦が空中に飛び出し、舞台は宇宙へ。左右二方向にスクロールする横スクロールシューティングゲームへと変化する。
この衝撃はいまでも忘れられない。
ただ上へ上へと視点が移動して行くだけで、三種類の全く別のゲームが作り込まれている。
それぞれのステージの完成度も相当高い。
ちなみにSuperDepthはその後、WindowsでWinDepthというサブセット版に発展する。
WinDepthはずっと海上から海中の潜水艦を攻撃するというゲームなので、SuperDepthに比べるとやや単調なんだけど、爆発が連鎖するようになっていて、連鎖をねらって最小限の攻撃で最大限の効果を得るほど点数が高くなっている。この連鎖のパズル性が気持ちよく、これはこれで夢中になって遊んでしまう。
SuperDepthもWinDepthも、特有のもどかしさがある。
特に海中への攻撃において、爆雷の投擲スピードはとても遅い。パワーアップアイテムを使って左右に爆雷がゆれるようにできるんだけど、それで狙い通りに当てるのは却って至難の業だ。
「なかなか思い通りに狙えない」
何年かあとに、SuperDepthの作者であるaltyに会った時にぽつりとそう言うと、彼はこう答えた。
「思い通りにできないところが、ゲームの面白さじゃないか」
Bio_100%が活躍していた頃、僕もほそぼそと一人でゲームを作っていた。
田舎の中学生だった僕は、僕以外誰も遊ばないゲームを一人でもくもくと作るだけだった。
高校に入って自分のゲームを投稿してみたら、あっさりと掲載された。
けれども、それがSuperDepthより面白いとはあまり思えなかった。
仮にも原稿料をもらって有料の雑誌で頒布されるゲームが、面白さの点でフリーソフトに劣ると言うのはどういうことか。
悩んだというほどは悩まなかったけれども、悔しかった。
Bio_100%のゲームは、僕に「面白さとは何か」を考えるきっかけをくれた。
Carax'95も、シューティングゲームに命中率とタイム制というストイックな要素を加えた傑作だった。
シューティングゲームでありながら残機という概念がなく、敵の弾に当たってもタイムが減るだけ。無駄弾を打たず命中率が75%以上ならタイムが増える。
1ゲームは180秒という持ち時間で開始される。
3分しか遊ばなくていいや、と思って遊ぶと、どうしても「なぜここで」というタイミングでゲームオーバーになってしまうので、「もう3分くらいいいや」と思ってリトライし、気がつくと朝になっていた、というようなゲームだ。見事なゲームだった。
そして上手くなればなるほど実際のプレイ時間は3分よりも長くなっていくのだ。
一見するとありふれたゲームでも、解釈を変えるだけで全く別種の面白さが立ち上がる。
これもまた、僕の視点を広げるという意味では多いに影響を受けた。
むしろどこにでもあるような、ありふれたものこそ、別の解釈を加えることで、驚きをもって受け入れられることになる。
Bio_100%のゲームが全て大傑作というわけでもなかった。
けれどもたまに、凄い傑作があった。
ろりろりろーりんぐは、当時のPCでは不可能に思える程難しかった2Dポリゴンを効果的に使った傑作ゲームだ。
意味もなく画面全体が回転する。
これは当時のプログラミングテクニックとしては相当すごい。
感動したものだ。
Bio_100%|GAME REVIEW|CarII GRANDPRIX
Car II GRAND PRIX(かーにぐらんぷり)は、レースゲームとして珠玉の傑作だ。
独特の操作性とトリッキーなステージ構成。とにかくBio_100%のゲームはレベルデザインが秀逸だった。
Car II GRAND PRIXはなかでも、最も秀逸な部類に入る。
特に友達の走行データと非同期的に走り合えるゴースト対戦機能は秀逸で、後に「ニコニコ動画」のもとになる企画を検討する際に、非同期のコメントを共有するという考え方をドワンゴ(立ち上げメンバーはBio_100%のメンバーと被る)の連中に説明したとき「一発でピンと来た」のはこの機能をみんなが覚えていたからだと思う。
ネットを介した非同期対戦のゲームはもしかしたらCar II GRAND PRIXが初めてかもしれず、最後かもしれない。
これらのゲームをプレイしたのは全部中学から高校にかけてだけど、今振り返ってみても、凄いゲームだらけだった。
どうしてaltyはこんなに面白いゲームばかり作れるのかと本当に不思議だった。
それは才能という言葉で片付けてしまうにはあまりにもロジカルに構築された見事な作風だったからだ。
普通、ゲームクリエイターというのは得意分野が固定されている。
シューティングが得意な人、ノベルゲームが得意な人、RPGが得意な人、という感じだ。
プロのゲームクリエイターでも、2ジャンル以上で歴史的大ヒットを飛ばしたのは、宮本茂さんと鈴木裕さんしかいない。天才、鈴木裕さんといえどRPGではやや失敗をしてしまった。
宮本さんは才能はもちろんのこと、その背景には任天堂という巨大な組織力がある。
にも関わらず、altyはゲームのプロではない。
プロでないままゲームを作り、そのままゲームを作ることをやめた。しかaltyは僕の知る限りで少なくとも3〜4ジャンルのゲームの傑作を作った。So-netの通信対戦麻雀ゲーム、Jong-Pluggedもaltyの作品だ。しかしコードは書いてない。公式にはこれが最後の作品だろう。
もちろんプロのゲームとアマチュアのゲームは違う。
予算もアイデアも違う。
けれども、やはり90年代のaltyは冴え渡っていた。
その後半で、彼と一緒に働くことになったのは僕の人生にとってもっとも幸運な出来事だった。
まさかその天才altyが、printfの使い方を忘れる程モウロクしてるとは思わなかったが。
結局、それから五年程、altyのもとで働いたけど、altyは僕が一番知りたかった「面白さの本質」について、あまり具体的なことを教えてはくれなかった。彼が言っていたのはいつもこうだ。「もっと考えてみよう」「君の今の考えが、まるきり間違っていたとしたら、どういうことなのか考えてみよう」「こっちが得をするほど、ユーザも得をするような仕組みを考えよう」「みんなが喜んで金を払ってくれるような仕組みを作ろう」「最高に賢い嘘つきは、誰にもバレず相手を倖せにして、なおかつ自分の利益を最大化できる」
でも一番頻繁に言っていたのはこうだ。「我慢せず美味いものを食おう」
その結果、僕は当時から20kgは体重が増えてしまった。
altyがいなければ僕はDirectXをやっていなかったし、Microsoftの本社で20代のうちに働いて見聞を広めるといったこともできなかった。
そのときの経験が今の僕を支え、enchant.jsの戦略の屋台骨となっているのだから、足を向けては寝られない。
そして酒を呑みながら師匠の作った昔のゲームの動画を見ていたら、なんだかほろりと涙が出て来た。
なぜなのかは、わからないけれども。
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