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プロ野球コラム
梶田宙(ひろし)は亨栄高校(愛知)から愛知大学を経て高知ファイティングドッグス入り。引退セレモニーでの胴上げには、相手チームの選手も参加した。
photograph by Kei Nakamura
野ボール横丁

独立リーガー梶田宙、異例の引退式。
ジーターより、稲葉よりも輝いた日。

中村計 = 文

text by Kei Nakamura

photograph by Kei Nakamura

 今年は、印象的な「引退記念試合」が続く。

 9月25日、ヤンキースタジアムでは、本拠地最後の試合となったデレク・ジーターが劇的なサヨナラ安打で花道を飾った。

 10月5日、札幌ドームで行なわれた稲葉篤紀の引退記念試合も、いいものを見させてもらった。最後のセレモニーでファンが披露した4万人の「稲葉ジャンプ」は圧巻の一語に尽きた。

 引退試合は、その選手がどんな野球人生を歩んできたかを端的に物語る。そういう意味で、個人的にもっとも印象深かったのは9月13日、高知県・土佐山田スタジアムで行なわれた、ある独立リーガーの引退試合だった。

 梶田宙、31歳。

 おそらく彼の名前を知っているプロ野球ファンは、ほとんどいないだろう。四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスに所属した選手で、人呼んで「ミスターアイランドリーグ」。四国ILが発足した2005年から唯一、10年間プレーし続けた選手だった。

NPBでも、これだけ惜しまれる選手は稀ではないだろうか。

 その梶田の引退記念試合の観客は747名だったが、予想した以上に盛大だった。

 球場では直筆のサインボールや記念Tシャツなど数種類の記念グッズが販売され、試合中、梶田が打席に立つと、1枚百円で販売されていた「宙さん、ありがとう」と書かれた赤いメッセージボードがそこかしこで掲げられる。試合後のセレモニーではプロのバンドの生演奏があり、何人ものファンや関係者が花束を送った。中には泣き崩れ、立ち上がれなくなってしまう年配の女性もいた。

 試合後、球場の外でファンを見送った梶田の前には長蛇の列ができた。そして約1時間、サインと記念撮影に応じた。

「ずっとサイン書いてましたね(笑)」

 おそらく、NPBで10年間プレーしても、これだけ惜しまれて去って行く選手は稀なのではないだろうか。

【次ページ】 四国ILでは異例づくめだった、梶田の存在。

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