産経前支局長在宅起訴:日韓関係改善に冷水…与野党反発

毎日新聞 2014年10月09日 21時55分(最終更新 10月10日 00時56分)

 【ソウル大貫智子】今回の問題で、韓国側は、「報道の自由侵害」を指摘する国内外の批判を考慮し、一時は早期終結を模索した。だが、最終的には「冒とく」を厳しく批判する朴槿恵(パク・クネ)大統領の意向をそんたくする検察が強硬手段をとらざるを得なくなった格好だ。ただ、韓国でも9日、起訴したことへの批判や外交的な影響を懸念する見方が出ており、朴政権の強権的なイメージが強まることになった。

 韓国検察当局は保守系市民団体からの告発を受け、産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長(48)に対し、8月18日から計3回にわたり事情聴取した。捜査が2カ月に及んだのは、検察当局が青瓦台(大統領府)の意向を測りかねていたからとみられる。

 加藤氏のコラムは、産経新聞のウェブサイトに掲載された翌8月4日、韓国のネットニュース会社が無断で韓国語に翻訳して一気に広がった。同7日、青瓦台の尹斗鉉(ユン・ドゥヒョン)広報首席秘書官は韓国メディアに対し、「厳重に抗議する。民事・刑事上の責任を最後まで問う」と発言。加藤氏は早期に在宅起訴されるとの観測が広がった。

 しかし、日本新聞協会や国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」などが言論の自由の侵害や捜査を批判する見解を表明したほか、ソウル駐在の各国大使館も高い関心を示した。このため、政権が前面に立って司法手続きに介入することへの懸念も生じた模様で、青瓦台内では一時、加藤氏側が反省や謝罪の意思表示をすれば起訴を見送るとの案も検討された。ただ、加藤氏はこれを拒否。朴大統領が9月16日、「大統領を冒とくする発言も度を越している」と発言したことで、起訴は不可避と検察側が判断したとみられる。

 これに対し、韓国放送公社(KBS)は9日、「外交的な影響は不可避」と伝えた。保守系のTV朝鮮も、討論番組の複数の出席者が一斉に「起訴はやりすぎだ」と批判した。

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