産経前支局長在宅起訴:日韓関係改善に冷水…与野党反発

毎日新聞 2014年10月09日 21時55分(最終更新 10月10日 00時05分)

 ソウル中央地検が朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を毀損(きそん)したとして産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長(48)を情報通信網法違反(名誉毀損)で在宅起訴した問題で、外務省の伊原純一アジア大洋州局長は9日、韓国の金元辰(キム・ウォンジン)駐日公使を同省に呼び、「極めて遺憾で、事態を深く憂慮している」と申し入れた。政府は年内の日韓首脳会談の実現に向け、対立が前面に出る「抗議」の形式を避けたものの、与野党は反発を強めており、関係改善の動きにはブレーキがかかりそうだ。

 菅義偉官房長官は9日の記者会見で「日韓関係への影響と同時に世界の常識と大きくかけ離れている」と韓国の検察当局の動きを批判。一方で、政府が11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせた開催を探る安倍晋三首相と朴大統領との会談については「問題があるからこそ会うべきだという立場は変わらない」と述べた。

 日韓両国は8、9月に2カ月連続で外相会談を開催。9月には訪韓した森喜朗元首相が朴大統領に首相の親書を手渡すなど、関係改善の動きが進んでいた。一方で、日本側は韓国側に、加藤氏への捜査が両国関係に悪影響を与えるとの懸念を再三伝えた。それでも検察当局が在宅起訴に踏み切ったことについて、外務省幹部は9日、「司法の判断ならば打つ手がない」と落胆を隠さなかった。

 政府が韓国側への直接的な「抗議」を避け、「申し入れ」にとどめたのは、日本国内の「反韓感情」を刺激するのを避けるためだ。韓国外務省幹部も毎日新聞の取材に対し「司法の問題であり、韓日関係とは無関係と理解すべきだ」と沈静化を探る考えを示した。

 ただ、与野党内では韓国に「毅然(きぜん)とした対応を行うべきだ」との反発も強まる。自民党の谷垣禎一幹事長は「日本の法制度からいうと、極めて違和感がある」と指摘し、民主党の枝野幸男幹事長も「報道・表現の自由や日韓関係にとって遺憾だ」と述べた。

 加藤氏は9日夜、BSフジの番組に中継で出演し、「捜査着手から起訴に至るまで、検察当局は朴政権の顔色だけを見て動いていた印象だ」とソウル中央地検の対応を批判した。【福岡静哉】

 ◇韓国内、批判も

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