大学1年生の少人数教育の演習科目で行った、あるお試し実験から。
<イントロダクション>
「ビーフ・ジャーキーはあるのに、なぜエッグ・ジャーキーはないのか?」という卵研究者(私)の永遠の命題!?を解決するために、実際に「エッグ・ジャーキー egg jerky 1.0」を学生たちと一緒に作ってみました。
<材料と方法>
乾燥がジャーキー製造には不可欠なプロセスですが、鶏の卵の乾燥には時間がかかるので、今回は鶏卵より小さい「うずらの卵」を使用しました。
また、卵は卵白と卵黄という全く異なる性質を持つ二つの素材からなりますが、両者をともにジャーキー化するために、ゆで卵状態の以下の市販三製品をサンプルに用いました。
左から、燻製うずら卵(FamilyMart、株式会社サングリーン製)、水煮うずら卵(セブンプレミアム、キユーピー株式会社製)、煮込みうずら卵(はごろもフーズ株式会社製)。
これをノンフライ熱風オーブン(アイリスオーヤマ株式会社製)で熱風乾燥しました。
オーブンの条件は以下の通り(どちらもフライヤー/リクックモード)。
トライアル1:200℃、20分(n=10)
トライアル2:100℃、60分(n=5)
<結果と考察>
トライアル1
調理前(左から、燻製卵、水煮、煮込みの順)
調理後(上から、燻製卵、水煮、煮込みの順)
高温(200℃)の設定のためか、中の卵黄が“バースト”する卵がいくつか見受けられました。燻製卵2個、水煮7個、煮込み2個が、外側の卵白にヒビが入ってしまいました。水煮は、卵白の変形が特に激しく、燻製と煮込みは、褐変化が進行しています。
水煮の一つが、卵白が透明の膜に膨化したものが観察されました。
トライアル2
調理前(左から、燻製卵、水煮、煮込みの順)
調理後(上から、燻製卵、水煮、煮込みの順)
トライアル2では、より低温(100℃)にしたことで、黄身の破裂は1個もなし。形も水煮以外はほぼきれいに圧縮されている様子。もとのうずらの卵のだいたい60%ぐらいの大きさになりました。
断面はこのように。
卵白はガラス状態となって透き通っており、卵黄は栗のようなねっとり感が出ています。
試食して見ると、卵白には十分な噛みごたえがあり、噛みしめるごとにうま味がじわじわ出て来ました。燻製、水煮、煮込みどのうずら卵にもそれぞれ独自の味わいを濃縮しており、まさにエッグ・ジャーキーと言っていい仕上がりでしょう。
さらに、質感のある中央の卵黄が口腔内で合わさると、風味・テクスチャーが時間で変わり、その“変化”もおいしさとして味わうことができます。
調理するTT条件(温度、時間)、さらにウズラの卵に含まれる成分の種類と濃度(糖分、塩分、燻製液成分など)などの条件を変えることによって、さまざまな種類のエッグ・ジャーキーを誕生させることができる予感がしました。
今回のファーストトライで一番興味深かったのは、トライアル1で偶然出来上がった卵白がガラス状に膨化した水煮うずらの卵。中で卵黄がころんころんしています。風鈴のようです。初めてみました、こんな形状の卵。