太陽光発電ブームの終焉か-電力会社の接続申し込み保留で
10月9日(ブルームバーグ):買い取り制度の導入で急成長した国内の太陽光発電市場では、一転してブームに陰りが出始めている。太陽光発電設備の送電線への接続申し込みが急増したために、九州電力など一部の電力会社が新規の受け入れを保留したことが背景にある。
再生可能エネルギー由来の電力を、一定の価格で買い取ることを電力会社に義務付けた固定価格買い取り制度の導入から2年。買い取り制度利用への申請には上限がなかったことから、いま岐路に立たされている。この制度の導入により、太陽光パネルの製造メーカーにとって、日本の市場は文字通り「日の当たる場所」となり、2013年に国内に新たに設置された太陽光発電の規模は、中国を除けば世界で最大だった。
日本総研社会・産業デザイン事業部の三木優シニアマネジャーは、買い取り制度が企業の太陽光発電事業への参入を後押ししたものの、一方では市場の歪みを生み出したと話す。制度運営のあり方を「見直すことで持続が可能になる。見直さないと、訴訟や倒産が起こり持続可能性がなくなる」と指摘した。
14年4月からの太陽光の買い取り価格引き下げを見越して制度への申請数が急増。すべて受け入れた場合には需給バランスが崩れて停電などが起こる可能性があるとし、九州、北海道、東北、四国電力などが9月末までに、再生可能エネルギー事業者が発電する電気の新たな受け入れ申請に対する回答を保留すると発表。
太陽光発電協会の鈴木伸一事務局長は、同協会としては回答保留が年内に解除され、送電網の受け入れ可能量を拡大する計画が示されれば、業界に与える「マイナス影響を回避することができると考えている」と文書でコメントした。
固定価格買い取り制度固定価格買い取り制度は、太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した電力を、各地域の電力会社が市場価格よりも高い値段で買い取ることを保証する仕組み。ドイツやスペインなどでの先行事例を参考に、12年7月に導入された。
9月の電気料金は4年前の10年9月比で28%上昇。これに対して、米国の電気料金の上昇率は8.1%にとどまった。原発停止による化石燃料の消費増や、再生可能エネルギーの導入拡大を背景に上昇した。
再生可能エネルギーの導入が日本で支持を得られていないわけではない。ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)によると、13年に国内で設置された太陽光発電の規模は、スペインにある既存の太陽光発電の規模に匹敵するものだった。一方で、12年7月以降に経済産業省が承認した7200万キロワット相当の再生可能エネルギーの発電事業のうち、実際に稼働しているのはわずか15%にとどる。
見直しも必要自然エネルギー財団の大林ミカ事務局長は太陽光発電導入のペースを調整する「必要性はあるだろうが、キャップをかけるなどの強制措置には、状況の徹底的な整理と対外的にも納得できる説明が必要」と述べる。九電などによる受け入れ保留の表明については「こんな形で明日からやる、というのは国際的に日本の市場の不安定さをアピールしているようなもの。日本市場への信頼が大きく揺らいだ」と指摘した。
設備認定を受けてから運転開始までに時間がかかっていることについては、経産省はすでに対策を講じている。4月1日からは、同省は設備認定後6カ月以内に土地と設備を確保できなければ認定を取り消すことになった。さらに、同省は送電網への接続が可能な再生可能エネルギー発電の量を検証し、拡大するための方法などを議論するための有識者会合の設置も計画している。
BNEFのアナリスト川原武裕氏は、送電インフラの実態や送電網の運用や管理を行う独立的な組織がないという状態を踏まえ、太陽光発電ブームが困難に直面することは「想定されていた」と話す。同社ではメガソーラー市場の新規導入量は15年に360万キロワットで頭打ちとなり、18年には新規の導入量はほぼゼロになると予想している。
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更新日時: 2014/10/09 14:56 JST