October 9, 2014
超大光度のX線が、パルサーから発生していることが明らかになった。このようなX線の発生源は、活発に物質を飲み込んでいるブラックホール以外にないとする従来の説を覆す可能性がある。
パルサーは恒星が超新星爆発を起こした後に残る天体だが、このような大光度X線の発生源としては予想外だ。今回の発見は、従来の定説とは異なる。このような超大光度X線の発生源は、パルサーと成り立ちは似ているがより存在感のある天体、すなわちブラックホールだと考えられてきた。
これらのX線源はすべてブラックホールだと考えていた天文学者は「この事実を受け入れ、『そうだ、すべてがブラックホールではない』と認めなくてはならない」と、アイオワ大学の天体物理学者フィリップ・カーレット(Philip Kaaret)氏は述べる。カーレット氏は今回の研究には参加しておらず、この結果に「軽い衝撃」・・・
パルサーは恒星が超新星爆発を起こした後に残る天体だが、このような大光度X線の発生源としては予想外だ。今回の発見は、従来の定説とは異なる。このような超大光度X線の発生源は、パルサーと成り立ちは似ているがより存在感のある天体、すなわちブラックホールだと考えられてきた。
これらのX線源はすべてブラックホールだと考えていた天文学者は「この事実を受け入れ、『そうだ、すべてがブラックホールではない』と認めなくてはならない」と、アイオワ大学の天体物理学者フィリップ・カーレット(Philip Kaaret)氏は述べる。カーレット氏は今回の研究には参加しておらず、この結果に「軽い衝撃」を受けたという。
衝撃を受けたのは、今回パルサーを発見したチームを率いたイタリア、カリャリ天文台のマッテオ・バケッティ(Matteo Bachetti)氏も同じだ。天の川銀河に比較的近いM82銀河にある超大光度X線の発生領域の研究に着手したとき、発生源はブラックホールに違いないとバケッティ氏は考えていた。ところが、NASAの宇宙望遠鏡「NuSTAR」(ニュースター:Nuclear Spectroscopic Telescope Array)の観測データを詳しく調べてみると、X線の放射が点滅(パルス)しているように見えることがわかった。ブラックホールなら、そのようなパルス状にはならない。
パルス状のX線は、超新星爆発の後に残る天体、パルサーの存在を示していた。パルサーは高速回転しているため、発する放射線が点滅して見える。それはちょうど、灯台の光が回転しながら一定の間隔で同じ場所を照らすのに似ている。
またこのパルサーは、自身よりはるかに質量の大きい伴星の周囲を回り、伴星の表面から物質を引きはがして自らに引き寄せている。およそ“隣人”らしからぬやり方で奪い取った物質は、パルサーに降着する過程でほぼ光の速さまで加速し、また摂氏数百万度の高温になる。
その結果、パルサーは放射線(X線)を発生させ、宇宙空間へと放出する。カーレット氏の推測では、パルサーが1秒間に発する放射線の量は、太陽の1カ月分に匹敵するという。もしも地球がそのような天体の周囲を公転していたら、「われわれは焼け焦げてしまう」とバケッティ氏は述べる。
しかし今回のように、理論上の推定値の100倍にのぼるX線を放射しているパルサーが見つかるのは異例のことだ。従来の定説では、パルサーに降着する物質が、それほど大量のX線を発生させる速度に到達することはありえないとされる。
これには何か別の理由があると考えられる。今回の研究に参加していないミシガン大学の天体物理学者ジョエル・ブレグマン(Joel Bregman)氏は、パルサーからの放射が拡散せず、1本のまとまったビーム状で発せられているのが原因ではないかと考えている。それだとパルサーにより多くの物質を降着させることが可能だ。
「唯一の問題は、その具体的なメカニズムを誰も完全に理解できていないことだ」とブレグマン氏は述べる。
今回見つかったパルサーが実際、パルサーへの物質の降着速度に関する理論を覆す存在なのだとしたら、ブラックホールへの物質の降着速度についても、従来の考えを改める必要があるかもしれない。そうなると、ブラックホールの成長速度に関する理論、すなわち宇宙の進化を解明する上での重要な基盤に変更が生じる可能性があると、バケッティ氏は述べる。
バケッティ氏のチームは今後、今回発見したパルサーが1200万光年の彼方にいる人間の注意を引くほど大光度のX線を放射している理由について、さらに研究を進める計画だ。
今回の研究成果は10月8日付で「Nature」誌オンライン版に発表された。
Photograph by NASA/JPL-Caltech/SAO