それらの処理によって生じた金属組織について、
前に記述しなかった組織をここでは解説しています。
ステッダイト
りん化鉄(Fe3P)と含りんオーステナイトの共晶です。
熱処理では直接関係がありませんので省きましたが、
片状黒鉛鋳鉄中の含りん共晶は、このステッダイトです。
また、Pを多く含む炭素鋼にも現れることがあります。
レデブライト
鉄鋼材料を融液から冷却してくると、
1148℃でオーステナイトと
セメンタイトが同時に晶出します。
この共晶をレデブライト又はウエストと呼んでいます。
レデブライトのC量は4.3%です。
複炭化物
FeとC、Mo、W、V、Crなど
2種類以上の元素が化合してできた金属間化合物を
複炭化物と云います。
ダイス鋼(SKD)や高速度鋼(SKH)
などの高合金鋼に多く存在する炭化物で、
M3C、M6C、M23C6などがあります。
Mは(FeCr)、(FeMo)など
添加した金属元素を表します。
繊維状組織
冷間で加工し塑性変形を与えれば、
結晶粒は加工方向に繊維状に伸び、
加工度が大きくなると結晶粒は
繊維を束ねたような組織になります。
このように加工方向に伸びた組織を
繊維状組織と云います。
伸びた方向と直角方向では強度がかなり違います。
このような組織は再結晶温度以上に加熱すれば元に戻ります。
トルースタイト
焼入れによって得られたマルテンサイトは、
α鉄に多量のCが固溶したもので、
硬くてもろい性質があります。
これを粘い性質にするために、
Cを吐き出させる必要があります。
約400℃に加熱(焼戻し)すると、
硬いマルテンサイトから
Fe3Cの形でCを吐き出します。
この組織がトルースタイトです。
フェライトとセメンタイトの混合組織で、
マルテンサイトに次ぐ硬さです。
ばね性もありますが、さびやすいのが欠点です。
フランスのトルーストによって発見されました。
硬さは400HV程度です。
ソルバイト
この組織もフェライトとセメンタイトの混合組織です。
マルテンサイトをトルースタイトよりもさらに高い温度
(550〜650℃)で焼戻しをすると得られます。
Fe3Cがやや粗大化し、
トルースタイトよりもさらに凝集した模様を呈します。
軟らかくショックに強いため、
じん性が要求される機械部品に多用されています。
また、窒化や高周波焼入れの前処理として施されます。
イギリスのソルビーが命名したもので、
硬さは270HV位です。
ベイナイト
オーステナイト化した鋼を焼入れする際、
Ar′変態とAr″変態の中間の温度で
等温処理すると、得られる独特な組織です。
等温処理温度が高い(450〜550℃)場合は、
黒色の羽毛状(パーライトに近い)の組織が、
また、比較的Ms点に近い温度で処理すると、
針状(マルテンサイトに近い)の組織となります。
羽毛状を上部ベイナイト、
針状を下部ベイナイトと云います。
いずれのベイナイトも、硬さが同一ならば
通常の焼入れ・焼戻し材よりも粘り強い性質を持っています。
米国のベインが発見したのでこの名前が付いています。