御嶽山噴火:山小屋配備のヘルメット役立った

毎日新聞 2014年10月09日 12時00分(最終更新 10月09日 13時43分)

御嶽山の噴火で自治体が用意したヘルメットをかぶる山小屋の登山者たち=登山者提供
御嶽山の噴火で自治体が用意したヘルメットをかぶる山小屋の登山者たち=登山者提供

 御嶽山(おんたけさん)(3067メートル、長野・岐阜県境)の噴火で、噴石を逃れ、下山してきた登山者に、山小屋に配備されていたヘルメットが役立った。地元自治体が配備した登山用ヘルメットで、浅間山など六つの火山のある長野県でも、同様な取り組みをしていたのは御嶽山だけ。今回の噴火を教訓に、火山のある県内外の自治体にヘルメットを用意する動きが出ている。

 先月27日の噴火に遭遇した30代の男性会社員は、約20分かけてたどり着いた王滝頂上山荘でヘルメットを渡された。「何もかぶらず石の飛んでくる中にいたので、すごく安心した」。下山は必死で噴石に気付かなかったが、「噴石が降ってくる可能性はいくらでもあり、本当に感謝している」と振り返った。

 ふもとの同県木曽町と王滝村は2007年度、それぞれ県の事業「地域発元気づくり支援金」(計365万8000円)を活用。計1000個のヘルメットなどを山荘や山頂の社務所に配備した。王滝村の森本克則・総務課長補佐は「06年末に御嶽山の活動がやや活発になり、登山シーズンに噴火するとまずいと考え、対策を取った」と説明する。

 噴石から十分に身を守るにはシェルターなどの施設が必要だが、建設には費用と時間がかかる。今回の噴火を受け、同県松本市は北アルプス焼岳山頂近くの焼岳小屋へ既に観光客用のヘルメット37個を運び入れた。山岳観光課の加藤市朗課長補佐は「シェルターなどは他の部署と連携し計画を立てる必要があるが、ヘルメットならすぐ配備できる」と話す。

 新潟焼山がある新潟県糸魚川市も3日にヘルメットを20個配備した。市消防本部の小竹和雄防災室長は「火山は緩やかな山が多いイメージで、これまでヘルメットという認識はなかった」と話す。

 また、年間30万人が頂上に登る富士山でも山梨県が「落石対策としても重要だ」(横内正明知事)として、各小屋へのヘルメットやマスクの配備を検討。立山火山がある富山県立山町は、弥陀ケ原の山小屋など計9施設に1000個を配備する予定だ。

 日本山岳協会の小野寺斉常務理事は「山は自分の責任で登るものなので、協会としては持参を推奨している。ヘルメットを持参するのが基本」としつつも、「現状では観光客にその認識を持ってもらうのは難しく、個人経営の山小屋は経営が大変ということを考えると、自治体が用意するのは良いことだ」と評価する。【飯田和樹、味澤由妃】

最新写真特集