神様で無常なパズルゲーム『MUJO』の開発に話を聞いてきた!
先日、『MUJO』というゲームがリリースされた。開発はオインクゲームズ。
この会社は、普段はボードゲームなどを主に作っている会社との事なのだが、今回自社ブランド初となる、スマホ向け作品をリリースした。
実際にプレイしてみると、世界観、独自のゲーム性、デザインから音楽に至るまで、かなり良い雰囲気のゲームだった。
1本目からこれほどの作品を作り上げる彼らは、一体どのような思いで、本作を作ったのか。本作の魅力、そしてその裏側に迫ってきた。
人物紹介
オインクゲームズ代表 佐々木氏
本作を手がけたオインクゲームズの代表。今回『MUJO』についてのお話を伺う方である。
写真は取材後日、東京ゲームショウにて頂いた。
知れば知るほど好きになる『MUJO』の魅力を直撃!
佐:佐々木氏
―:ゲーム攻略完全図鑑kawayu
パズル力がものを言うゲーム性です
―:ゲーム概要をお聞かせ下さい。
佐:本作『MUJO』はパズルゲームです。普通のパズルゲームと大きく違う点からお話すると、まずゲームオーバーがありません。そして、画面上にある"タイル"を育てていくことができるという点です。
この2点が大きな特徴になるかと思います。
―:2つ目の特徴、タイルはどのように育てていくのでしょうか。
佐:タイルは、3つ以上同じものが並んでいる時にいずれかを長押しするとそこを中心に"スタック"され、その分強いタイルになります。
中でも"剣タイル"は、道中で獲得できる"神様"のレベルやスキルを鍛えていくことでより大きく成長させることができます。
―:僕もプレイしていますが、道中に手に入る神様を揃え、成長させていくのに苦労しています。この神様は、どのように獲得していくのでしょうか。
佐:時々、オレンジ色をした"宝箱タイル"が出現することがあります。これを3つ揃え、消すことができれば神様を獲得することができます。
神様にはレアリティが設定されており、最高レアリティは★4になりますね。これはなかなか入手が難しいですよ!
―:どのような入手方法があるんでしょうか。
佐:先ほどお話していた宝箱タイルを開けるのではなく、スタックすると銀色に変化するんです。そして銀を3つ揃えてスタックすると、金色に変化します。これをまた3つ揃えて消すと獲得できるので、パズルが得意なユーザーの方は結構ゲットできているようですね。
―:通常のゲームですと銀色の状態で出現したり、あるいはガチャを回して、という獲得方法もあるかと思いますが、本作はどうなのでしょうか。
佐:銀色以降のタイルが出現する、ガチャで獲得できる、と言った要素は本作にはありません。必ずオレンジのタイルから始まります。是非実力でゲットして欲しいですね!
佐:課金要素は一応設けていて、ゲーム進行を助ける"雷"というアイテムがあります。これは毎日5個貰える他、実績解除などでも獲得できますが、貰える個数には限度があるので、慎重に使って頂ければと思います。
本当に"無常"なゲームなんですよ
―:スタック中のタイルって、盤面をずらす操作を行うと時々消えてしまいますよね。
佐:そうですね。あっさりと逝ってしまいます。一応盤面をずらす操作…"アップ"って言うんですけどで消えてしまうターンでは、タイルが「助けて!」と警告してくれるようになっています。
最初はアレも無くて…。テストプレイの時、不意に消えてしまうとあまりにも切なかったので、ああいった警告を表示させるようにしました。
―:流石に儚すぎたんですね。
佐:ゲームタイトルの『MUJO』も"諸行無常"の"無常"から来ているんです。本作はゲームオーバーになったり、勝手に連鎖してうまくいくといったことはありません。ただひたすらアップで、盤面が流れていきます。
それが方丈記の序文みたいだなぁと製作中感じていました。
参考:<方丈記序文>
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。
佐:方丈記では「川は同じでも、そこに流れる水はとどまることなくただ流れていく」ということを言っています。このゲームでも、大きく育てたタイルも全てアップで流れ、何も残りません。
しかしゲームオーバーはないので、ゲームは続いていく。そういうところが無常だなぁと思います。
―:そう考えると、なんとも切ない雰囲気のゲームだなと感じているのですが、何故世界観を神話、伝説上のキャラクターが登場するようなものに設定したのでしょうか。
佐:実はこのゲームキャラクターは、元々スペインのデザイナー集団「HEY」が描いたものなんです。初めて見た時「これは絶対ゲームに登場させたい」と思い、キャラクター使用の許可を貰って、制作していきました。
BGMも、作って頂いた方がかなり質の高いものを提供してくださったので、是非楽しんで頂ければと思います。なかなか普通使わないような個性的な音が入っているので、BGMを聞いているだけでも楽しめるかと思います。
(画像は使えないので、気になる方はこちら→HEY Studios)
海外を見据えて作った結果、面白い日本語版ができました
―:本作は世界観といい全体の演出、そしてスペインの方のデザインした神様など、海外ユーザーに向けた作品に感じました。
佐:そうですね。最初から全世界に配信する予定だったので、英語版をまず作りました。むしろ、日本語版は一番最後に作りました。
ただ、この制作方針は面白い効果をひとつ産んでくれて、日本語版を作る時、何故か直訳めいた日本語になってしまうんです。
―:海外作品をプレイしていると、よくクエストを終わらせた後に「続行」などと表示されて混乱することがありますが、ああいった感じなのでしょうか。
佐:例えば本作の英語版でステージをクリアすると「コングラッチュレーション」という言葉が表示されます。
しかしこれを日本語で表すならなんと書くべきだろう。ニュアンスが微妙に違うじゃないですか。「おめでとう」でもないしなぁ…と思って、最終的に「なんてすばらしい!」になりました。
―:好きなユーザーには堪らないテイストだと思います。
アイデアを適切なハードに出力する
―:オインクゲームズさんは、これまでずっとボードゲームを作ってきたとお伺いしました。ここでスマホゲーを作った経緯を教えて下さい。
佐:自社ブランドとしてはずっとボードゲームを作ってきたんですが、実は受託業務として、スマホゲーだったりコンシューマ機だったりのゲームを作っていたんです。自分たちで作るのは難しいなと思っていたのですが、今回色々なタイミングが合って、やっと作れた!といった感じですね。
―:スマホゲーって世に配信しやすいイメージがあります。
佐:作りやすいし、出しやすいハードだと思います。配信すればすぐに世界に配信されるのもかなり有難いです。
―:ボードゲームを制作していく上でのスキルは、本作にも活かされているんでしょうか。
佐:広い意味ではそうなんでしょうけれども、そもそもアナログ、デジタルをそこまで分けて考えていないんです。ゲームというと今ではデジタルゲームが当たり前なのですが、表現したいものに適したハードで作ればいいのかなと思っています。
―:今回のアイデアをアウトプットするならば、スマートフォンが最適だった、ということですか。
佐:そうです。制作中はかなりハラハラしていましたが…。
ゲームオーバーがないっていうところから始まって、ゲームシステムそのものもこれでいいのか…と思って作っていました。このゲームって本当に基本パズル…プレイ画面しか無いんですけど、そのシンプルさにはこだわりました。
―:最後の質問になりますが、ユーザーの皆様へメッセージをお願いします。
佐:『MUJO』をプレイしてもらって、僕らオインクゲームズを初めて知ってくださった方もたくさんいると思います。そこからボードゲームも知って、やってくれたらとても嬉しいです。
まずは僕らのことを知ってください。よろしくお願いします!
まとめ
今回のインタビューで、ひとつ心に残ったことがある。それは「アイデアの出力先は、何もデジタルゲームに限る必要はない」ということだ。
このデジタルゲーム全盛の時代、ついつい僕らは3Dグラフィック、または逆にレトロなドット絵などに目が行ってしまいがちだ。そんな中で、より広い視野デジタルの「外」を見ているオインクゲームズはやはり面白い会社だ。
そんな彼らが作ったMUJOは、そのタイトルの由来やゲームのデザインまで、色々と面白い工夫、そして実現したかった"熱"がこもった作品だと思う。
気になったユーザーは、そんな"無常"ではない本作を遊んでみては如何だろうか。
ダウンロードはこちら
(文:kawayu)
宛先はこちらまでお願いします。
info+release@dopr.net