インタビュー
「Ascend Mate 7」は開発当初から日本版を準備
ファーウェイ・ジャパン副社長が語るオープンマーケット時代の日本戦略
(2014/10/9 11:00)
ファーウェイ・ジャパンは、10月6日に6インチディスプレイの最新モデル「Ascend Mate 7」を日本市場向けにSIMロックフリー端末として投入すると発表し、7日から開催の「CEATEC JAPAN 2014」のブースでも早速、展示を行っている。「Ascend Mate 7」が加わったことで、ミドルクラスからハイスペックモデルまで、矢継ぎ早にSIMロックフリー端末のラインナップを強化してきたファーウェイの日本戦略とはどのようなものになっているのか。
今回、CEATECのファーウェイブースにて、ファーウェイ・ジャパン(華為技術日本) 副社長 端末統括本部 統括本部長の呉 波(ゴ・ハ)氏にインタビューを行う機会を得た。「Ascend Mate 7」の投入背景のほか、「ドコッチ」、カタカナ表記の“ファーウェイ”まで、現在の同社の戦略を聞いた。
ハイスペックな6インチ最新モデル「Ascend Mate 7」
――10月6日に「Ascend Mate 7」の日本市場投入が発表されました。日本市場への投入を決めたのはいつ頃ですか?
9カ月前ですね。
――そうなると、「Ascend Mate 7」のグローバル版の開発を開始した頃と同じ時期ということでしょうか?
その通りです。「Ascend Mate 7」は開発に着手した時点で日本市場への投入が決まっていました。なので、日本の周波数帯にも対応しています。
――日本版は12月に発売ですが、日本向けに大きくカスタマイズした点はありますか?
「IFA 2014」で発表し、9月に中国でまず発売しました。12月に日本で発売するので、タイミング的にもグローバル版とほぼ同じ仕様で投入する形になります。
――6インチというサイズのディスプレイは大型ですが、アジア圏をターゲットにした商品でしょうか? それとも、ほかの市場でも受け入れられているのでしょうか。
過去1年間で5.5インチのモデルをグローバルで投入していますが、良いフィードバックを得ています。「Ascend Mate 7」も大画面ですが、画面占有率は83%で、画面の大きさからすればコンパクトで、手に馴染むデザインに仕上がっています。
実際に大きな画面のモデルは、中東、欧州、南米でも受け入れられています。各地域からのフィードバックは同じ傾向があり、大画面を使うと小さな画面には戻りづらい、というものです。
――現時点では、サムスンの「GALAXY Note 4」、アップルの「iPhone 6 Plus」あたりがライバルだと思いますが、アドバンテージはどこにあると考えていますか?
「GALAXY Note 4」の画面占有率は80%で、「Ascend Mate 7」のほうが上回っています。「iPhone 6 Plus」と比べると、長さは1mm短くなっていますね。
また、インカメラは500万画素に強化していますし、「ビューティーモード」は、他社の同様の機能より効果が高い。ほかにも細かく調べ、10項目で優位性があると判断しています。
――iPhone 6 Plusは強い力を加えると本体が曲がった、という話が話題になり、ユーザーは改めて大画面ボディの剛性に注目するようになりました。「Ascend Mate 7」では何か対策はされていますか?
背面カバーの素材は航空機グレードのアルミ合金で、ボディと一体化して剛性を確保しています。今ここで、思いっきり曲げようとしてみてもいいですよ(笑)。そうした課題は設計段階から認識しており、対策が施されています。
未発売の「Ascend G7」「Honor 6」
――CEATECのブースでは「Ascend G7」「Honor 6」といった海外市場の最新モデルも展示されていました。日本で発売する予定はあるのでしょうか?
どちらも日本市場への投入の計画はありませんが、日本でのニーズをみて、検討したいですね。
――CEATECのブースで展示されているモバイルWi-FiルーターにはLTEのカテゴリー6に対応し、下り最大300Mbpsに対応しているモデルもあります。ドコモの現在のネットワークよりも高いスペックということになりますが、キャリアにこうしたスペックへの対応を働きかけていくことはあるのでしょうか?
質問の内容は認識していますが、ファーウェイは端末だけでなく、端末に搭載するチップセットやネットワークインフラも手がけている会社です。日本向けに投入する「Ascend Mate 7」も300Mbps対応で、End to Endで提供できるのが強みです。
――日本市場でのファーウェイのシェアは、どれぐらいを目標にしていますか?
日本市場では、何%を獲得するという目標は設定していません。なぜかというと、現段階で一番重要なのは、生き残ることだからです。
日本は競争の激しい市場で、3〜5年で市場のリーダーが交代しています。かつてのリーダーでも市場から撤退するような時代です。ですから、弊社で定めた目標は一言、“生存”です。
在庫の問題で大きく後退したメーカーもありました。オープンマーケットに提供する我々にとっても、これは重要な課題であると認識しています。
「ドコッチ」が生まれた背景とは
――NTTドコモから発表された「ドコッチ」は、大きな注目を集めています。どういった経緯で開発されることになったのでしょうか。
キッズケータイは2代目までで累計200万台が販売されました。ターゲットの年齢層に対して、キッズケータイが受け入れられたかどうかも調査したのですが、そこから得たフィードバックやニーズに、ウェアラブルという要素を組み合わせた結果が「ドコッチ」です。親にも子供にも受け入れられる形と考えています。
ただ、日本では過去2年間にさまざまなウェアラブル端末が発売されましたが、大きく成功している例はありません。
これはあくまで弊社の調査で、客観性を欠いているかもしれませんが、ウェアラブル製品が普及しない原因をさらに調査し、その結果が「ドコッチ」が生まれた背景になっています。
つまり、もっと年齢が低い段階から、こいいったウェアラブル端末を使う習慣が身についていればいいのでは、というものです。ウェアラブル端末の市場のボリュームは大きいと思いますが、消費者に広く受け入れられるまでには、時間がかかると思います。日本のお子様に「ドコッチ」が受け入れられるといいですね。
――ちなみに今、「妖怪ウォッチ」が子供に人気ですが、呉さんは「妖怪ウォッチ」をご存知ですか?
いえ、知りませんでした。教えていただきありがとうございます(笑)。ドコモから発表されて以降、アニメ関連の会社から問い合わせがきているとも聞いています。メディア、業界からの反応も弊社の予想を超えたものですね。
カタカナの“ファーウェイ”に込めた思い
――10月6日の「Ascend Mate 7」の発表会では、コンパニオンのコスチュームに「ファーウェイ」とカタカナで書かれているのが話題でした。CEATECの会場でも同じでしたね。日本市場向けの新たなコミュニケーション、あるいはマーケティング施策でしょうか?
社内で進めてきた取り組みの一環ですね。多くの日本企業は、日本語の名称を持つほかに、アルファベットの表記もあり、これらは高級感を出すという効果を狙っていると思います。
一方、「Huawei」は日本のユーザーには発音がしにくい、“Hua”の部分の発音が分からない、という面があったのは確かです。カタカナの「ファーウェイ」で高級感を醸し出せるわけではありませんが、第1ステップとして、日本のユーザーに正しく発音してもらい、名前を憶えてもらいたいと考えたのです。アラブ地域など英語圏以外では、現地の言葉でも表記していますし、それぞれの地域で良い反応ももらっていますよ。
――本日はどうもありがとうございました。
URL
- ファーウェイ・ジャパン
- http://www.huawei.com/jp/
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