保元物語さん
一昨日「重盛は空気の読めない新人」と言いましたが、よくよく考えれば合戦のプロ・義朝も「どうせたいしたことねぇよ」とナメきった態度で為朝に突撃しようとしていました。
この二つは細部は違うけれでも、流れそのものは似ているということを付け加えたいと思います。
「まったくこいつらは……」と頭を抱えつつも、肩を震わせて笑ってしまう。
ということで、『保元物語』第三段。
うどん国に流された大魔縁パイセンである。
一応紹介すると、大魔縁パイセンとは崇徳院だ。
面倒なので細部ははぶくが、保元の乱で負けちゃったので流罪になったよ! である。
この大魔縁パイセンの悲しき流人生活を今日は呟こうと思う。
とりとめのない、あんま調べもしてない感想だよ!
このお方の寂しい生活はつねにマイナーコードでギターを爪弾いているイメージがある。
まず描写が悲劇的で綺麗だ。「俺こんなとこやだ……」と嘆く姿ですら美しい。
ということで、見てみよう。大魔縁パイセンがうどん国にやってきたばかりの頃だ。
「彼の島は、陸地から四時間ほどで行ける場所だ。田畑もなく住民の棲みかもない。実に人気のない場所だ。国司の邸の四分の一ほどの狭さで、築地をめぐらし、中に屋敷を一つ建て、門を一つ建てていた。外から鎖をさし、食事を運ぶ他は人の出入りはなかった。(中略)海が近いところならば、海上煙波の眺望にも慰められたろうに、このように閉じ込められてしまっては、松風、浦波、千鳥の声、ふと目覚めた床で聞くしかない。ただ晴れ渡った空の月を眺めては愁い、風に向かって詩歌を口ずさみながら暮らすだけである」
まるで鳥籠の小鳥のようだ。
幽白の雪菜でも監禁時は心を慰めてくれるお友達がいたというのに、このお方には誰もいないのである。
まったくもって嘆かわしく、見るものを涙させたという。
その鳥籠の大魔縁パイセンをもちろん訪ねてくる人もいた。だが、どうにかして入ろうとしても、強そうな武士が周りをかため、入ることもできなかったりするのである。
そのあと、大魔縁パイセンは「俺もうやだ……こんなとこやだ……」と嘆きまくったので、住み所を変えるのだが、やはり誰もが世間をはばかりやってこない。
「親しいものがいたら……」と嘆き、やんごとない方のセレブとは違うやんごとない生活を思い返して泣く姿は筆舌に尽くしがたい。
大魔縁パイセンがどのように泣いていたのかというと、これである。
「慣れぬクソ田舎の暮らし……想像してみてほしい。秋もだんだん深まりにつれ、いっそう物悲しくなる。垣根で悲しげに鳴いている虫の声も日に日に弱っていき、松吹く風の音も夜毎に身にしむ頃となり、わずかに付き添う女房たちも、嘆き悲しみ、ただ泣くより他はない。ふとした時、成り行きに身を任せながらも、辛かったはずの都を恋しく思った。そのような涙の雨は、木々の梢も紅く染めるかのようだった」
いちいち美しい悲しみ方である。
涙の雨が木々の葉を染める。
関係ないが、XのYOSHIKIが『tears』で「終わらない悲しみを青い薔薇に変えて」などと、耽美だが意味不明なことを書いていたなぁと思い出す。
それはともかく、こちらはよくわかる。涙を雨に例えるのはよくある詩的表現だ。そして紅い涙が木々を染めていくのだ。
もっとこう……かぐや姫の『赤ちょうちん』で歌われる「裸電球眩しくて貨物列車が通ると揺れた二人に似合いの部屋でした」のように、生活感を出してくれれば、親近感ある悲壮さも出そうだが、尊いお方にはそんなものはないのである。
※ちなみに『平治物語』の悲劇担当の常盤さんはどんな感じかといえば、人物描写で悲壮感を出している。
『保元物語』の乙若たちの書き方と同じやね。
そんな暮らしの中、大魔縁パイセンは鬼束ちひろの『月光』でも歌い出しそうな心境になる。
それを伝えたところで何か変わるわけでもなく、「恩を忘れやがって」「許すべきだろJK」と髪も爪も放置し、生きたまま天狗となってしまうのだ。
その姿は現代的な感覚でいえば「や、普通に生理的に受け付けられないから」といったものである。何度目だかわからないが、とにかく嘆かわしい。
あれだけ美しく描写されていた人だが、闇落ちになると容赦されない。
「髪も爪も長々と伸ばして、柿色の衣も古ぼけ、顔色は黄ばみ、目は青くくぼんでいる。痩せ衰え、荒々しい声で(中略)身の毛もよだつ有り様だ」
となる。つまりは清潔感がないということだ。
わしはとてもじゃないのでいえないが、村上龍あたりならストレートにこの様子の例えを言ってくれそうなものである。
それと対比して、どこまでも楽しそうな為朝。
兄義朝に腕の筋肉を切られようが、まるで堪えていない。
配所へ送られる最中も輿を揺らして破壊するなどして遊んでやがるのである。
いい加減にしろよ。
とまぁ、こんなもんで今回の『保元物語』の読み返しはやめておこうかな。
やっていたら、キリがないし!
そんなこんなで、次はそれいけKG物語がプッシュしまくる平治の乱、および『平治物語』!
基本的読み返しては呟き、補足したりしているので今更なんか言うことあるのかなぁとは思いますが
重複だろうがまとめついでに呟いていきたいと思います。
この二つは細部は違うけれでも、流れそのものは似ているということを付け加えたいと思います。
「まったくこいつらは……」と頭を抱えつつも、肩を震わせて笑ってしまう。
ということで、『保元物語』第三段。
うどん国に流された大魔縁パイセンである。
一応紹介すると、大魔縁パイセンとは崇徳院だ。
面倒なので細部ははぶくが、保元の乱で負けちゃったので流罪になったよ! である。
この大魔縁パイセンの悲しき流人生活を今日は呟こうと思う。
とりとめのない、あんま調べもしてない感想だよ!
このお方の寂しい生活はつねにマイナーコードでギターを爪弾いているイメージがある。
まず描写が悲劇的で綺麗だ。「俺こんなとこやだ……」と嘆く姿ですら美しい。
ということで、見てみよう。大魔縁パイセンがうどん国にやってきたばかりの頃だ。
「彼の島は、陸地から四時間ほどで行ける場所だ。田畑もなく住民の棲みかもない。実に人気のない場所だ。国司の邸の四分の一ほどの狭さで、築地をめぐらし、中に屋敷を一つ建て、門を一つ建てていた。外から鎖をさし、食事を運ぶ他は人の出入りはなかった。(中略)海が近いところならば、海上煙波の眺望にも慰められたろうに、このように閉じ込められてしまっては、松風、浦波、千鳥の声、ふと目覚めた床で聞くしかない。ただ晴れ渡った空の月を眺めては愁い、風に向かって詩歌を口ずさみながら暮らすだけである」
まるで鳥籠の小鳥のようだ。
幽白の雪菜でも監禁時は心を慰めてくれるお友達がいたというのに、このお方には誰もいないのである。
まったくもって嘆かわしく、見るものを涙させたという。
その鳥籠の大魔縁パイセンをもちろん訪ねてくる人もいた。だが、どうにかして入ろうとしても、強そうな武士が周りをかため、入ることもできなかったりするのである。
そのあと、大魔縁パイセンは「俺もうやだ……こんなとこやだ……」と嘆きまくったので、住み所を変えるのだが、やはり誰もが世間をはばかりやってこない。
「親しいものがいたら……」と嘆き、やんごとない方のセレブとは違うやんごとない生活を思い返して泣く姿は筆舌に尽くしがたい。
大魔縁パイセンがどのように泣いていたのかというと、これである。
「慣れぬクソ田舎の暮らし……想像してみてほしい。秋もだんだん深まりにつれ、いっそう物悲しくなる。垣根で悲しげに鳴いている虫の声も日に日に弱っていき、松吹く風の音も夜毎に身にしむ頃となり、わずかに付き添う女房たちも、嘆き悲しみ、ただ泣くより他はない。ふとした時、成り行きに身を任せながらも、辛かったはずの都を恋しく思った。そのような涙の雨は、木々の梢も紅く染めるかのようだった」
いちいち美しい悲しみ方である。
涙の雨が木々の葉を染める。
関係ないが、XのYOSHIKIが『tears』で「終わらない悲しみを青い薔薇に変えて」などと、耽美だが意味不明なことを書いていたなぁと思い出す。
それはともかく、こちらはよくわかる。涙を雨に例えるのはよくある詩的表現だ。そして紅い涙が木々を染めていくのだ。
もっとこう……かぐや姫の『赤ちょうちん』で歌われる「裸電球眩しくて貨物列車が通ると揺れた二人に似合いの部屋でした」のように、生活感を出してくれれば、親近感ある悲壮さも出そうだが、尊いお方にはそんなものはないのである。
※ちなみに『平治物語』の悲劇担当の常盤さんはどんな感じかといえば、人物描写で悲壮感を出している。
『保元物語』の乙若たちの書き方と同じやね。
そんな暮らしの中、大魔縁パイセンは鬼束ちひろの『月光』でも歌い出しそうな心境になる。
それを伝えたところで何か変わるわけでもなく、「恩を忘れやがって」「許すべきだろJK」と髪も爪も放置し、生きたまま天狗となってしまうのだ。
その姿は現代的な感覚でいえば「や、普通に生理的に受け付けられないから」といったものである。何度目だかわからないが、とにかく嘆かわしい。
あれだけ美しく描写されていた人だが、闇落ちになると容赦されない。
「髪も爪も長々と伸ばして、柿色の衣も古ぼけ、顔色は黄ばみ、目は青くくぼんでいる。痩せ衰え、荒々しい声で(中略)身の毛もよだつ有り様だ」
となる。つまりは清潔感がないということだ。
わしはとてもじゃないのでいえないが、村上龍あたりならストレートにこの様子の例えを言ってくれそうなものである。
それと対比して、どこまでも楽しそうな為朝。
兄義朝に腕の筋肉を切られようが、まるで堪えていない。
配所へ送られる最中も輿を揺らして破壊するなどして遊んでやがるのである。
いい加減にしろよ。
とまぁ、こんなもんで今回の『保元物語』の読み返しはやめておこうかな。
やっていたら、キリがないし!
そんなこんなで、次はそれいけKG物語がプッシュしまくる平治の乱、および『平治物語』!
基本的読み返しては呟き、補足したりしているので今更なんか言うことあるのかなぁとは思いますが
重複だろうがまとめついでに呟いていきたいと思います。
2014.10.09(Thu)06:53